韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(41)
クムスンはシワンを病院に見舞った。
シワンは寝ているテワンを起こした。そばに寝ているテワンが気になり、眠れないからだった。
テワンは落ち込んで病気になってしまった兄が悔しくてならなかった。付き添っていたかったのを拒まれたせいもある。だがそれ以上に真面目な兄が相手の女に遊ばれた話が許せなかった。
テワンは兄と言い争って病院を飛び出していった。
シワンに、テワンと一緒に帰ってくれ、と言われ、テワンを追いかけて出てきたクムスンは、テワンが女のもとに怒鳴り込もうとしているのを知ってあわてた。
この剣幕じゃ事をもっとこじれさせると感じたクムスンは、テワンの乗り込んだタクシーに自分も乗り込んだ。一緒についていった。
タクシーを降りた後も、女に会うのはやめろ、と説得を続けるクムスンだが、テワンと考えをぶつけあい、何とか説得が功を奏したかに見えた時、たまたまこっちに向かってくるハ・ソンランに気づいた。
まずいことに彼女は若い男と一緒だった。
それがテワンの怒りを刺激した。
テワンは彼女の前に立ちはだかった。
「おばさんがハ・ソンランか?」
「そうですけど、どなた様?」
「俺はノ・シワンの弟、テワンだ」
「ああ・・・聞いたことあるわ」
ソンランの応接はリラックスムードだ。
タイミングを得て、クムスンも挨拶した。
「こんばんは。私は弟嫁のクムスンです」
「そうですか」
テワンは直接的に訊ねた。
「おばさんが兄さんを振ったの?」
「・・・」
「いいから答えてくれないか」
「・・・」
「適当に遊んで振ったのか?」
そんな乱暴な言い方しないで、とクムスンは顔をしかめてなだめる。
同伴の男がソンランに訊ねる。
「何です? この人たちは」
「いいの、黙ってて」
ソンランはテワンを向き直った。
「ずいぶん、無礼ですね。この事、シワンは知らないわね」
「兄さんの名前を呼ぶな! 友達のつもりか? 気軽に呼ぶんじゃない」
「・・・」
「無礼だと? なら別れてすぐ――他のやつと楽しんでるおばさんはどうなんだ? それで礼儀か?」
「何ですって! テワンの弟って・・・あなた、チンピラ? こんな乱暴な行動をして――こんな行動したら兄に迷惑がかかるとは思わない?」
「・・・」
「2人とももう大人なの。余計なことを」
「そちらこそ”チンピラ”ですって?」とクムスン。「私は義兄を引き止めに来たけど、あまりにひどい人だわ。何てことを言うの? ”チンピラ”に”乱暴”? あなたも頭があるなら――なぜ見知らぬ私たちがここで腹を立ててるか考えて見ないの?」
「そうね、お嬢さん・・・いいえ、おばさんかしら? 話は立派だけど、なぜ私が見知らぬ人たちに侮辱を受けるの?」
「義兄が入院したんです」
「・・・!」
「理由は分からないわ。でも、あなたと関係があるはずよ。だから・・・あなたも苦しんでると思ったけど・・・」
ソンランは途中からクムスンの話を聞いていない。シワンのことを考え始めたようだ。
「でも、あなたはなんともなく、楽しそうにしてて――とても不愉快だわ」
「・・・」
「義兄は病気なんです。バカみたいに――一人だけ病気になったのよ」
「どこが悪いの?」
「それは関係ないだろ。おばさん、最後に言わせてもらうよ。良識を持ってくれ。非常識過ぎるんだ。自分のしたことに責任を取れよ」
「・・・」
「少し美人だからって、人の心を弄ぶんじゃない。分かるか?」
ソンランはテワン独断の話は聞いていない。ひたすらシワンの病気を心配している。
ソンランの黙り込んだ姿を見てテワンはクムスンを促した。
「行くぞ」
シワンは屋上に上がり街の景色を見やっている。しかし、シワンにとって目の前はぼんやりした明かりの渦が広がっているだけだ。
シワンは自分の言葉を思い出していた。
――お前が俺の初恋だった。お前が笑うと男は勘違いするんだ。本当だよ。俺もそうだったんだ。
――今日のは告白なの?
――どんな女か知って交際すべきだろ。
――私はもう結婚しててバツイチの子持ちだと宣言しなきゃダメなの?
シワンは指輪を取り出した。
「いいよ。潔く忘れてやる」
指輪を握りしめた。
思い切り、街の海へ投げ込んだ。
病室に戻ってくるとテワンとクムスンがいる。シワンは驚いた。
「またどうしたの?」
「ちょっと出かけてきた。どこ行ってたの?」
「ちょっと気分転換さ」
「お義兄さん」
クムスンが切り出した。
「はい。どうしたんです?」
「今日、シャンプーテストに合格したんです。私の合格は本当にすごいことなんですよ。でも、家では誰も祝ってくれなくて・・・だから、お義兄さまには祝っていただきたくて」
「ああ、そうですか。本当におめでとう。本当に凄いです。家事や育児で大変だったのに」
「そうなんです」
「いつ練習してたんですか?」
――3人は酒でクムスンの合格を祝った。しかし、シワンだけは飲まなかった。
チャン家での騒動を目撃して以来、オ・ミジャのチャン・キジョンへの評価やイメージはすっかり失墜したようだった。
ウンジュの豹変ぶりにも驚いた。だが、チャン・キジョンの暴力のせいで彼女には可哀そうな思いの方が優ったようだ。
当のチャン家でも家族の絆はバランスを失いだしている。
ヨンオクはキジョンのウンジュに対する暴力を咎めた。
「・・・あなたはあれが私の肩を持つことだと考えていたでしょ? 分かりませんか? 私のためにならないことを」
何も弁解せず、キジョンは書斎を出ていった。
朝になった。
キジョンはウンジュの部屋にいった。
ウンジュはシャワーを浴びて部屋に戻ってきた。
「早いな。酔いは醒めたか?」
「・・・」
「ジェヒと飲んだのか?」
「・・・出勤準備をするから出ていって」
「昼に病院に来なさい。昼飯を食べよう」
「・・・今日は忙しいわ」
「夕食はどうだ?」
「夜も忙しいの」
キジョンは都合をゆずった。
「ちゃんと話をしよう。いつがいい?」
「話すことはないわ。仕事に遅れるわ」
「それが言いたい言葉か?」
ウンジュは鏡の中から振り返った。
「なぜ、あんなことを?」
「全部、事実でしょ? でなかったら、いつも言ってることよね。ほんとのことを言っただけなのに――なぜ、手をあげたんです? 院長の前だから? 2人に結婚を暴露して、体裁を傷つけたから?」
「・・・」
「どう? 当たってない?」
「そうだ。正確に核心をついたよ。だが、事実を話してお前に何の得がある。せいせいしたか? 満足か?」
「ええ、すっきりしたわ」
キジョンはムッとした顔で出ていった。
ユン室長はお客にシャンプーをさせようとヘミを探した。しかし、ヘミはいない。ユン室長は掃除しているクムスンを呼んだ。
ユン室長はお客に説明した。
「ヘミさんがいないので、今日はクムスンさんにやっていただきます」
クムスンは顔を上げた。
「クムスンさん、シャンプーをお願い」
「はい」実践の機会を得て、クムスンは喜んだ。「お客様、クムスンです。どうぞよろしくお願いします。ではこちらへ」
ヘミはお客のシャンプーが終わった頃に顔を出した。
お客が満足してることにヘミは腹を立てた。
トイレにいって悔しさを紛らしていると、クムスンが携帯を返せとやってきた。
今日はスンジャの初出勤の日だ。
スンジャの家では相変わらず、漫才のような皮肉合戦が朝から続いている。
クムスンはスンジャを連れてキジョンの部屋を訪れた。
クムスンはキジョンをスンジャに紹介した。
「就職の世話をいただいた先生です。私の叔母です」
「始めまして、チョンと申します」
「こんにちは先生。本当に何と言って感謝を申したらいいか・・・」
「いいえ。空きがあり、ご紹介しただけです」
「そうだとしてもとても感謝しています。クムスンを可愛がってくださり、配慮もしていただいて。私や義母も感謝しています」
「はい。かわいい子ですね。いい子ですよね。夫もなく一人で子育てをして、若いのに婚家で義両親に仕えていて」
クムスンは不思議そうな顔になった。
「そうですとも。独り身で本当に頑張っていますとも。立派です」
「先生、どうして私が独り身であることを?」
「・・・」
「あなたが話したんじゃないの?」
「そんなはずないわ。話したことはないのに・・・」
「き、君から聞いたんだけど・・・クムスンさん」
「私がですか?」
「そうだよ、この前・・・」
キジョンは苦しい言い訳をした。
「だから知ってるんだ」
「そうでしょ。それ以外に知るはずがないわ」スンジャが言った。
戸惑いつつもクムスンは話を合わせた。
「そうなんですね。忘れてたみたいです」
キジョンはあわてて二人を促した。
「では行きましょう。食堂で待ってますから」
「はい」
「では行きましょう」
促しておいてキジョンは足をとめた。複雑な思いが胸の中をめぐった。
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