韓国ドラマ「病院船」から(連載56)
「病院船」第5話➡騒動⑬
★★★
ヒョンが1人で考え込んでいると後ろから肩を叩く者がいる。振り返るとジェチャンだった。
「どうした? 悩んでるのか?」
「先生…僕たちだけど―」
「うん」
「ソン先生に賭けてみましょうか?」
ジェチャンは優しい顔で微笑む。ヒョンのように病院の外に身体を向ける。
ヒョンはウンジェらの行うシミュレーション手術を行う姿に、並々ならない決意と執念を見た気がしたのだった。
「いろんな医師たちの冷静な意見よりも、君のその執念を信じてみたくなったよ…少なくても今は、ソン先生だけが患者の命を救おうとしているから…」
カン・ドンジュンはウンジェの行ったシミュレーション手術の様子を見終えてキム院長に報告した。
「模擬手術は6時間で終わりました」
院長は大きく頷く。
「これでは手術に反対する理由がなくなりましたね」
院長はカン・ドンジュンを振り返った。
「だが、献体と患者では違う」
そう言いつつも院長は感心する表情を覗かせた。
★★★
医務室でデーターの整理をしている時、ウンジェはふとヒョンを思い浮かべる。手術室の外に立ち、彼はシュミレーションの様子を見に来ていた。
ウンジェは口元に笑みを浮かべた。彼は彼なりに一生懸命なのだ。
ヒョンはジェチャンの病室にやってきた。ジェチャンは横向きで寝ていた。窓には街の様子が映っている。
ヒョンはベッドの際から腕を伸ばした。点滴の確認をすませ、椅子に腰をおろした。そっと布団をかけてやった。
ジェチャンは少しの間、目を開けていた。ヒョンが動かなくなると目をつぶった。しばらく項垂れた様子を続けた後、ヒョンは立ち上がる。眠ったと思ったらしい。立ち上がって病室を出ていった。
ヒョンの気配が病室から消えるとジェチャンは目を開けた。目元は涙で潤んでいた。
朝になった。ウンジェは頃合いを見てジェチャンの病室に向かった。
ドアをノックして部屋に入る。ドアを開けて中を見てウンジェは足を止める。
デハン病院のキム・ドフンがジェチャンの相手をしていたからだ。
ウンジェはドアを閉めてジェチャンのそばに立ち、キム・ドフンを見た。
「教授がここで何を?」
「その前に挨拶をすべきだろ」
やや間があった。
「なぜなのか答えてください」
「医者のやることは決まってる。診察だ」
キム・ドフンは答えた。
「先生の詩を読むたびに感銘を受けます」
「いや、お恥ずかしい」
「我々が最善をつくして先生を治療します」
「ありがとう」
キム・ドフンはジェチャンに一礼し、ウンジェを見た。
「話がある」
キム・ドフンは先に病室を出ていく。ジェチャンに一礼してウンジェも続く。
キム・ドフンとウンジェが廊下を歩いて行くのをヒョンは見かける。
キム・ドフンは誰もいない待合室のそばで足を止めた。振り返るなりデーターをかざした。
「君は正気か? この患者に手術だと?」
ウンジェは冷静だった。
「私が責任を持って治療します」
「治療じゃなくて実験だろ」
「…」
「論文の実証のためでは?]
「悪いですか?」
「実績や目標より患者を優先するのが医者だ」
「…残念ながらその言葉には惑わされません」
「この手術は前例がない」
「前例なら私が作ります」
「失敗したらどうする?」
「それを恐れろと?」
「当たり前だ」
後ろで声がした。振り向くとヒョンが歩み寄って来る。
「失敗を恐れるべきだ」
ウンジェは答える。
「このケースは…」
「”ケース”なら聞き飽きた。患者にとって”ケース”は”症例”じゃない。人間なんだ。失敗すればソルさんが死ぬ」
ウンジェはひるまない。
「言ったはずよ。科学は失敗によって進歩するものなの」
「そんな進歩なんていらない」
「…」
「ソン先生。君をソルさんの主治医とは認めない」
2人は強い眼差しをぶつけ合った。
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