生前退位の意向をにじませた天皇陛下のお気持ち表明を受け、政府・自民党内に、安倍晋三首相が悲願とする憲法改正の議論に影響する可能性があるとの見方が出ている。首相は秋の臨時国会から、衆参両院に設けられた憲法審査会で改憲項目の絞り込みを進めたい考えだ。しかし、天皇の地位に直結する生前退位の議論は、象徴天皇制を定めた憲法第1章をめぐる議論に発展しかねず、首相の想定通りに進展するかは不透明だ。
自民党など憲法改正に前向きな勢力は衆参で、改憲の発議に必要な3分の2の議席を確保している。自民党内では世論の支持が得られやすいとして、参院の合区解消や緊急事態に備えた国会議員の任期延長が改憲項目に浮上している。
ただ、政府関係者は憲法審査会での議論について、「象徴天皇の在り方、元首の位置付けなどの議論となり、憲法論議に影響するかもしれない」と指摘、審査会での議論が拡散することに懸念を示す。一方、民進党幹部は9日、「陛下の発言をめぐり、憲法改正が必要かは別にして、議論は必要だ」と述べ、象徴天皇制について十分議論する必要があると強調した。
首相は、2018年9月までの自民党総裁任期中の改憲実現に意欲を示しているが、憲法審査会の議論の行方次第では、首相が描くスケジュールに影響が出そうだ。このため、自民党内では「陛下の問題と憲法論議は切り分けるべきだ」(ベテラン)との意見や、「憲法問題と結び付けたら、かえって改憲反対勢力を勢いづかせる」(幹部)との声も上がっている。(2016/08/09-19:09)
時事通信:
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016080900876&g=pol