公立小中学校の通常学級に、発達障害のある児童生徒が8.8%在籍していると推定されることが12月13日、文部科学省の調査で分かった。
35人学級なら3人ほどが該当する。
2012年の前回調査から2.3ポイント増えた。
【画像】発達障害の症状は連続的で重なり合う…ASDの人にADHDの症状も
生まれつきの「脳の働き方の違い」…男女比は2.3対1
教員の判断を基にしているので、文科省は「発達障害の児童生徒が増加したのではなく、教員側の理解が深まり『該当する』との判断が増えた」と分析している。
いずれにしろ、「クラスに3人」という数字は“衝撃的”とも言える。
これは「通常学級」の児童生徒を調査した結果なので、「支援学級」等を含めると、その割合はもっと高くなるだろう。
発達障害は、脳の働き方の違いによって、コミュニケーションや対人関係を築くことが苦手なことがあり、社会生活上で生きづらさを感じることが少なくない。
生まれつきの脳の機能障害であって、「親のしつけ方・育て方が悪い」「親の愛情不足」といったことが原因ではない。
妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などで判明することもない。出生後も、遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では診断できない。
また、各国共通して、女性よりも男性に多い傾向がみられる。
日本で発達障害と診断された人の数を男女別でみると、男性の割合が68.8%、女性の割合が29.9%(不詳1.3%) 。男女比は、男性2.3・女性1となる。
ただ、なぜそうなるのかはわかっていない。
2種類の症状を併せ持つことも多い
発達障害の症状は多様だが、以下の3種類に分類される。
自閉スペクトラム症(ASD)
・話し言葉の遅れ
・言語による指示が理解できない
・たとえ話がわからない
・特定の手順の繰り返しにこだわる
・興味ある領域に関する膨大な知識…など
学習障害(LD)
「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という5つの能力に困難があるが、多くの場合、全てではなく、一部の能力だけに困難がある。
注意欠陥多動性障がい(ADHD)
不注意(集中力がない・気が散りやすい)、多動性(じっとしていられない・落ち着きがない)、衝動性 (順番を待てない・考える前に実行してしまう)の3つの要素がみられる障害。
それぞれの症状が重なり合っていることも多く、ASDの人がLDやADHDの症状を併せ持つ場合なども多くみられる。
発達障害は「遺伝」するのか
発達障害の原因である脳の機能障害は、なぜ生じるのか?
発達障害の原因については、まだはっきりとは解明されていないものの、「遺伝子的要因」と「環境的要因」の2つが関係していることがわかってきている。
自閉症スペクトラムのきょうだいがいる場合、もう一人もそうである確率について、アメリカで研究が行われた。
その結果、一卵性双生児の時は77%、二卵性は31%、通常のきょうだいは20%だった。
このことによって、遺伝が関係していることはわかった。
同時に、遺伝子が同一であるはずの一卵性双生児の場合でも100%という結果ではなかったため、遺伝子以外の要素が絡んでいることも明確になった。
それが「環境的要因」ということになる。
では、どんな「環境」が発達障害の原因となるのか。
胎児期や出生後に脳や心身が発達する中で、様々な環境の影響を受けるが、どういった要因が関係するのか、まだはっきりとはわかっていない。
また遺伝的な要因と言っても、親から子へ単純に遺伝するとは言えない。
現在は、発達障害には、なんらかの遺伝的要因が関わっているが、その他のさまざまな環境要因と複雑に影響し合って発現するという考えが主流になっている。
発達障害は治療できるのか
では、発達障害は治療できるのだろうか。
発達障害を完全に治療する薬や手術などの医学的な方法は現在 存在しない。
しかし、早期からの「療育(社会的に自立できるように取り組む治療と教育)」は、症状改善に大きな効果があるとされている。生活の適応能力を高めることが可能になる。
そして、療育訓練は早ければ早いほど良いと言われている。
もし、ご自身の子供が発達障害では…と感じたら、早く専門の医療機関を受診することが望ましい。
ADHDの場合、服薬を取り入れることもある。脳内の神経伝達物質の不足を改善する働きがあり、症状が緩和する。
(小林晶子 医学博士・神経内科専門医)
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