この家の一番奥の自動車ほどもある重く大きな歯車が「ごうん」という音を立てて動き出した。
ちょうど水車小屋の水車のようにそびえ立つ錆だらけのそれは、もう何年もぴくりとも動いていなかった。
簡単なことだった、全てはそこにあって、必要なのは小さな部品の重心の調整だけだったから。
だけど難しいことだった。
目に見えない全体を探ってそれをまた身の内に収め、自分の形を変えることだったから。
最後は遠くまで行って一年寝かせたのち、助けてくれる人たちの手も借りた。
まるで当たり前のことのように、ある日もやが晴れ、苦しんでいた人にかかっていた重荷が取り除かれた。
久しぶりに話した専門家も仰天した。
「苦しんではいなかったんだけどね」と苦しんでいた人は言った。
「いやいや、苦しんでいたし、苦しそうだったし、苦しいと言っていたよ。」と私は返した。
まあでもそんなことはいいよ。
お茶でも飲んでゆっくりしよう。
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