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韓国ドラマ「病院船」から(連載186)
「病院船」第17話➡病院船の危機⑨
★★★
スグォンは言った。
「ここは、よく来られるんですか?」
「巨済にドゥソン重工を構えた時から来てる。だから30年来の常連だ」
「韓国屈指の企業の会長なのに全く気どりがない。尊敬します」
スグォンは頭を下げる。
「私はただの商売人だ」
テジュンは笑って答えた。
「君のような医者こそ尊敬に値するよ」
スグォンは照れる。テジュンは続ける。
「人の命を扱うのは崇高な仕事だ」
「恐縮です」
「そこで頼みがある」
「はい」
「最近、巨済第一病院が騒がしいようだ」
「騒がしい…何のことでしょう」
「あの件だよ。先日会ったソン・ウンジェ先生」
「はい」
「刑事告訴されたとか」
「その件は…」
「話によると家族の同意も得ずに手術をしたそうだね」
「本人は否定しています」
「当然だろう…誰も素直には認めまい」
「…」
「私は面倒なことが嫌いでね。MOU締結の直後にこんな騒ぎが起きては…第一病院に投資をすべきか、迷いが出て来る」
「会長…」
「会長は慎重な人だから、懸命な判断をすると信じるよ」
そこへ牡蛎クッパが運ばれて来た。
「やあ、これは美味そうな匂いだ」
テジュンは声のトーンを変えて言った。
その分、スグォンの表情は暗く沈んでしまった。
テジュンはスグォンにかまわずスプーンを握った。スープを掬って口に入れた。
「そうだ、この味だよ」
そう言って豪快に笑った。
食事を終えた後、スグォンは先に店を出た。重い足取りで帰路についた。
★★★
ノートブックを使った遠隔治療に取りかかったドゥソン電子に対し、ジュニョンらは不可解さを募らせていた。
ジュニョンは言った。
「これは何だ? どうなってるんだ!」
「どうした?」
カウンターの内側に立つジェゴルに、ジュニョンはタブレットPCを手渡す。
ジェゴルはタブレットに見入った。
「遠隔治療の拠点病院?」
「巨済第一病院が拠点になるなら、院長も”健康”を売って稼ぐのか?」
ジェゴルはタブレットを睨みつけた。タブレットを返して病院船を飛び出して行った。
ジェゴルは父親のもとにやってきた。
スグォンはジェゴルを見るなり訊ねた。
「どうした?」
ジェゴルは父親の前に立った。
「遠隔治療がどれだけ危険性を孕んでるか分かってる?」
スグォンは難しい顔で答えた。
「リスクは抑える」
「どういう方法で?」
「科長に検討するよう指示を出した」
「父さん…」
スグォンはジェゴルを見つめ返した。
「お前が何言おうと決意は変わらない。だから帰れ」
「カネのためですか?」
ジェゴルは疑念を向ける。
「救急室をなくすわけにいかない」
「病院船が犠牲になる」
「患者を見殺しにできないだろが」
ジェゴルはため息をつく。それ以上言えない。
スグォンは再びジェゴルを見た。
「お前は…救急室と病院船ならどちらを選ぶ?」
「選ぶことじゃない」
「いや、選ぶしかない。誰もが納得する答えはないんだ」
「…」
「この先 ― 何度も残酷な選択を迫られるだろう…お前も財団の一員になるんだから」
「父さん…」
「お前も大人だ。いつまで子供じみた考えにとらわれてる。さっさと捨てろ。これが大人の世界なんだ」
ジェゴルは空しく院長の部屋を出た。
どこかの食堂ではなく、ウンジェたちは病院船に戻って来ていた。
「リクエストがラーメン?」
ウンジェの望んだのがこういうことだったとは…料理には少々の自信を持っているヒョンは拍子抜けしていた。
「もっといいのを作れるのに…」
ラーメンを作りながらヒョンは物足りなさを覚えているらしい。
「悪い? 美味しいじゃない。待って! 水を入れ過ぎないで」
「…?」
「それと煮すぎないで。麺がまずくなる」
ヒョンは笑った。
「さすがソン先生。ラーメンでも注文の付け方が半端じゃない」
ウンジェは黙って笑みを返した。ヒョンの料理に見入った。
「美味しそう…」
ラーメンに舌鼓を打つウンジェにヒョンは頬杖をつき、静かに見入った。
ウンジェは顔を上げる。目が合ってもそのままの姿勢でじっと見入っている。
「食べないの? 私を見てるだけ?」
「焦らずに食べて。色々あって…空腹だったんだな」
ウンジェは顔を上げた。口をもぐもぐさせながら言った。
「あの日は…もっと空腹だった」
「…あの日?」
ウンジェはヒョンを見た。
「病院船に初めて来た日」
「…」
ウンジェはヒョンの書き込んだ母親の診療記録を思い出していた。
「ヒョン先生の書いたカルテを見ながら…母の痛みを想像させられた。…蘇ってきた生前の母の姿と笑顔はそれまでの母よりもっと愛しく感じられた。すると胸が張り裂けそうなほど苦しくなって―つらかったわ」
「…」
「母に申し訳なくて…とても会いたくなった」
ヒョンは黙って腕を伸ばした。ウンジェの手を握った。手をの甲をそっと撫でた。
ウンジェはふっと笑った。
「でも、その時…妙なことにお腹がぐうぐう鳴ったの」
「…」
「母を亡くして、病院をクビになって…」
「やって来た病院船の手術室は最悪だし…」
ウンジェは頷く。
「食事どころじゃないはずなのに、よほど空腹だったのね」
「…」
「でも、そこにラーメンが置いてあったの」
「で、作って食べた?」
首を横に振る。
「電気コンロの電源が見つからなくて、麺をかじって食べたわ」
ヒョンはため息をつく。
「切ないね」
「他人の家みたいに居心地が悪かったわ…ほんの数か月前なのに…あの日が昔のことに感じる」
「なぜ? 病院船に慣れたから? ラーメンを作る彼氏もいるし」
2人は笑みを交わし合った。
先にウンジェの顔から笑みが消える。
「でも私は…これ以上、病院船にいられそうにない」
「えっ? 今、何て言った?」
ウンジェの表情は暗く沈んだ。
「病院船を辞めなきゃいけないみたい」
「どうして?」
「ごめんなさい。私、約束を破ったの。私が吸引したと警察に話した」
「何だって?」
「だから、ヒョン先生もそのつもりでいて」
「なぜだ」
「そう言えば、病院船を守れるから」
ヒョンは返す言葉を失った。