春のワルツ 最終話「愛と希望の島」
NHKガイドから
記者会見の席で、素性を問う記者からの質問にチェハが答えようとしたその時、会場に来ていた実父チョンテが、「自分の息子ではない」とチェハの言葉をさえぎる。「スホは自分のせいで今も行方不明だ」というチョンテの発言により、誘拐疑惑は一応の収まりをみせるが、この会見により、チェハとイナの結婚話が正式なものとなる。テレビで会見を見たウニョンは、チェハに電話を掛け、改めて別れを告げる。
その後心機一転、ウニョンは再びアクセサリーの制作販売を始め、精力的に仕事に打ち込んでいく。一方、チェハもCDが飛ぶように売れ、コンサートの開催も決定する。
コンサート当日。ピアノの中にウニョンの作った貝殻細工を置きながらリハーサルをするチェハ。そのことに気づいたイナは、しっとからその貝殻を黙って捨ててしまう。コンサートが開演。ピアノの席に着いたチェハは、貝殻がないことに気づき、舞台袖に引き上げて探し始める。そして、ゴミ箱の中にあった貝殻を取ろうとして、指を深く切ってしまう・・・。
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スホを呼び出したウニョンは、オッパーがユン・ジェハとして生きても私にとってはオッパーに変わりはないから、と涙ながらに別れを伝える。ウニョンの涙を見たスホは・・・。
記者会見の日がやってきた。
最初の質問は「あなたの本当の名は?」というものだった。
(19話ラストより)
「あなたの本当の名は?」と問われ、素直にイ・スホと名乗るかに見えたユン・ジェハだが、会見の席上へ父親のチョンテが飛び込んできて動揺した。
チョンテは会見に臨む者たちの前で、ユン・ジェハが自分の息子だとの噂があることについて、「ユン・ジェハさんは私の息子ではありません」と懸命な弁解を始める。
「自分のところに記者たちがやってきて、ユン・ジェハさんはあなたの息子ではないか、と騒ぐのでここへ出向いてきました。息子のイ・スホは自分が今もこのような体たらくなので今も行方不明のままです」
チョンテはテレビカメラに向かい、スホや、どこにいる、と呼びかけて必死の演技を続ける。
それを今にも泣きそうな表情で見つめ続けるチェハだった。
記者はユン・ジェハの方を向き直って、「実際のところ、どうなんですか」と迫った。
ユン・ジェハは開き直った。
「私はユン・ジェハです」
養父のユン・ミョンフンも子供の頃の写真を見せ、イナの助けまであおぎこれを取り繕った。
その模様をウニョンも街中のテレビで見ていた。
会見が終わった後、ウニョンはスホに電話を入れた。
「オッパー、これでよかったのよ」
「ウニョン、自分は」
「悪いと思わないで。言わなくてもオッパーの気持ちはみんなわかってる。二度と会えなくても私は大丈夫。目をつぶればそこにオッパーがいてくれるから」
そう言ってウニョンは電話を切った。
会見場で、ユン・ジェハは息子のイ・スホではない、と釈明したチョンテは昼間から酒を飲みながら街をさまよい歩いた。ユン・ジェハを自分の息子だと名乗れなかったことへのやるせなさや空しさからかもしれなかった。
チェハも自分を責める思いに駆り立てられながら車を走らせていた。会見場に現れた父を思い浮かべ、辛い思いや不安が胸をめぐっているようであった。
チェハが追突事故を起こした頃、道路にさまよい出たチョンテは走ってきたトラックにはねられる。
チェハが救急病院に駆けつけると、異母弟のカングはチョンテの遺体にしがみついて泣きじゃくっている。チェハ(スホ)も思いがけない実父の死に号泣した。
コンサートの日、会場にやってくるウニョンを見つけて駆け寄っていこうとするチェハだったが、ファンに殺到されてやむなく引き返す。
いよいよ開演。ステージに登場し、挨拶しピアノの前に座ったチェハだったが、そこにあるはずの貝殻細工がないことに気付く。リハーサルの時はあった。誰かにそれを捨てられたと感じたチェハは、ステージ袖のゴミ箱をあさって探し始めるが、割れたグラスで指を怪我する。血が流れ出す。
驚いたイナやフィリップはコンサートを中止させようとするが、ウニョンが来ていることを知っているチェハは、そういうわけにいかない、と公演を強行する。最後にウニョンへ捧げる曲、「愛しのクレメンタイン」を弾きだした時は、包帯から血が滲み、鍵盤にしたたり落ちた。弾き終えた彼は控室にたどり着く前に倒れた。
一方、自分に向けて捧げられた曲、「愛しのクレメンタイン」を聴き終えたウニョンは、その音楽の感動と感涙にむせび、しばらく席から立てなかった。
オーストリア旅行のあの時すでにオッパーとは再会していた。会場の外の階段に腰をおろし、自分はこの曲を懐かしさにひたりながらぼんやりと聴いたのだった。オッパーはあの時も自分へのこんな思いをこめて弾いていてくれたのかもしれなかった。ウニョンの目からは涙が溢れて止まらなかったのだった・・・。
演奏の余韻にひたりながら帰路につくウニョンのそばを救急車が走りすぎていった。怪我したユン・ジェハを乗せた車だった。
チェハの異母弟のカングはチェハと同じくミョンフンの家族に引き取られた。彼の家庭には平穏が戻っていた。
チェハは家族に近々オーストリアに発つことを告げていた。ウニョンの地に留まることが辛いからのようだった。
フィリップはウニョンに別れを告げにやってきた。愛した女性への惜別の思いと、ウニョンが愛してやまないチェハも一緒に外国へ発つという報告もかねていた。
その夜、ウニョンは部屋でオッパーの姿を思い浮かべながら別れの哀しみにくれた。
チェハが去る日、ウニョンはひっそり飛び立つ旅客機を見送った。
それから夏、秋、冬へと季節は推移した。雪の降るある日、イナがウニョンをヤンスンの店に訪ねてくる。
イナは自分の気持ちをウニョンに素直に伝えた。
「オーストリアも寒いけど、ここも寒い。寒いのはどっちも同じね」
「・・・そうですね」
「二人が恋しがっているのもきっと同じよね」
「えっ?」
「私、チェハさんとの結婚をとりやめて帰ってきちゃった。彼は今もあなたを愛しているわ」
「チーム長・・・」
「ジェハはピアノを弾かない。・・・いえ、弾けない」
「弾けないって? それ、どういうことですか」
「ジェハを完璧なピアニストにすると宣言しておきながら、私が彼を壊してしまった。彼はもう、ピアノが弾けなくなってしまったの。最後の公演の日、彼が大事にし、ピアノのそばから放さなかった虹の貝を私が捨てたの。それを捜そうとして彼は指をケガをした。深い傷でコンサートをとりやめようとみんなで説得したけど、彼はあなたのために演奏をやめなかった。新しく始めようと思ったけど、彼は今もあなたを愛してる。遅くなってごめんなさい。早く行ってあげて」
これから先のラストまでは説明などいらない。二人の再会場面までをじっくり楽しめばいい。じっくりというほど悠長に時間は流れてくれないけど、その分、簡潔ですっきりしたラストとなっている。
最後、二人のやり取りで出てきた「愛し合う者にとってお互いの心が家」というのは「冬のソナタ」でも似たようなくだりがあるが、これほど純粋性に満ちた言葉はないように思える。
付記(ニュース記事より)
「トンイ」ハン・ヒョジュ…「貴重な時間だった」
女優のハン・ヒョジュがMBC時代劇「トンイ」の最終回を終えて感想を伝えた。
ハン・ヒョジュは慶州(キョンジュ)で最後の撮影を終えた後「本当に最後なんだという実感がようやくわいた」と話した。
彼女は準備期間まで含め、1年間、日記を書く時間もないほど「トンイ」に専念した。ハン・ヒョジュは「人生の上でも女優としても本当に貴重で多くの経験ができた時間だった」とし「すべての時間を注いだ分、欲もわいたが、すべてかなわなくても熱心に撮影したので悔いはない」とコメントした。彼女は8カ月間、後の英祖(ヨンジョ)王の母となる淑嬪崔(チェ)氏「トンイ」を演じた。
「トンイ」は彼女が初めて挑んだ時代劇だった。SBS「華麗なる遺産」の成功に続き、次期作だった「トンイ」も良い成績をおさめ、「視聴率保証小切手」女優に定着した。
MBC「トンイ」は12日、60話をもって幕を閉じた。