またしても国のデータがゆがめられ、信頼が失墜した。国土交通省の「建設工事受注動態統計調査」書き換え問題。政府統計のうち特に重要視され、国内総生産(GDP)の算出などに関わる基幹統計だけに、政策決定にも影響を与えた懸念がある。3年前の厚生労働省の統計不正を受けた一斉調査後も書き換えが続けられていたことから、政府、与党にとって衝撃は計り知れない。野党側は一斉に攻勢を強めた。
「(2020年度と21年度の)GDPには直接影響はないものと考えている。よって、この補正予算についても修正等の必要はない」。15日午前の衆院予算委員会。首相は書き換えを「遺憾」としたものの、国交省が既に統計の処理方法を改めたことを強調し、審議中の21年度補正予算案との切り離しを図った。
政府が火消しに走るのは、苦い記憶があるからだ。18年に発覚した厚労省の「毎月勤労統計」の不正調査問題では、閣議決定した19年度当初予算案を組み替える異例の事態を招いた。
ただ国交省は、今年4月に手法を改めるまで8年もの間、工事実績を二重に計上する不適切な処理を続けていたことになる。過去のGDPや景気判断に関わる月例経済報告などへの影響は否めず、政策決定の正当性も問われかねない。
「追及されても仕方のない、許されない問題」(政府関係者)なのは、厚労省の統計不正発覚後、各省庁が統計の一斉調査をしたにもかかわらず、書き換えが見過ごされていたからだ。工事実績の“水増し”行為は「当時は問題視されなかった」(国交省担当者)といい、調査結果の信頼性も揺らいでいる。
政権にとっても首相肝いりの「新しい資本主義」を実行段階に移そうとしていただけに、ダメージは大きい。松野博一官房長官は、この日午前の記者会見で書き換えの背景などを問われ「国交省において至急、経緯を整理するよう指示をした。その結果を待ちたい。関係省庁が連携して他の統計への影響をしっかりと確認するよう指示をした」と釈明に追われた。
一方、野党側は「第三者委員会を立ち上げ、徹底的な真相解明、責任の所在を明確にすべきだ」(立憲民主党の階猛衆院議員)、「あってはならない。国の基幹統計が間違っていれば政策も全て間違う」(国民民主党の玉木雄一郎代表)と批判。衆院予算委の集中審議を求め、与党は持ち帰った。早期の幕引きを図りたい政府だが、与党関係者は声を潜める。「これは来年の通常国会まで尾を引く」 (久知邦、御厨尚陽)
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