クィーンズタウンでも去年からマラソンの大会が行われるようになった。
コースはアロータウンからクィーンズタウンまで、途中で湖をぐるっと回ると42kmぐらいになる。
それに出るおじさん2人が今回のお客さん。
前日の観光を兼ねた下見、そして当日はおじさん達をスタート地点へ送った後、先回りして走っている姿を写真に撮るという仕事だ。
コースのほとんどはサイクルトレイルを使い、車道は閉鎖されるので車で行ける場所も限られる。
僕はこの辺りの道は全て自転車で走っているので、どこの道がどこに抜けられるか知っている。
交通規制などの状況に合わせ歩いてコースを見に行き、みんなが走る姿を眺めるのは悪くない。
天気は曇りで時々晴れ間が覗く、暑すぎず寒すぎず良いコンディションである。
去年は寒くて途中でリタイヤする人も多かったと聞く。
アローリバーから車道を横切る所で渋滞していたので車を道端に置き、少し歩いて給水所の所へ行った。
ボランティアの人達がランナーに水を渡している。
派手な格好をしたおじさんが水を渡しながらみんなに話しかけている。
走る人も働く人も楽しそうだ。
マラソンの仕事は初めてだが、こういう角度から見ると又違うものも見える。
おじさんランナーに声をかけ写真に撮り、次のポイントへ。
その頃になると集団もばらけ車も少しずつだが進むようになった。
次のポイントはレイクへイズ。
レイクへイズはビューポイントで応援がかけつけやすい。
駐車場もちゃんとしていて、給水所もある。
湖と山をバックにランナーの写真が絵になる場所だ。
朝なので風もあまりなく、鏡のようにではないけれどぼんやりと山が湖面に映る。
このコースも何回も自転車で走っているし、お客さんと一緒に歩いたことも何回かある。
見慣れたいつもの風景も状況が変わると違って見える。
ポイントには生のバンドも入っていて、程よい大きさの音で場を盛り上げている。
うむ、こういうのもいいな。
犬と一緒に走っている人もいて、これもニュージーランドらしくてありだな、と思った。
コースは湖を一周するので、対岸に速い集団が走っているのも見える。
おじさん達を待つ間、ボケッと山を眺めながら、ランナーを見るのも楽しい。
相撲の着ぐるみのようなもの(空気で膨らましてある)を着て走っている人がいて、いやがうえでも目立つのだが、この人がなかなか速い。
そうそう、そういうバカなことは一生懸命やらなきゃ。
目立つので後何分ぐらいでおじさん達が来るのか目安になる。
レイクへイズを出て次はショットオーバーという川の河原沿いがポイント。
そこまでの移動は国道を通る。
マラソンコースは交通量の多い国道と重ならないような設計なので、渋滞もなく次のポイントへ行ける。
川を渡るのも自動車の橋と別に昔の橋があり、歩行者と自転車用に使っている。
この国のこういう所が好きだ。
マラソンコースは昔の橋を渡り、川に沿って下る。
そこの河原でまたしばしボンヤリとマラソンを眺める。
当たり前だが一人一人にはそれぞれ、自分が主人公のドラマがあり、その一部を垣間見るのはちょっと楽しい。
日本人のランナーが来た。
見ず知らずの人だがゼッケンに名前が書いてあるので日本人だと分かる。
「がんばってください」と言うと、最初は驚き、そしてそれが笑顔に変わった。
ああ、こういうのもいいね。
マラソンが行われるのは知ってたし、ある程度どんな具合か想像できたけど、それと自分の身をそこにおいて感じるものは別だ。
ランナーを待つ間、時間はたっぷりあるので色々な事を考えられる。
こういうボケっとした時間が本当は大切なんだろうな、などと思うのだ。
おじさんランナーがやってきた。
マラソンも中盤を超え、ペースが多少落ちたようだ。
川をバックに記念撮影をして、併走しながら言葉を交わす。
「マラソンが終わった後でマッサージを頼みたいだけど。誰かに頼めませんか?」
「分かりました、僕の友達がマッサージをやっていますので聞いてみます。がんばってくださいね」
おじさんの後姿を写真に撮り、友達のトモ子にメッセージを入れた。
とも子という人はとても多くて僕の知っているとも子もしくはとも子さんだけで10人以上いる。
このカタカナ表記のトモ子は昔からの友達で、15年ぐらい前にヤツが初めてニュージーランドに来た時にブロークンリバーへ連れて行った仲だ。
トモ子の話だけでブログが一つかけるぐらいのヤツだが、今はケトリンズでロッジを運営するかたわらマッサージとサーフスクールをやっていて、このマラソンでマッサージのボランティアのためにケトリンズからクィーンズタウンにきた。
前日はアワビを手土産にうちに来て、一緒に酒を飲み、昔話をしたのだ。
レースも後半になると列もばらけ歩く人も出てくる。
僕もゴール地点でおじさんを待つ。
ゴールには友達のトモ子がいるが、彼女はボランティアの仕事で忙しそうだ。
次々とランナーがゴールをするのを眺める。
彼らの心境は走らない僕には分からないが、見ていてほのぼのするのは悪くない。
そうしているうちに、おじさん達がゴール。
記念撮影をしてカメラを返し、あとは歩いてホテルに帰るというのでそこでお別れして僕の仕事も終わった。
帰り際にトモ子のいるマッサージテントを覗いたが順番待ちの人が列を作っている混雑振りで、話しかけるのもなんだしそのまま家に帰った。
いばらくして家でビールを飲んでいるとトモ子から電話がきた。
「もしもしひっぢ、あのね、あのおじさん、すごく喜んでたよ」
「そうか、そりゃ良かった」
「あんな、何回も写真を撮ってくれて、応援もしてくれて、嬉しかったって」
「そうか、そりゃ良かった」
「ガイドさんがすごく良かったって誉めてたよ」
「そうか、そりゃ良かった」
「あんまり何回も良かった良かったっていうから、こっちも嬉しくなっちゃってね。ウフフフ」
「そうか、そりゃ良かった ワハハハ」
ビールが一段と美味くなった。
ガイドにとって、お客さんが喜んでくれた時のビールに勝るものはない。
幸せのバイブレーションは人から人へ伝わり自分のところへ帰ってくる。
純粋な愛が根底にある行動は関わる全ての人を幸せにする。
客商売とはお客さんあってのものだが、一歩間違えると媚を売るということになる。
媚を売ることなく、その人が喜ぶことをする。
自分にできる範囲で無理をすることなく、自分も同時に喜びながら仕事をする。
ガイドの条件として、ガイドが楽しまなければいけないと僕はよく言うが、自分だけが楽しんでしまってもいけない。
自分ができることをやり、お客さんと楽しみや喜びや感動を分かち合うこと。
それがおもてなしの心であり、それこそが愛であり、それが僕達日本人が持つ精神性なのである。
こういう仕事もいいもんだ。
コースはアロータウンからクィーンズタウンまで、途中で湖をぐるっと回ると42kmぐらいになる。
それに出るおじさん2人が今回のお客さん。
前日の観光を兼ねた下見、そして当日はおじさん達をスタート地点へ送った後、先回りして走っている姿を写真に撮るという仕事だ。
コースのほとんどはサイクルトレイルを使い、車道は閉鎖されるので車で行ける場所も限られる。
僕はこの辺りの道は全て自転車で走っているので、どこの道がどこに抜けられるか知っている。
交通規制などの状況に合わせ歩いてコースを見に行き、みんなが走る姿を眺めるのは悪くない。
天気は曇りで時々晴れ間が覗く、暑すぎず寒すぎず良いコンディションである。
去年は寒くて途中でリタイヤする人も多かったと聞く。
アローリバーから車道を横切る所で渋滞していたので車を道端に置き、少し歩いて給水所の所へ行った。
ボランティアの人達がランナーに水を渡している。
派手な格好をしたおじさんが水を渡しながらみんなに話しかけている。
走る人も働く人も楽しそうだ。
マラソンの仕事は初めてだが、こういう角度から見ると又違うものも見える。
おじさんランナーに声をかけ写真に撮り、次のポイントへ。
その頃になると集団もばらけ車も少しずつだが進むようになった。
次のポイントはレイクへイズ。
レイクへイズはビューポイントで応援がかけつけやすい。
駐車場もちゃんとしていて、給水所もある。
湖と山をバックにランナーの写真が絵になる場所だ。
朝なので風もあまりなく、鏡のようにではないけれどぼんやりと山が湖面に映る。
このコースも何回も自転車で走っているし、お客さんと一緒に歩いたことも何回かある。
見慣れたいつもの風景も状況が変わると違って見える。
ポイントには生のバンドも入っていて、程よい大きさの音で場を盛り上げている。
うむ、こういうのもいいな。
犬と一緒に走っている人もいて、これもニュージーランドらしくてありだな、と思った。
コースは湖を一周するので、対岸に速い集団が走っているのも見える。
おじさん達を待つ間、ボケッと山を眺めながら、ランナーを見るのも楽しい。
相撲の着ぐるみのようなもの(空気で膨らましてある)を着て走っている人がいて、いやがうえでも目立つのだが、この人がなかなか速い。
そうそう、そういうバカなことは一生懸命やらなきゃ。
目立つので後何分ぐらいでおじさん達が来るのか目安になる。
レイクへイズを出て次はショットオーバーという川の河原沿いがポイント。
そこまでの移動は国道を通る。
マラソンコースは交通量の多い国道と重ならないような設計なので、渋滞もなく次のポイントへ行ける。
川を渡るのも自動車の橋と別に昔の橋があり、歩行者と自転車用に使っている。
この国のこういう所が好きだ。
マラソンコースは昔の橋を渡り、川に沿って下る。
そこの河原でまたしばしボンヤリとマラソンを眺める。
当たり前だが一人一人にはそれぞれ、自分が主人公のドラマがあり、その一部を垣間見るのはちょっと楽しい。
日本人のランナーが来た。
見ず知らずの人だがゼッケンに名前が書いてあるので日本人だと分かる。
「がんばってください」と言うと、最初は驚き、そしてそれが笑顔に変わった。
ああ、こういうのもいいね。
マラソンが行われるのは知ってたし、ある程度どんな具合か想像できたけど、それと自分の身をそこにおいて感じるものは別だ。
ランナーを待つ間、時間はたっぷりあるので色々な事を考えられる。
こういうボケっとした時間が本当は大切なんだろうな、などと思うのだ。
おじさんランナーがやってきた。
マラソンも中盤を超え、ペースが多少落ちたようだ。
川をバックに記念撮影をして、併走しながら言葉を交わす。
「マラソンが終わった後でマッサージを頼みたいだけど。誰かに頼めませんか?」
「分かりました、僕の友達がマッサージをやっていますので聞いてみます。がんばってくださいね」
おじさんの後姿を写真に撮り、友達のトモ子にメッセージを入れた。
とも子という人はとても多くて僕の知っているとも子もしくはとも子さんだけで10人以上いる。
このカタカナ表記のトモ子は昔からの友達で、15年ぐらい前にヤツが初めてニュージーランドに来た時にブロークンリバーへ連れて行った仲だ。
トモ子の話だけでブログが一つかけるぐらいのヤツだが、今はケトリンズでロッジを運営するかたわらマッサージとサーフスクールをやっていて、このマラソンでマッサージのボランティアのためにケトリンズからクィーンズタウンにきた。
前日はアワビを手土産にうちに来て、一緒に酒を飲み、昔話をしたのだ。
レースも後半になると列もばらけ歩く人も出てくる。
僕もゴール地点でおじさんを待つ。
ゴールには友達のトモ子がいるが、彼女はボランティアの仕事で忙しそうだ。
次々とランナーがゴールをするのを眺める。
彼らの心境は走らない僕には分からないが、見ていてほのぼのするのは悪くない。
そうしているうちに、おじさん達がゴール。
記念撮影をしてカメラを返し、あとは歩いてホテルに帰るというのでそこでお別れして僕の仕事も終わった。
帰り際にトモ子のいるマッサージテントを覗いたが順番待ちの人が列を作っている混雑振りで、話しかけるのもなんだしそのまま家に帰った。
いばらくして家でビールを飲んでいるとトモ子から電話がきた。
「もしもしひっぢ、あのね、あのおじさん、すごく喜んでたよ」
「そうか、そりゃ良かった」
「あんな、何回も写真を撮ってくれて、応援もしてくれて、嬉しかったって」
「そうか、そりゃ良かった」
「ガイドさんがすごく良かったって誉めてたよ」
「そうか、そりゃ良かった」
「あんまり何回も良かった良かったっていうから、こっちも嬉しくなっちゃってね。ウフフフ」
「そうか、そりゃ良かった ワハハハ」
ビールが一段と美味くなった。
ガイドにとって、お客さんが喜んでくれた時のビールに勝るものはない。
幸せのバイブレーションは人から人へ伝わり自分のところへ帰ってくる。
純粋な愛が根底にある行動は関わる全ての人を幸せにする。
客商売とはお客さんあってのものだが、一歩間違えると媚を売るということになる。
媚を売ることなく、その人が喜ぶことをする。
自分にできる範囲で無理をすることなく、自分も同時に喜びながら仕事をする。
ガイドの条件として、ガイドが楽しまなければいけないと僕はよく言うが、自分だけが楽しんでしまってもいけない。
自分ができることをやり、お客さんと楽しみや喜びや感動を分かち合うこと。
それがおもてなしの心であり、それこそが愛であり、それが僕達日本人が持つ精神性なのである。
こういう仕事もいいもんだ。
媚びられるのヤだな。
媚びを売る添乗員がいたが、心が透けて見えちゃうんだ。
それは心底ニュージーランドの景色に感動しているのではなく、クレームにならないように怯える心が芯にあった。
ついでにコミッションのことばかり気にしていた。
エゴだ。
そういう人とは一緒に仕事をしたくないね。