<学術論文>
加我牧子・藤田英樹・矢田部清美・稲垣真澄:広汎性発達障害の疫学に関する文献的研究―自閉症を中心に―.精神保健研究,54, 95-107, 2008.
http://ci.nii.ac.jp/naid/40016633687
<内容>
自閉症スペクトラムないし広汎性発達障害の有病率の数値は、年々増加の一途を辿っている。本研究では、その増加は実質的なものではなく、見かけ上のものであることを考察した。その背景として、1)自閉症に対する理解が広まり、専門医への紹介率や自閉症の診断率が増加したこと、2)自閉症がスペクトラムとして定型発達との連続性が想定されるようになり、自閉症診断の外延(PDD-NOS 特定不能の広汎性発達障害)が拡大したことが挙げられる。
臨床場面では、自閉症、自閉的傾向、広汎性発達障害という用語は互換的に使用されることが多い。しかし臨床症状が類似していても、抱えている困難や予後は必ずしも同じではないため、狭義の自閉症と自閉的傾向(PDD-NOS)を区別して考える必要がある。自閉症診断について、標準的な(共有しうる)手続きを確立する必要があり、特にPDD-NOSをどの程度まで障害と捉えるのか、またPDD-NOSをどれだけ早期に診断できるかが課題である。