韓国ドラマ「青い海の伝説」第19話⑪
韓国ドラマ「青い海の伝説」第19話⑩
★★★
セファは2人を連れて奥へ消えた。
ジュンジェは唇を噛んだ。
「どうするよ? 恐れてはいたけどさ」
ジュンジェは頷く。
「まさか、家に顔出すとは…シムチョンは何を?」
「任せておいたらいい…」
ジュンジェはセファが何をするのか予測がついていた。
そこへユランが顔を出した。
「2人はどこに行ったの?」
「今、中でちょっと…」
母がいなくてよかったと思いながらジュンジェが説明する。
「あら?」とユラン。「なぜ部屋から…?」
「いえね、中を見せてもらったの。すごく素敵ね」
「そうです、ほんとに」
この時、ジンジュはジュンジェたちに気づいた。
ユランを見てジンジュは訊ねる。
「こちらが息子さん?」
「はい。息子のジュンジェとお友達のチョ・ナムドゥです」
双方は恭しく頭を下げ合う。
「そしてこちらがシムチョンさん」
「ええ。さっきはどうも。ほんとに親切な方ね」
照れ臭そうにするセファ。
「息子さんはほんとに男前だわ…それにお友達の方も…おっほほほ、個性的なお顔立ちで…」
「おいおい、よしなさいって」
しかしドンシクも同調して笑い声を響かせる。
「でも」ジンジュは首をかしげる。「どこかで会ったような気も…」
ジュンジェはナムドゥを見、視線を落とす。
「覚えておられないですか私を? たとえばドバイ?」
ドンシクが言った。
「おい、俺たちはドバイに行ったことなんかないよ」
「ああ、そうよね。そうだわ」
「あっはははは」ドンシクはジュンジェらを見る「まったく…はっはははは」
ジュンジェたちも苦笑を返す。
「なぜか”ドバイ”という国が浮かんでしまうのよ」とジンジュ。「もう、ほんとにどうしちゃったのかしら、私ったら…」
全員の笑い声が響いた。セファも一緒に笑った。
(知らないってことは平和ね…)
「みんな私のせいね。おしゃべりでごめんなさい。ともかく会えてよかったわ。これから仲良くしましょうね」
ジュンジェはセファを見た。
(母の前でまた助けられたな…)
★★★
他人の記憶をコントロールできる能力に対し、ナムドゥはセファとジュンジェの前で能書きを垂れる。
「よく考えてみろ。これは人魚ショーの女どころではない。記憶を消せるんだぞ。わあっはははは」
「…」
「俺の記憶も消しただろ? ジュンジェの記憶もだ」
「誰にも言うなよ」
ジュンジェは怖い顔になる。
「それより、これは金になるぞ」
ナムドゥは2人のそばに寄ってくる。セファの顔を見ていう。
「うまく応用できれば億万長者も夢じゃない。どうだ?」
セファはナムドゥを見た。
「けっこうよ。興味ないわ。忙しくなるのも嫌だし」
「ジュンジェとの時間がなくなるし…」
「だよな」
ジュンジェは両手でセファの顔を挟む。両手にセファの顔はすっぽり収まる。
ナムドゥはセファに言った。
「こいつと別れたらぜひ俺と付き合ってくれ」
「…」
「何言ってるんだ?」
ナムドゥはセファを見て言う。
「ああ、もう…シムチョンはどこまでも魅力的だよ。俺と」
「おい!」
ジュンジェが2人の間に割って入る。ナムドゥの顔を押しのける。
「一度だけだ」
「ダメだ」
2人の争いを嬉しそうに眺めてるセファ。
(もっとジュンジェを妬かせてあげて…!)
「少しだけだって」
またまたナムドゥ突き放すジュンジェ。
「ちょっとだけ」
とジュンジェに抱きつくナムドゥ。
「いい加減にしろ!」
「わかったわかった」
その時、セファは胸を押さえた。苦痛で顔を歪めた。
(早く海に帰らないと…でも、ジュンジェのもとを去りたくない…戻ってこれなくなりそうなのが怖い…)
ふざけ合っていた2人は、じっとしているセファの異変に気付いた。
ジュンジェはセファの顔を覗き込む。
「シムチョンどうした? どこか痛むのか?」
「ケガがまだ治りきってないんじゃないのか?」
後ろでナムドゥ。
「心臓か?」
ジュンジェはこの頃、セファが元気ないのを思いだした。見せる笑顔はどこか寂しそうだし、ずっと寝ていることもある。
ジュンジェはセファに美味しい料理を作って食べさせようと思った。
リビングに出てきたセファは訊ねた。
「みんなはどうしたの?」
「出かけてもらった」
「どうして?」
「2人きりでいたいから」
「…」
「体調はまだよくないみたいだし、美味しいもの食べて元気出してもらおうと思って…俺たちは出かけないで退院のパーティをやろう。着替えて来い」
ケガのせいだけじゃない。セファは複雑な思いだった。
部屋に戻ったセファはプレゼントされた耳飾りをする。ネックレスをする。そしてここで覚えたメークを顔にほどこした。
2人はゆったりした気分で食事を始める。
「お酒でも飲む?」
「いや、いい」
「…」
「飲んだら…引き留めてしまう」
「…」
「ほかに方法はないのか?」
「…」
「頼む。それを教えてくれ」
「…」
「撃たれて以来、お前は明らかに弱ってるし、痛みに耐えてる。俺はどうすればいい? このままここにいたら、お前は死んでしまうのか?」
ジュンジェは手元から翡翠の腕輪を取り出した。セファの手を取り手首にはめてやった。
「海に帰ればその傷は癒えるのか?」
「…」
「以前の元気を取り戻せるのか?」
食事を終え、プールサイドから街の夜景を前にしながらジュンジェは言った。
「約束してくれ。記憶は消さないと」
セファはジュンジェを向き直る。
「どうして?」
「言ってただろ。苦しくても愛の思い出は忘れちゃダメだと…思い出を抱いて俺はお前を待ち続ける」
「そんなのダメよ。私は一生戻れないかもしれないの」
「…」
「死んでいるかもしれない私をずっと待ち続けるつもり?」
「お前が一生戻らなければ俺はまた生まれ変わるよ」
「…」
「お前もそうしろ。言っただろ…この愛は今世でも終わらない」
「あなたを苦しめたくない」
「お互いに、この気持ちがあればいいんだ。だから、必ずまた会える」
「…」
「分かった。選ぶのはお前に任せる。消すか、残すか、をお前が決めろ」
2人はしばし見つめ合った。
「決めたわ」
セファはジュンジェの顔に手を伸ばした。そして深く長いキスをした。