お役立ち情報ブログ

日々の生活やビジネスにおいて役に立ちそうな情報を収集、公開しています。

「保険料高い」地震保険 それでも備える価値あり

2013年09月01日 08時23分48秒 | お役立ち情報
 被災直後の混乱を乗り越えると、次に待っているのが生活の再建だ。震災では住む場所を失う可能性もあり、当然まとまったお金が必要だ。平時からできる万が一への備えとは……。


東日本大震災では多くの建物が倒壊した
(2011年4月2日、宮城県石巻市)
 「地震保険に入っていて本当に良かった」。宮城県石巻市に住む公務員、A子さん(50)はしみじみと語る。2011年3月の東日本大震災で津波の猛威はぎりぎり免れたが、自宅は床上浸水し、3カ月ほど親戚宅での生活を強いられた。

 支えになったのは地震保険の保険金。居住地区全体が全損地域と認定され、建物と家財合計で満額1250万円の支払いを受けた。周辺の区画整理で土地か清算金の供出を迫られるなど思わぬ出費はあったが、「手元資金に余裕があるので乗り切れそう」と話す。

 内閣府が東日本大震災や大雨災害などで被災した世帯を対象に調査したところ、住宅再建や転居など住む場所を確保するために支出した総額は「900万円以上」が38%で最も多かった。他にもローンの返済や仕事を失った場合の生活費など負担がのしかかる。

 それにどう備えるか。損害保険料率算出機構が09年に被災した建物の復旧費の工面方法を調査したところ、地震保険に入っていない人の半数が「国や自治体の対応に期待する」と答えた。しかしファイナンシャルプランナー(FP)の清水香さんは「公的支援が大きな頼りになると考えない方がいい」と強調する。

 公的給付を整理しておこう。住宅が被災した場合、被災者生活再建支援制度の対象となる。全壊で100万円、大規模半壊なら50万円の基礎支援金に加え建設や補修など再建方法に応じて50万~200万円の加算支援金が受け取れる。それでも最大300万円だ。
 身内の死亡や高度障害を負った場合の災害弔慰金や災害障害見舞金、仕事を失った時の失業給付などもあるが十分とは限らない。義援金は集まる額や被災者の数で配分は変わるので、あてにできない。

■生活安定の一時金

 つまり「必要なのは自助努力」(清水さん)。住宅ローンなど残債が多く、身を寄せる先がない人などは、特に地震保険や共済への加入を検討した方がよい。

 地震保険の加入率は11年末時点で全国平均26%。普及が進まないのは、制度の趣旨が浸透していないことに加え、震災リスクの見誤りも大きい。

 まず多いのが「地震保険は保険料が高いのに補償額が少ない」という声だ。保険金額は火災保険の30~50%の範囲で、家屋の建て替えを考えると確かに物足りない。しかし「地震保険は生活安定のための一時金という位置付け」(清水さん)。被災時にまとまった額を確保する手段が限られることも考慮すべきだろう。
地震保険料は一番高い東京都などで鉄筋コンクリート造りの建物に3000万円、家財に100万円の火災保険を掛ける場合、年間で1万6000~2万6000円程度。生命保険文化センターによると、生命保険は1世帯あたり平均で年41.6万円の保険料を払っている。清水さんは「生命保険の見直しも含め、どのリスクに備えるか優先順位を付けてほしい」と話す。

 それでも保険料を負担と感じるなら、ベースとなる火災保険を見直す手もある。不動産コンサルタント会社、さくら事務所の三上隆太郎さんは「火災保険は補償内容を吟味せずに掛けすぎている人が多い」と指摘する。例えば、住まいが高層階なのに水災の補償を付ける人は珍しくない。火災保険の過剰を改めれば地震保険に入りやすくなる。

■住宅診断を利用

 「地震に強い家で壊れないから地震保険は不要」と決めつけるのも早計。大規模な地震で怖いのは火災の延焼だ。南海トラフ地震で焼失する住宅は74万6千棟、首都直下地震では東京都内だけで20万棟と想定されている。「火災保険があるから大丈夫」と考えるのも間違い。「火災保険では地震が直接、間接の原因となった火災は補償されない」(清水さん)。

 平時には被災時のお金を考えるのと同時に、損害を抑える工夫もしておきたい。住宅購入前にハザードマップ(警戒地図)に目を通すなど、お金をかけなくてもできることはある。

 また、住居は最新の耐震基準に基づいているからといって頑丈とは限らない。「同じ建て売りの家でもメンテナンス次第で劣化具合は大きく異なる」(三上さん)。シロアリ被害など目に見えない傷みにも注意は必要だ。5万円程度からある住宅診断を利用するのも選択肢だ。(下前俊輔)


[日本経済新聞夕刊2013年8月27日付]
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする