ぼーずの場合は『頭を丸めてお詫びします』なのだが、誰も本気で聞いてくれない。この頭じゃ元から丸まってるからなぁ。謝る時も上の本部長みたいに全く反省していないのがミエミエの人は出てこない方がいい。謝った上に怒られるのは割にあわないからだ。その点、学生時代は楽だった。ぼーずの中高校は大抵の悪さは便所掃除で許してくれたからだ。その他、朝7時半に学校へ来い!、グランドをいいと言うまで走れ!が三大罰だった。
高校の夏休み、バスケの合宿は校舎に泊まるのが決まりだった。夜、腹が減って眠れず何か食おうと親友のチームメイトであるノリオを誘い、台所に行った。食材は毎回、先生たちの宿舎でもある修道院から運ばれてくるのだが、飲み物といくつかの食材は台所にある巨大な業務用冷蔵庫にしまってあった。無論、飢えた餓鬼の群れがいるので、扉にはドでかい南京錠がかかっていた。
冷蔵庫は駅のクーラーをひと廻りでかくしたような大きさで、てっぺんにコンプレッサー、その下には熱交換器が内蔵され、点検のための小窓が付いている。そしてこの小窓から飲み物やハムに手が届くのを昼間確認しておいた。
窓を開け、コーヒー牛乳とハムの塊を取り出し、牛乳瓶で両手が塞がったのでハムを咥え、そこを出ようとすると、なんと入口には生徒指導のS神父がおっかない顔で立っていた。『ヒルケルさんが冷蔵庫から物が無くなると言うから鍵をかけたのに。足りなくなった分をまた彼が取りに行くのが判らんのか。それよりも世話をしてくれてる人に迷惑をかけ、悪いと思わないか』
ヒルケルさんとは学校にいたドイツ人の修道士で木工のマイスターでもあった。たまに『アホー』と大声で怒ることはあるが、普段は我々の世話をしてくれた気の良い大男だ。こーゆわれると返す言葉は無い。
翌日の練習は午前午後、共にパスしコーチからは大目玉を食った。第3運動場に1つ、プールと武道場に2つ、理科校舎にも2つ、体育館、講堂にも2つ、肝心の校舎には各階に2つで4階建て計8つと全部で15もあるトイレをノリオと二人で掃除したからだ。この学校トイレ多過ぎやっちゅうねん。
掃除の苦労はさることながら、その後も変わらずに我々の世話をしてくれたブラザーヒルケルには感謝しかなかった。ぼーず達の悪行はそれからも完全にはなくならなかったが、ただ少しだけ、ほんの少しだけ『大人の責任とは何か』を考えるようになったと思うのだ。
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