部屋に引き上げてきたビリーは頭に血をのぼらせていた。
「湿布も貼らずに行くなんてあんまりだ! すぐ済むのに・・・」
転んで怪我した額に手をやった。まだ痛い。傷テープはアンナが貼ってくれたものだ。
「きっとチャン・チョルスが呼び出したんだ。チャンの奴め・・・」
チョルスはアンナのことで出かけようとしていた。
「ソウルで泊まるかもしれないからな」
「何の用で行くの?」
チョルスは振り返って答えた。
「帰ってから話すよ。帰ってきたら・・・みんな話すから」
「・・・」
「その間、子供たちを頼む」
アンナはチョルスのいつにない態度と言葉が妙に引っかかった。
ヨングはケジュと海を眺めながらデートを楽しんでいた。
ヨングは携えてきたコミック本をケジュに見せた。ケジュはそれを手に取った。
「”愛してる”? ちょっと恥ずかしくなるタイトルね」
ケジュは笑った。
「ヨングとケジュが主人公なの?」
サブタイトルは”ヨングとケジュが恋におちる”だ。ケジュは指の爪でそこをはがした。
「違うじゃない!」
ヨングが上に文字をかぶせていたのだ。本当のサブタイトルは”ヨンヒとチョルスが恋に落ちる”だった。
ケジュはヨングを見た。肘で小突いた。
「パングったらかわいいわね」
はにかみながらヨングは答えた。
「僕の気持ちです」
ケジュはケラケラ笑いながらコミックのページを繰った。
「読みやすそうじゃない」
タイトルをもう一度見た。
「主人公はチョルスか・・・私の知り合いと同じ名前だわ」
ヨングは戸惑いを見せる。
「今日、チョルスや息子たちとソウルに行くの。行く時に読むわ。ありがとう。じゃあね」
ヨングは切り出した。
「ケジュさん、ソウルまで私が送りましょうか?」
「息子と行くのに、どうして?」
「それは・・・二人で話をしたり、途中で食事をしたりして・・・」
ケジュは呆れてまた小突いた。しかし、内心嬉しそうだった。
「ほんと、何いってるの」
笑い転げていて、ケジュはふいに真顔になった。
「パングや」
「はい」
「あなた、ほんとかわいいわ」
ヨングは嬉しそうに顔を背けた。
「僕はヨングですよ」
ヨングはストロベリージュースを作って飲んだ。
「僕って・・・そんなにかわいいかな?」
好きなケジュにほめられ、嬉しくて笑いが止まらない。
その笑いがぴたりと止まる。
「チャン・チョルスは・・・何の用でソウルへ?」
しかし、すぐケジュの言葉が戻ってくる。
一人嬉しがっていると、ビリーが顔を出した。
「最近、携帯がつながらないな。携帯の電源まで切ってどこへ?」
「何か、用でしたか?」
「コン室長」
「はい」
「ホテル内に”パング”という人がいるか?」
ヨングは思わずジュースを吐き出しそうになった。
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