雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ ファンタスティック・カップル 第10話(5)




 
 部屋に引き上げてきたビリーは頭に血をのぼらせていた。
「湿布も貼らずに行くなんてあんまりだ! すぐ済むのに・・・」
 転んで怪我した額に手をやった。まだ痛い。傷テープはアンナが貼ってくれたものだ。
「きっとチャン・チョルスが呼び出したんだ。チャンの奴め・・・」

 チョルスはアンナのことで出かけようとしていた。
「ソウルで泊まるかもしれないからな」
「何の用で行くの?」
 チョルスは振り返って答えた。
「帰ってから話すよ。帰ってきたら・・・みんな話すから」
「・・・」
「その間、子供たちを頼む」
 アンナはチョルスのいつにない態度と言葉が妙に引っかかった。

 ヨングはケジュと海を眺めながらデートを楽しんでいた。
 ヨングは携えてきたコミック本をケジュに見せた。ケジュはそれを手に取った。
「”愛してる”? ちょっと恥ずかしくなるタイトルね」 
 ケジュは笑った。
「ヨングとケジュが主人公なの?」
 サブタイトルは”ヨングとケジュが恋におちる”だ。ケジュは指の爪でそこをはがした。
「違うじゃない!」 
 ヨングが上に文字をかぶせていたのだ。本当のサブタイトルは”ヨンヒとチョルスが恋に落ちる”だった。
 ケジュはヨングを見た。肘で小突いた。
「パングったらかわいいわね」
 はにかみながらヨングは答えた。
「僕の気持ちです」
 ケジュはケラケラ笑いながらコミックのページを繰った。
「読みやすそうじゃない」
 タイトルをもう一度見た。
「主人公はチョルスか・・・私の知り合いと同じ名前だわ」
 ヨングは戸惑いを見せる。
「今日、チョルスや息子たちとソウルに行くの。行く時に読むわ。ありがとう。じゃあね」
 ヨングは切り出した。
「ケジュさん、ソウルまで私が送りましょうか?」
「息子と行くのに、どうして?」
「それは・・・二人で話をしたり、途中で食事をしたりして・・・」
 ケジュは呆れてまた小突いた。しかし、内心嬉しそうだった。
「ほんと、何いってるの」
 笑い転げていて、ケジュはふいに真顔になった。
「パングや」
「はい」
「あなた、ほんとかわいいわ」
 ヨングは嬉しそうに顔を背けた。
「僕はヨングですよ」

 
 ヨングはストロベリージュースを作って飲んだ。
「僕って・・・そんなにかわいいかな?」
 好きなケジュにほめられ、嬉しくて笑いが止まらない。
 その笑いがぴたりと止まる。
「チャン・チョルスは・・・何の用でソウルへ?」
 しかし、すぐケジュの言葉が戻ってくる。
 一人嬉しがっていると、ビリーが顔を出した。
「最近、携帯がつながらないな。携帯の電源まで切ってどこへ?」
「何か、用でしたか?」
「コン室長」
「はい」
「ホテル内に”パング”という人がいるか?」
 ヨングは思わずジュースを吐き出しそうになった。



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