キスした後、チョルスは言った。
「自分の気持ちはちゃんと伝えたぞ」
しかしアンナはまだ呆然としている。
チョルスはカバンのところに向かう。カバンを握って歩き出し、アンナを振り返る。
アンナは同じ場所に突っ立っている。まだ自失の状態だ。
「サンシラーッ!」
チョルスの言葉にアンナはようやく我に返る。
「何よ」
「留守の間、元気でいろよ。行ってくる」
「チャン・チョルス!」
アンナは叫ぶ。
「し、しばらく会えないのにこのまま行ったら、行ったら…、あっ、そうだ、食料を買わなきゃあ!」
アンナはチョルスの前にツカツカ歩み寄った。
「食料買ってから行って」
そう言ってアンナは先に車のところに歩き出す。チョルスは呆れて笑った。
ビィラ棟(社長の部屋)を出てきたユギョンは、アンナの顔が頭に焼き付いて離れない。
「じゃあ、あの女が…、死んだはずの社長の妻ってわけ?」
ユギョンの脳裏でいまいましさが横切った。
同時にチョルスの立場を思った。
「チョルスさんは何にも知らないでいるわ」
すぐにも連絡を…ポケットから携帯を取り出す。
「彼に会わなきゃ」
急いで電話をかける。だが携帯はつながらない。
その頃、チョルスはアンナとスーパーの店内で買い物を始めていた。手押しの買い物カゴにはまだ何も収まっていない。
アンナはジャージャーラーメンの束を手にした。
「ジャージャーラーメン。これ買わなくちゃあ」
「おととい買ったじゃないか」
「…」
買い物カゴに収まる物はなかなか見つからない。
「あっ、お米よ。お米を買おう」
アンナは張り切って米袋を肩に担ぐ。
「家に新しいのがあるよ」
「・・・」
米もやむなく元に戻す。
買い物カゴはまだ空のままだ。
早く買え、とばかりにチョルスはアンナをにらみつける。
プレッシャーをかけられ、アンナは棚にあるのを適当につかむ。
「そうだ。これも買わなきゃあ」
「それは何だ?」
アンナはあわてて製品名を覗き込む。
「これ、何だろう?」
「味噌だよ、味噌。家にあるじゃないか」
「味噌? 何よ!」
結局、アンナは買い物カゴを空で持って歩いてるだけになった。
「シンシラーッ。ほかにまだ何かあるか?」
アンナは何も言い返せない。
しばらく考えて憮然と言い放つ。
「ここにはロクな物がないわ。最悪のスーパーね」
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