雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(36)





韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(36)


 祖母の家に寄ってクムスンの帰りは遅くなった。
 ジョンシムはクムスンの帰りを待ち受けていた。文句と愚痴を並べるためだった。
「お義母さん、遅くなりました。フィソンは寝ましたか?」
「・・・遅くなりました? 自分の子供が心配じゃないの?」
「…」
「あなたの行動は――子供のことを考えてないわ。母親がこんなに遅く帰ってきてどうするの。昼間のことを忘れたの」
「私だって心配してます。でも心配ばかりしても始まらないし」
 ジョンシムはため息をつく。
「それに今日は家族がみんな家にいたから」
「言い訳はよしなさい。あなたの子は自分で見なさい。自分の子を私たちに見させるの?」
「…」
 ピルトが部屋から出てきた。
「どう考えても理解できないわ。当分仕事を休みなさい」
「…」
「あなたのおばあさんに預けるのも不安でならないし、私も怪我をしてるから、私が治るまで美容室を休むのよ。わかった?」
「…」
 シワンとテワンも部屋を出てきた。円卓の前に座った。
「確かに忠告したわよ。わかった? それで解雇されてもしかたがないわ。その時は他の美容室を探しなさい。分かったわね?」
「それは出来ません」クムスンは答えた。
「できない?」
「はい。できません。絶対に嫌です」
「嫌だって?」
「はい」
「クムスン」とピルト。
「すみません、お義父さん。お義母さんには従えません。それに今日は――お義母さんのいうことは理解できないし、腹も立ちます」
「クムスンさん」
 シワンが穏やかに咎めた。
 テワンも続いた。
「おい、弟嫁」
「口を慎んでください。弟嫁に”おい”ですか?」
 クムスンの剣幕にテワンは引っ込んだ。
「クムスンさん、外で何かあったの?」
 とシワン。
「すごく苛立ってるようだけど」
「はい。お義母さんの言葉に腹が立ってます。何かある度”仕事を辞めろ”といいますが――お義母さん、なぜ私の仕事をそう軽んじるんですか?」
 クムスンの逆襲にジョンシムは困惑した。
「この人は何を言ってるの? 私がいつそんなことを?」
「なぜ私にだけ辞めろと? お義母さんはお義父さんにも職場を辞めろと言えますか?」
「そんな話が通ると思ってるの?」
「はい。私にはどうしても理解できません」
「理解できないわけないでしょ。フィソンがいるから言ってるのよ。今のうちの状況も分からないの?」
「フィソンは祖母がいます。それに家事は女の義務ですか? 下のお義兄さんは一日中遊んでるんですよ」
 テワンは驚いて目を剥いた。
「おい!」
「”おい”と言わないで」
 またまた剣幕に押されるテワン。
 シワンは穏やかな口調で意見する。
「クムスンさん、言いすぎだよ。少し落ち着いて」
「この子はどうしちゃったのよ? 何かあったの?」
 クムスンはグスンと泣いた。
「祖母の具合が悪いんです。フィソンを見失ったことで、罪悪感を感じ、意気消沈して寝込んでます」
「そんなに悪いのか?」とピルト。
「重病ではありませんが――苦労してフィソンを見てくれたのに、私が見失ったことを咎めたんです。ひどい言い方で」
 ピルトやジョンシムらは何も言えなくなる。ひどい言葉で誰かを傷つけた経験は誰だって持っている。
「お義母さんもそうです」クムスンは続けた。「わざと迷子にしたわけでもないのに、フィソンを見失ったからもう信用できないのですか? だったら、お義母さんが一度でも面倒を見てくれました?」
「クムスン!」ピルトは厳しい口調で言った。「お前が傷ついたのは分かるが、お前も度が過ぎている。言いすぎだろ。姑に真っ向から逆らう嫁がどこにいる?」
 クムスンはグスンと鼻を鳴らした。
「分かります。悪いのは分かります。だからと言って、なぜですか? お義母さんは私を怒るだけで、何事でも私が悪く、”仕事を辞めろ””フィソンも自分で見ろ”と言います。私を嫁と認めていません。本当に嫁と思うならそんなこと言えますか? どうして」
 とうとう泣き出す。
「すぐに”出てけ””仕事を辞めろ”と言って、それに”自分の子は自分で世話をしろ”と? フィソンは孫ではありませんか? 私は嫁じゃないんですか?」
 ジョンシムは返す言葉を失ってクムスンの話を聞いていた。

 クムスンにありったけの思いをぶつけられて、ジョンシムはしょげ返ってしまった。彼女の放った言葉はことごとく跳ね返された。痛いところをついて彼女を苦しめた。
 ボーッと呆けたように座っている彼女の前にピルトの手で布団が出される。
「ほら、横になれ」ピルトが言った。
 何をやる気も起きない。横になる気力もない。
「眠気がくると思う? ほんとに呆れるわ」
「そのままでいるつもりか?」
「急に泣き出すから何も言えなかったけど、考えれば考えるほど呆れるわ」
「だから、余計なことなど考えず、早く寝ろ」
 ジョンシムはジロっとピルトを見た。
「仕方ないだろ。もう勝負はついたんだ」
「どうしてあの子の肩ばかり持つの?」
「そうじゃない。自分が腹を立てる理由が分かるか? あの子の話は正論で、反論できないからだ」
「…」
「クムスンの言ったことは正しい。なぜすぐに”出てけ””仕事を辞めろ”と言うんだ。仕事への熱意を知りながらだ。だから――そんな目で見てもダメだ。姑だからと意地を張るのはやめろ。情けない結果だろ。舅の体面もよくないし、お前の肩を持つわけにもいかない」
 ジョンシムはピルトに恨めしい目を向けた。

 テワンはいきなり身を起こした。クムスンに言われたことが頭の中をまわり、寝付けないのだ。
「”一日中遊んでる”だ? ”口を慎め”だと?」
 シワンはシワンで思案に耽っている。
「どう考えても許せない」
 シワンに考えを求めても反応がない。
 ふと見るとシワンは自分の世界にはまっている。
「その女とは何が問題なんだ?」
「気にするな」
「二股か? 他に男がいたのか?」
「やれやれ~、お前らしい憶測だ」
「それは当然だろ」
「…」
「どうなってるんだ。俺が見たときはいい雰囲気だったのに、急にどうしたんだよ」
「…」
「もしや? あっちに問題でも?」
 シワンは眠そうな目をテワンに向ける。
「近頃、ストレスで性機能がどうとかこうとかってあるだろ? うまくいってたから、問題はそのくらいかと」


 朝になった。
 昨夜の苛立ちを忘れ、クムスンはいつものように家族のご飯をつくった。
「お義母さん、おこげスープです。どうぞ」
 ジョンシムの好きなおこげスープは家族全員に回される。
 ジョンシムはフィソンにご飯を食べさしている。
 場が落ち着いたところでクムスンは切り出した。
「フィソンを見つけた先生にお礼がしたいんです」
「そうだな。何でお礼をすればいいかな・・・?」
「私に出来るのは料理なので、おこわを作って挨拶に行こうかと」
「それはいい。心がこもってるからいいんじゃないか」
「じゃあ、そうします。私も休みですし、都合が会えば今日にでも。お義父さん、電話番号は」
「わかった。食事が終わったら名刺を渡すよ」


 オ・ミジャは一人息子のためにジュースを運んできた。
 するとジェヒは出かける支度にかかっている。
「あら、寝ずにまた仕事?」
「仕方ないんだ」
 ジェヒはシャツを着替えながら答える。
「こんなに痩せちゃって。早く飲みなさい」
「徹夜で食欲がない。あとで」
「飲むだけじゃないの」
「あとで。そうだった」
 資料を用意するジェヒにオ・ミジャは言った。
「私に届けるように言えばいいのに。その間、医局で眠れるでしょ」
「資料だから無理だ」
「こんなに忙しくて大丈夫?」
 資料をバッグに放りこみ、そばにあった上着を手にする。
「初めて見る服だわ」
「ウンジュが買ってくれた」
 オ・ミジャはジュースを差し出す。ジェヒはグラスを握った。
「ウンジュも連れまわさずに家で休ませてほしいものだわ」

 昨夜のことを思い出しながら、ウンジュはルンルン気分だ。
 自分のどこにあんな大胆さがあったんだろうと思う。一方でそんな自分が恥ずかしかったりもする。
 ウンジュは昨夜の出来事を頭の中に巻き戻した。
 子供のころからずっと好きできて、初めてのキスだった。
 ひょっとしてジェヒさんも、思わず笑いと恥ずかしさがこみあげる。
 この時、ドアが鳴った。
 ウンジンが入ってきた。
「送ってくれないの」
「準備できた? ちょっと待ってて」
 ウンジュはベッドから脱け出る。
「ずっと待ってるのに。遅刻しそうよ」
 ウンジュが出てくるのを待つ間、ウンジンは母親に電話を入れる。
「ずっと付いててあげたいのに~、ママ、学校に行く前にそこへ寄ったらダメ?」
「ダメよ。早く送ってもらいなさい」
 電話してるヨンオクの病室にキジョンが顔を出した。
「パパが来たわ。すぐに透析ね。分かってるわ。早く学校へ行きなさい」
「何だって?」とキジョン。
「食事しろ、パパの言うことを聞け、透析でつらかったらすぐに言え」
「俺と同じだな」
「大人みたいよ。あなたそっくりだわ」
「俺の娘だから当然だ。ふっふふふ」
 携帯が鳴った。
 クムスンからだった。ヨンオクに話を聞かれるのが嫌だった。少しやりとりしてキジョンは廊下に出た。
「先日は気が動転してて、ろくに挨拶もできなかったので、もしよろしければ一度、お伺いしたいのですが~、はい。お時間はありますか?」
「お嬢さん、いや、お母さんの予定は?」
 キジョンはクムスンの都合に合わせて電話を切った。

 カンファレンスでジェヒを報告を受けながら、キジョンはずっとクムスン母子とヨンオクのことに気持ちを奪われていた。二人を合わせてやりたい。できればヨンオクの力に彼女がなってほしい気持ちが動いていた。

 ジョンシムはテワンに運転させてシワンの職場に向かった。
 目的はシワンが付き合っている女性、ハ・ソンランに会うことだった。
 それを知って、テワンは母親が会うのに反対する。だが、ジョンシムは聞きいれない。
 銀行に着いた。
「俺が兄さんと彼女がいるか見てくるから、母さんはここにいて」
 テワンが銀行の中へ消えてまもなく、ハ・ソンランの車が横付けされた。
 ジョンシムは一度、写真で彼女の顔を見ている。つい先日だ。彼女と気付くのに時間もかからなかった。
 ジョンシムは彼女と話をしようと思い立った。ドアを開け、わざと松葉杖を落とした。
 ソンランはすぐ松葉杖を拾い上げた。
 松葉杖を渡し背を返そうとした時、ジョンシムは彼女を呼び止めた。
 振り返った彼女にジョンシムが何を話そうか言いよどんでいた時、ソンランはシワンが乗っていた車だと気付いた。ソンランはジョンシムを見た。母親だと直感したのだ。
「そうよね。あなたがこの車を知っているのは、ハ・ソンランさんだからでしょう?」
 ソンランは頷いた。
「やっぱり~、私が誰だかお分かりになる?」
「シワンさんのお母さまですね?」
「よくお分かりに」
「彼に会いに? でしたら私が呼んできましょうか?」
「いいえ。下の子が呼びに言ったからいいんですよ。よかったら、少しお話でもいかが?」

 二人は車の中で話し合いを持った。
 ジョンシムは単刀直入に訊ねた。
「シワンのことをどう思います?」
 ソンランは笑った。
「笑ってないで。私はクールな人間です。クールに答えてください」
 ジョンシムのひと言で彼女は真顔になった。
「彼ほどの男性はいないと思ってます」
「私と同じ考えね」
 ジョンシムは喜んだ。
「じゃあ、どうして言い争いを?」
「それは――シワンさんではなく、私に問題があるんです。シワンさんは私にもったいないです」
 ジョンシムは感心した。
「お嬢さんは本当にクールね。正直に整然と言うことを言えて」
「はい、お母さま。そこが問題だとよく言われます」
 ジョンシムは笑顔になった。ソンランが気に入ったようだった。
「私もクールな性格だから、お互い話が合うみたい。原因はわからないけど、早く仲直りしてね」
 ソンランは複雑な表情で頷いた。

 出かける用事があるので、クムスンはフィソンの世話を電話でジョムスンに頼んだ。ジョンシムへの文句を並べながらジョムスンはフィソンの世話を引き受けた。
 しかし、難題はスンジャだ。ジョムスンはスンジャをうまくまいてクマの部屋にやってきた。フィソンの件を頼み込んだ。

 クムスンはフィソンをそばに置いておこわを作った。
 作ったおこわを持って病院に出かけた。
 病院にやってきて乗ろうとしたエレベーターにはジェヒが乗っている。そのエレベーターにクムスンは走りこむ。乗り込んでからジェヒに気付いたクムスンは明るい声で挨拶する。
 しかし、ジェヒからお返しの挨拶はない。クムスンの顔を無表情に見ただけで前を向き直る。
 エレベーターが止まる。そこにはジェヒの後輩医師が立っている。二人はジェヒを見て一瞬顔を強張らせ、挨拶して乗り込んでくる。しかし、ジェヒはやっぱり挨拶を返さない。クムスンにとってそんな彼は無礼者だ。偉い立場の医者みたいだが、クムスンにはどうにも許せないものがある。
 クムスンは一計を案じた。
「おっ?」ジェヒの腰の辺りを見てクムスンは言った。「何かついてる」
 ジェヒは下を見た。それが挨拶に見えてクムスンは喜んだ。
「やっと挨拶したわ」
  ジェヒは不快感を見せたが、二人の後輩医師を始め、周囲の者は可笑しそうにした。クムスンは言った。
「挨拶をしてきたら、きちんと返さなきゃ。私が挨拶しても一度も返したことがないわ」
「…」
「なぜしないの? 挨拶中に死んだ祖先でも?」
 笑いものにされ、ジェヒはむかつき顔になる。
 エレベーターが止まった。
「私はここで」
 クムスンはジェヒに挨拶しておりていった。
 クムスンがおりた後、可笑しそうにする後輩医師をにらみつけたジェヒだったが、我に返って彼もふと失笑した。


 クムスンはキジョンの部屋の前にきた。ドアを叩くと返事があった。
 クムスンはキジョンの前に進んできた。
「こんにちは。先ほどお電話した~」
「これはどうも」
「早く着いたのですが、お忙しければ―いや、かまいません。どうぞ、座ってください」
 キジョンは席に座ろうとするクムスンをじっと見つめた。






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