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価値のシフト

高校時代、友人のおとっつあんに趣味がジョニ黒(ジョニーウォーカーの黒ラベル。当時1本約1万円)集めという人がいた。せっせと集め、棚の端から端までボトルを並べにんまりとしていたそうだが、ある日ウイスキーの輸入が自由化され価格が暴落した。友人曰く、かのおとっつぁん毎晩その膨大なコレクションをヤケ飲みに使いだしたという。

何せ大昔のジョニ黒は大卒新入社員の月給に相当していた時期もあるのが、今や量販店では2千円弱だ。大卒初任給でいうと1%弱。早めに全部飲んだそのお父さんは偉かったが、酒量が祟ったか友人の嫁入り姿を見ないまま早世された。酒が安過ぎるのも考え物だな。

ぼーずがこのおとっつあん並みに憤っていることがある。それは音源だ。高校の頃LP1枚が2千円だった。これはぼーずの小遣いに匹敵する額であり、買うのはせいぜい2カ月に1枚。それがCDに変わった頃は3200円。価格は上がったが、まず音のクリアーさが全然違うのに驚いた。加えて音の劣化や針の交換が不要になり、この価格で渋々納得していた。

それがどんどん下がり出し、CDの得意とする長時間録音ものも増え30曲入りが千円を切る有様だが、そんなことで驚いては時代に取り残される時代だ。Original Album Classicsと銘打つシリーズは初期のアルバム5枚のセットが2千円弱である。困るのは大抵2~3枚が所持CDと被っている。それでも2~3枚で2千円としたら格安である。

これでは昼飯代を削って買った昔のLPが泣くなぁ。一番嫌なのはその程度の価値と思う人も出てくるだろう。最近の極めつけはMiles Davisの10枚組が1.943円。恐れたように、レビュー欄へ『車のCDチェンジャー入れっ放し用にお勧め』とほざいたバカがいる。マイルス!化けて出てやれ。夜中にこいつの耳元で死刑台のエレベーターでも奏でてやってくれ。
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