アンナはテレビゲームをやっているジュンソクらに言った。
「あんたたち皿洗いは大変なのよ。自分で片付けなさい」
子供らは二つ返事で立ち上がった。
言われた通り、自分の使った食器を流しに運び、テレビゲームの場所に戻っていった。
アンナは満足して調理器具の片づけを始めた。棚を見上げると大きな壷が目に止まった。つま先立って両腕を伸ばす。壷をつかんでそろそろと下におろす。
フタを取って中を見たとたん、アンナはにんまりとなった。
「チャン・チョルスはここに小銭を集めていたのね。私のために置いたも同然だわ。悪いけどいただくわ」
急いで壷を隠しに行こうとするが、壷が重くてバランスを失い、小銭を床にぶちまけてしまった。
「ワーッ、お金だお金だ!」
ジュンソクらはアンナのところに集まり、こぼれたお金を拾い始める。アンナも一生懸命拾い集めた。
この時、彼女はお金とは違う光り物に目を奪われた。手を伸ばし拾い上げる。指輪だった。
「これは!」
ビリーの顔がちらと脳裏をかすめた。左手の薬指にはまっていた。
指輪をじっと見つめる。
「この指輪――どこか見覚えがある」
アンナは自分の薬指にはめかけて思いとどまる。
「私のじゃないわ。彼の奥さんの物よ…」
自分に言い聞かせつつも他人事じゃないような気もする。
「もしかして――私が盗んだと思ってるんじゃないでしょうね? 明日にでも早く返さなきゃ」
指輪をテーブルに置き、再びお金を拾い始める。
「拾ったら中に入れて」
食器洗いもすんだ。タオル雑巾を絞っている時、壁沿いにゴキブリが出現した。
アンナはタオル雑巾で狙いすませてゴキブリを叩き落した。
その後は洗濯だ。古い洗濯機が横にグラグラ揺れだす。アンナは足で洗濯機を蹴った。
「チャン・チョルスが戻ってくるまでおとなしくして」
今度は子供たちの世話だ。アンナは子供らを寝かせに上がった。遊び道具を取り上げ、
「早く、寝なさい」
そう言って部屋を出てゆこうとするが、子供らは布団に入ったものの寝付く様子を見せない。
アンナは振り返った。
「あんたたち―、寝る子は育つのよ。背が高くなりたければ早く寝なさい」
子供らはおとなしくなった。アンナは灯りを消して部屋を出た。
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