雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「青い海の伝説」第17話④





韓国ドラマ「青い海の伝説」第17話④



韓国ドラマ「青い海の伝説」第17話③


★★★

 ジュンジェはナムドゥの声を聞きながら父の言葉を思い返していた。

―お前は詐欺師だろ?

 父は自分の言葉よりカン・シネを信じてる様子だった。
「しかし…ひどい話だな」
「…父さんは知らないかも」
 ジュンジェは言った。
「どういうことだ?」ホン刑事。
「父さんは…」口にしかけてジュンジェはため息をつく。「ほぼ、視力を失ってる」
 ホン刑事は合点がいったらしい。
「前の事件と同じか…」
「父さんは俺にも―気づかなかった。
「だのに、何で一人で出て来たんだ?」
 ジュンジェは答えた。
「俺を詐欺師だと言った。信じられない、と…」
 みなは黙り込んだ。
 ジュンジェはポケットから小さな透明容器を取り出した。これを調べてほしい。ホン刑事に渡す。
「何だそれは? 針か?」とナムドゥ。「これで目を刺した?」
 容器はホン刑事から相棒に渡った。
「それから…これも」
 薬ビンを取り出しホン刑事に渡す。
「あの女は昔から薬を飲まない。おそらく父に飲ませた薬だ」
 ホン刑事は相棒に薬ビンを渡しながら指示を出す。
「成分と入手経路を調べろ」
「もう一つある」
 ジュンジェは携帯画面に花の写真を取り出した。ホン刑事に見せた。
「部屋中に咲いてた花だ。なぜか妙に気になる」
 画像を拡大する。
「何の花だ?」
 画像を見てナムドゥが口を開く。
「トリカブトだ」
「何?」
「猛毒を持つ植物です。古代ローマの跡目争いでも暗殺などに使われてたと…」
「あり得る話だ」とホン刑事。「過去にもトリカブトを使った殺人事件はあった」
「何てやつだ…」
「協力してくれ。時間がないんだ」
「…」
「証拠は揃ってる。早く家宅捜索の方も」
「おい、そんな簡単に…」とホン刑事の相棒。 
 目をつぶっていたホン刑事は目を開けた。
「分かった。やる。何とかするから安心しろ」 

★★★



 行く当てもなく雨に濡れそぼっているマ・デヨンのそばに一台の車がライトを光らせた。車から降りてきたのはカン・シネだった。
 携帯で居場所を突きとめたのだ。
 車を見て背を向けた彼をカン・シネが呼び止める。
 マ・デヨンは怪訝そうに振り返る。カン・シネを見ても誰か思い出せない。
「私よ」カン・シネは叫んだ。「カン・ジヒョン」
 ”カン・ジヒョン”と聞いて、マ・デヨンの記憶は遠い昔へ飛ぶ。
 施設にいた頃だ。
―あなたがデヨン?
 彼女はそう言って自分に話しかけてきた。彼女はしゃがみ込み、同じ目線で訊ねてきた。
―養子縁組を解消されたでしょ?
 デヨンは頷く。ジヒョンは言った。
―次は私がその家に引き取られるそうよ。
―…。
―だから知っておきたいの。
―毎晩、怖い夢を見て…大声で泣いたから。
―お金持ちの家?
―…。
―私、お金持ちの家に行きたいわ。お姉ちゃんみたいに。私が引き取られたあとも、何かあったら手紙送ってもいい?
―当時から無口だったデヨンは黙って頷く。
―ありがとう。何を描いてるの?
 デヨンの描いてる絵を見てカン・ジヒョンは訊ねた。地面にチョークで女の顔と魚の絵が描かれていた。
―人魚姫なの?
 ”あの時の…!”
 マ・デヨンは自分を見ている女をまじまじと見つめ返した。



 セファの部屋で賑やかな音楽が聞こえてくる。
「うるさいぞ!」
 ジュンジェは大きな声で注意を促す。
 しかし返事がない。
 ジュンジェはセファの部屋に上がった。
 音楽は鳴り続けているのにセファはベッドの中にいる。
「何だ? 具合でも悪いのか?」
 急いでセファのベッドに歩み寄る。そばに行って音楽を消した。
「何してるんだ?」
 ベッドにはいったままセファは何の反応も見せない。ジュンジェは彼女の額に手を押し当てた。
 びっくりして手を取った。
「すごく冷たいぞ」
 セファはジュンジェの手を押しのける。
「行って」
「えっ?」
 セファは身体を起こした。
「出てってよ」
 二人は目を合わせた。
「勝手に心の声を聞かれたくないの。あなたにみんな聞かれてしまうと思うと考え事もできない」
「考え事って? どんな?」
「何だろうと私の勝手でしょ。自分の気持ちを一方的に聞かれるのがどんなに不快かわかる?」
「…」
「お願いだから私から離れて」
 いつもと違うセファの態度にジュンジェは何も言い返せない。
「それとも私が出て行こうか?」
「…いや、俺が出ていくよ。何か分からんが、思う存分考えたらいい」
 ジュンジェはセファを抱きしめる。
「お前、本当に大丈夫だよな?」
 セファを抱いたまま感じたことをつぶやく。
「心臓は元気みたいだけど…」
 セファは瞑りかけていた目を開ける。ジュンジェを押しのける。
「出てって」
「ああ、分かってるよ」
 ジュンジェはベッドの縁から慌てて腰を上げる。
 梯子階段の出入り口で立ち止まる。
「ああ…、家から出て行った方がいい? でも、外は寒いからリビングで寝るよ。あそこなら聞こえない」
「…」
「本当だって。もし聞こえたら正直に報告するから。俺を信用してくれ」
 セファは言った。
「分かったから出てって」
「ああ…」
 ジュンジェが出て行くと、セファは音楽をかけてベッドにもぐりこんだ。


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