雨の記号(rain symbol)

第4回ABEMAトーナメント予選Dリーグ第三試合から




第4回ABEMAトーナメント予選Dリーグ第三試合から




チーム永瀬 VS チーム広瀬


第一局



北浜八段 対 屋鋪九段



結果➡屋敷九段の勝利。


 先手の北浜八段が後手陣金銀をバラバラにし、ペースを握ったかに見えた。しかし、守りの薄い後手玉は駒を補強せず、大駒で反撃態勢を整えつつ上手く逃げ回った。
 攻めを急がねばならない先手は飛車を打って攻め立てるが持ち駒不足が最後まで響いた。
 後手に入玉を確実にされて投了に追い込まれた。
 



第二局


屋敷九段 対 丸山九段


結果➡屋敷九段の勝利。


 一手損角換わりから先手の屋敷九段は居飛車穴熊。丸山九段は右玉の戦いになった。
 先手の穴熊が守りは固い。だが、攻めの態勢は馬を作っている後手の方が攻めやすいようだった。
 後手の歩切れをついて先手が5筋から機敏に攻めた。駒を清算し合って、後手玉の近くに先手の攻め駒が残ったのは大きかった。
 1八の角が遠く7二の玉を睨んでいて。最後はその角を切って後手玉を寄せきった。



第三局


広瀬八段 VS 屋敷九段


結果➡広瀬八段の勝利




 両者矢倉に囲ってがっちりした戦いになった。後手の屋敷九段が積極的にしかけ、先に先手玉を脅かした。だが、広瀬八段は後手の厳しい攻めを耐え忍んだ。
 後手の攻撃が緩んだのを機に広瀬八段は果敢に反撃した。歩や香で守り金駒を圧迫し、取ったその駒を使って玉を追い立て、最後は馬と取った飛車で後手玉を即詰みに討ち取った。



第四局


永瀬王座 対 丸山九段


結果➡永瀬王座の勝利


 対局後の丸山九段の感想。
「さすが戦い慣れてるなあと思いました…」
 
 永瀬王座の将棋は腰が重くてしぶといのが特徴だ。押しても引いてもぽっきり折れない。一の矢、三の矢の波状攻撃がないと倒せない。
 丸山九段が調子よく攻める展開だが、相手の攻め駒を攻めて自玉を固めていく永瀬王座のお家芸の展開となった。
 この将棋も一時は上下段から挟み撃ち攻撃で、永瀬王座の玉は危なっかしく感じられた。だが永瀬王座は後手の厳しい攻めを浴びつつも入玉路を切り開き、いつしか入玉してもよし、攻めてもよしの局面を作り出している。
 最後は金を馬と竜の両取りに打った。次に取った角を6四地点に打ちこんで王手飛車取りの鮮やかな狙いを秘めた手だった。
 この手を見て丸山九段は投了を告げた。



第五局



北浜八段 VS 増田六段


結果➡増田六段の勝利


 中盤まで先手の北浜八段が上手く攻めていたし、増田六段は応手に苦労していた。北浜八段にチャンスは幾度もあったが、増田六段は混戦の中でじりじり態勢を立て直した。
 北浜八段の穴熊は金銀に囲われ鉄壁の守りを誇っている。一方、銀が主力の後手守備陣は一度手がつけばすぐにも瓦解しそうに見えた。
 竜が増田陣に攻め込み途中まで先手が優位に見えていたが、馬と桂と歩の攻めで先に敵陣を攻略したのは増田六段だった。
 後手の急所をついた鋭い攻めに2六地点まで玉を引っ張り出され、先手は無念の敗北を喫した。


 戦いはチーム永瀬の4勝に対し、チーム広瀬は1勝となった。チーム広瀬は敗北の瀬戸際に立たされた。
 


第六局



増田六段 VS 広瀬八段


結果➡広瀬八段の勝利。


 崖っぷちに立たされたチーム広瀬はリーダーの広瀬八段が勢いを見せる増田六段と対決した。
 負けられない広瀬八段はかつて勝ちまくった振り飛車穴熊で先手の増田六段に対抗した。
 増田六段も居飛車穴熊の堅陣で対抗。
 双方、ガチガチに固め合って一進一退の攻防となった。
 大駒を成り合った後、守りの金銀を剥がすべく先に攻勢をかけたのは広瀬八段だった。
 増田六段も6四の桂打ちから8四歩と打って反撃するが、駒の剥がし合いは広瀬八段が一手先着していた。
 チーム広瀬は2勝。



第七局


広瀬八段 VS 永瀬王座


結果➡広瀬八段の勝利


 リーダー同士の対決となった。


 結果から見ると、広瀬八段の勝負を捨てないモーレツな粘りが安全勝ちを目指す永瀬王座の指し手のリズムを狂わせた。
 後手の強烈な攻めに耐えながら、一瞬のチャンスをとらえて強引に敵玉に迫った。攻撃は最大の防御 ― 広瀬八段は角を成り、桂を打って詰めろをかける流れに持っていった。
 それから後手の攻めを凌ぎ切った。
 ふだん口惜しさを表に出さない永瀬王座は、局後、増田六段と屋敷九段の前で、大逆転を食った自分の将棋をめずらしく悔いていた。
 逆にいうとこの対局での広瀬八段の勝負術は見事のひと言だった。
 


第八局


増田六段 VS 北浜八段


結果➡北浜八段の勝利


 再度の対戦、例によって居飛車対振り飛車の戦いとなった。角を持ち合って後手の北浜八段は向かい飛車で先手に対抗した。
 互いに馬を作り合って敵玉の攻略を目指す。
 後手の猛攻を凌いでと金で迫る先手に勝利の女神が微笑んだかに見えた。
 しかし、北浜八段が歩を2枚使って香を金で取った手が後から考えると味わい深かった。4五香打ちから詰み筋など縁台将棋の人間に読めるわけもないので…。
 先手の2五桂打ちに対し、後手は待ってたとばかりに4五香打ちから先手玉を寄せ切った。
 



第九局


永瀬王座 VS 丸山八段


結果➡永瀬王座の勝利


 丸山八段はお家芸の一手損角換わりで永瀬王座に挑んだ。
 角換わりの将棋は流れ弾にあたりやすく、ちょっとした見落としが致命傷になってしまう。
 果たして激しい戦いになった。
 丸山九段は馬を作り取った桂を打って攻勢をかけて優位を築くが、永瀬王座は持ち前の手厚い将棋で反撃に出た。馬をつくり桂を成って飛車の抑え込んでからは、後手に何もさせない展開となり、後手玉を包囲して投了に追いやった。


 5勝4敗でチーム永瀬が辛くも勝利をもぎ取り、予選1位となった。


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