Apple Watchの詳細な発表を受け、80年代にSwatchの開発に貢献したElmar Mock氏が「アップルは瞬く間に成功を収めるだろう」とコメントしています。Bloombergがインタビュー記事を掲載しました。
Apple Watchを過小評価すべきではない
現在はコンサルティング会社Creaholicに勤めるMock氏はApple Watchについて、年間200万から300万個は売れるだろうとの予測を述べ、「アップルはスイスにおける伝統的な腕時計業界と職に多大なプレッシャーを与えるだろう」と語っています。
Tissot、TAG Heuer、Montblancといったスイスの有名ブランドも、スマートウォッチ市場への参入を表明していますが、業界全体がアップルの脅威を過小評価しているというのが、Mock氏の意見です。
「500フランから1,000フラン(約6万~12万円)の価格帯の時計は本当に危険だ。われわれは氷河期を迎えるだろう」(Mock氏)
クオーツ時計危機
スイス産の腕時計は、数量では世界腕時計市場のごくわずかしか占めないものの、金額ベースでは半分以上を占めていると見られています。アップルはおそらく、同じようなポジションを目指していると、Mock氏は考えています。
日本のセイコーなどが作り出す、正確に時を刻むクオーツ時計への需要を見誤ったため、1970年代から80年代にかけて、スイス腕時計業界では6万人の職が失われました。安くて大量生産を可能としたSwatchの成功が、業界再生を助けたのです。
「残念ながら、クオーツ危機が鮮明によみがえってくる。この国の腕時計メーカーは、当時と同じ間違いを犯しているようようだ。スマートウォッチはガジェットだといって、真剣に受け止めようとしない頑固な人々を、スイス時計業界でたくさん見てきた」(Mock氏)
ただしMock氏は、影響を受けるのは低価格~中価格帯の腕時計で、ハイエンドブランドは一時的にしか影響を受けないと見ています。
大手腕時計メーカーもスマートウォッチ市場に参入
Barclaysのアナリストは、10日に投資家らに配布したメモのなかで、最悪のシナリオとして、Apple Watch発売によりスイス最大の腕時計メーカーであるSwatch Groupの年間売り上げが6%下がるとの予測を述べています。
高級時計の頂点ともいえるRolexやPatek Philippeはスマートウォッチ計画については一切コメントしていませんが、3つの大手腕時計メーカーが同市場への参入を明らかにしています。
OmegaとTissotブランドも所有するSwatch Groupは、今年中にスマートウォッチを発売すると発表しました。またLVMH Moet Hennessy Louis Vuitton傘下のTAG Heuerも、年末までにGPSや健康管理機能を備えたスマートウォッチを発売する計画です。ただしスイス国外のメーカーと提携するため、スイス産にはならない見通しです。
Cie. Financiere Richemontが所有するMontblancは、交換可能な腕時計バンド「e-Strap」を6月に販売開始します。同バンドは着用者の活動を記録し、スマートフォンとワイヤレスに接続することが可能です。
Mock氏は、
「われわれには技術がある。スイス腕時計業界は競争力を失ったわけではない。ただ企業のトップには、適切な行動をとって欲しい。スマートウォッチが成功しなくてもアップルは死なない。しかし今後2、3年で、スイス腕時計業界は相当ダメージを受けるだろう」
と警告しています。
参照元 : Bloomberg
執 筆 : lunatic