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アングル:円安ウォン高でトヨタに追い風、韓国勢の価格優位が一転

2012年12月29日 08時49分28秒 | 経済
[東京 27日 ロイター] 円相場が戦後最高値を再びうかがおうとしていた昨年7月、トヨタ自動車<7203.T>が宮城県にエンジン工場を建設すると発表すると、一部のアナリストからは採算性より国内生産の堅持を優先させる間違った戦略だと批判する声が上がった。しかし、この工場が小型ハイブリッド車「アクア」向けのエンジンを生産し始めた今月、風向きは変わっていた。

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デフレ脱却と円高是正を掲げる安倍新政権が誕生、もともと自民党の勝利を織り込んで売られていた円は下落ペースを加速させた。

このまま円安が進めば、これまでウォン安の恩恵を受けていた韓国・現代自動車<005380.KS>に対し、トヨタは価格優位性を取り戻せるかもしれないと、市場関係者はみている。円相場は10月上旬以来、対ドルでおよそ8%、対ウォンで10%下落している。トヨタ株はこの期間、30%も上昇した。「トヨタは円高の状況下でも利益を最大化できるよう、非常に厳しいコスト構造を構築してきた。円の下落に伴い、トヨタの利益は一段と増加するだろう」と、自動車業界の調査会社トゥルーカー・ドット・コムのアナリストで、日産自動車<7201.T>の幹部だったラリー・ドミニク氏は言う。「逆にウォンが上昇している今は、(現代自は)日本勢が過去数年間直面してきたのと同じ問題を抱えることになる」。

日本の輸出産業はここ数年、韓国メーカーとの競争激化に加え、円高に苦しめられてきた。国内の産業空洞化も進み、工場労働の従事者は2002年からの11年間で13%減少し、1040万人程度まで減った。その中でトヨタは日本での生産にこだわり、豊田章男社長は年間300万台は国内で生産するという方針を堅持している。円高が是正されつつある今、これが逆に追い風になり始めた。

トヨタと対照的に日産のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は生産の海外移転を進めてきた。主力小型車「マーチ」の生産を日本からタイに移したほか、部品を韓国など海外から調達することにも積極的だ。結果として日産の国内生産比率は20%と、5年前の50%から大幅に低下した。ホンダ<7267.T>は07年の34%から26%に下がっている。トヨタも07年の50%から現在は40%まで低下しているが、国内のライバルに比べると高水準だ。

国内生産の比率が高い分、競合他社に比べてトヨタは為替変動の影響を受けやすい。1円の円高は、トヨタの営業利益を年間350億円減少させる。日産は200億円減、ホンダは160億円減。逆に為替が円安に振れれば、同じ幅だけ営業利益が増加する。アドバンスト・リサーチ・ジャパンの自動車担当アナリスト、遠藤功治氏は、円高が進んで最も大きな打撃を受けるのがトヨタ、円安が進んで最も大きな恩恵を受けるのもトヨタだと指摘する。

1990年ごろまでは円安を追い風に日本メーカーが独ダイムラー<DAIGn.DE>やBMW<BMWG.DE>を苦しめ、米国で販売を伸ばしてきたが、最近は現代自動車がウォン安を武器にトヨタを苦しめている。現代が韓国国内で生産する高級車「エクウス」の2013年モデルは、前年から1%しか値上げしていない。一方、トヨタが日本国内で生産する高級車「レクサス LS460L」は、円高で8%値上げせざるをえなかった。

ウォンの上昇は、現代や起亜自動車<000270.KS>など韓国勢には逆風となる。トムソン・ロイターの試算では、ウォン安円高が進んだここ数年、現代の営業利益率は8.5%。ウォンが強かったころは6.5%だった。韓国自動車研究院は今月、円がウォンに対して1%下落すると、韓国の自動車メーカーの輸出は年間1.2%減少するという調査結果を発表した。起亜のある幹部は「ウォン高に苦しんでいる」と話す。

しかし、実際に為替が業績に影響を及ぼすには、通貨高、通貨安が長期間続く必要がある。円の地合いが本当に変わったのかはまだ分からない。豊田社長は今月20日、日本自動車工業会の会長として開いた定例会見で、「円高が是正されてきただけ、円安ではない」と発言。今も超円高が続いているとの認識を示した。

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