すぐ近くにひどく苦しむ人がいて、じりじり斜面を滑り落ちていくのをずっとたまらない気持ちで見ていた。
そっちじゃない、それじゃあ落ちてしまう、と私は何度も叫んだ。No! No! No!と。こっちだから、それは違う、No, no, no! と。
結論から言えばダメ出しと指示出しは、百害あって一利なしだった。Noと言い合う間にもその人は落ち続け、私との間の裂け目が深く広がるばかりだった。遠く離れたまま苦しむその人に、もうなんの声も届かなかった。
その後自分もうんと苦しんだ私は、もう一度その人の近くにいた。相変わらずその人は苦しんでいたけれど、ほんの少しだけマシになった私にはNoと言ってもなんにもならないのが今度はわかった。どうせ滑り落ちていくのなら、私くらい見ていてあげよう。しばらくつきあったってかまわない。だからYesとその人に言った。そうだね、苦しいね、Yes, yes, yesと。
そうするとたまにYesと返事が返ってきた。私たちは時々Yesと言い合った。相変わらず斜面を落ちていきながら、でも一緒だからあまり気にならなくなった。
どうだろう。その人は奈落に落ちて死ぬだろうか。でも生きることは死んでいくことでもあるから。
例えこれが死につながる坂だとしても、十全に生きたと言えないと、誰が言えるだろう。その人以上に真剣に生きたと、誰が言えるだろう。
暴れながら苦しみながら、その人は少し上を見るようになった。この先がどうなるのか私はまだ知らない。ただ私たちは前より近くにいる。
そして時折、Yesと言い合う。
そっちじゃない、それじゃあ落ちてしまう、と私は何度も叫んだ。No! No! No!と。こっちだから、それは違う、No, no, no! と。
結論から言えばダメ出しと指示出しは、百害あって一利なしだった。Noと言い合う間にもその人は落ち続け、私との間の裂け目が深く広がるばかりだった。遠く離れたまま苦しむその人に、もうなんの声も届かなかった。
その後自分もうんと苦しんだ私は、もう一度その人の近くにいた。相変わらずその人は苦しんでいたけれど、ほんの少しだけマシになった私にはNoと言ってもなんにもならないのが今度はわかった。どうせ滑り落ちていくのなら、私くらい見ていてあげよう。しばらくつきあったってかまわない。だからYesとその人に言った。そうだね、苦しいね、Yes, yes, yesと。
そうするとたまにYesと返事が返ってきた。私たちは時々Yesと言い合った。相変わらず斜面を落ちていきながら、でも一緒だからあまり気にならなくなった。
どうだろう。その人は奈落に落ちて死ぬだろうか。でも生きることは死んでいくことでもあるから。
例えこれが死につながる坂だとしても、十全に生きたと言えないと、誰が言えるだろう。その人以上に真剣に生きたと、誰が言えるだろう。
暴れながら苦しみながら、その人は少し上を見るようになった。この先がどうなるのか私はまだ知らない。ただ私たちは前より近くにいる。
そして時折、Yesと言い合う。