総務省が16日に発表した2013年の家計調査報告によると、2人以上世帯の平均貯蓄額は1739万円に上りました。「みんな、そんなに持っているの?」と驚いた人も少なくなかったようです。消費税率も4月から上がり、生活に四苦八苦する人が少なくない中、「この数字は実態を反映していない」という意見があります。実際はどうなのでしょうか。詳しいデータの中身を見ると、実は「100万円未満」の割合が目立って高かったのです。なのに、どうして1739万円という数字が出るのでしょうか?
そもそも、家計調査とは何か。これは国民すべてを対象にしたものではありません。サンプルを抽出した標本調査です。調査数は、全体で約9000世帯。うち、単身世帯を除くと、2人以上の世帯は約8000世帯です。
そして調べ方です。家計調査は調べる項目によっては調査員が直接、質問するものもありますが、貯蓄については調査票に記入して出してもらうことになっています。もちろん、銀行口座などを調べるわけではないですから、回答者が見栄を張って、多めに記入する可能性もないとは言えないでしょう。
その上で、改めて今回の総務省の発表を確認します。2013年、2人以上の世帯当たり貯蓄額の平均値は1739万円。前年よりも81万円、4.9%増えたといいます。けっこうな額です。
ただ、この発表をよくみると、続きがあります。「貯蓄を持つ世帯の全体を二分する中央値は1023万円」という説明があります。これはどういうことかというと、「貯蓄の低い世帯から高い世帯を順に並べて、ちょうど分かれ目となる世帯の値」です。つまり、「額」の平均は、1739万円だけれども、実際はほぼ半分の世帯は、貯蓄が1000万円に届かない、ということです。
さらに、今回調査した2人以上の世帯のうち、勤労者世帯つまり現役で働いている世代の割合は、51.3%に過ぎません。ということは、調査対象の中に、すでに長年働いて貯蓄に励み、リタイアした世代がかなりの割合でいるものと推察されます。実際、勤労者世帯だけに絞ってみると、貯蓄の平均額は1244万円で、全体平均よりも500万円近く少なくなります。また、上記で説明した「中央値」は、勤労者世帯では735万円なのです。
次に、貯蓄額別の分布を見てみましょう。横軸に「貯蓄の金額」、縦軸に「世帯のパーセンテージ」とします。表で見ると、はっきりした「反比例」の傾向が見て取れます。100万円きざみで分類して、ぶっちぎりで最も多いのは「100万円未満」の世帯で、全体の10%を占めます。ここを頂点として、貯蓄額が増えるに従って、どんどん世帯のパーセンテージは落ちていきます。「100~200万円」は6.4%、「200~300万円」は5.1%という具合です。平均額が含まれる「1600~1800万円」の割合は、わずか3.6%しかいません。
ただ、割合が少なくなるとはいえ、お金持ちはいるものです。調査結果では「4000万円以上」として、それ以上の額はうかがい知れませんが、これらの人たちの割合は11.1%。この中には億単位の貯蓄を持つ人もいるでしょうから、全体の平均額を押し上げたことは想像に難くありません。そもそも母数がせいぜい8000ですから、とてつもない大金持ち世帯が1つあっただけで、平均はかなり上がるでしょう。
他人の懐具合が気になるのは人情で、今回の「1739万円」にたじろぐ人が多いのも無理はありません。が、実態は上記の通りで、わが家の貯蓄が平均よりも大幅に少ないからといって、必要以上に落ち込む必要はなさそうです。
(文責・坂本宗之祐)
そもそも、家計調査とは何か。これは国民すべてを対象にしたものではありません。サンプルを抽出した標本調査です。調査数は、全体で約9000世帯。うち、単身世帯を除くと、2人以上の世帯は約8000世帯です。
そして調べ方です。家計調査は調べる項目によっては調査員が直接、質問するものもありますが、貯蓄については調査票に記入して出してもらうことになっています。もちろん、銀行口座などを調べるわけではないですから、回答者が見栄を張って、多めに記入する可能性もないとは言えないでしょう。
その上で、改めて今回の総務省の発表を確認します。2013年、2人以上の世帯当たり貯蓄額の平均値は1739万円。前年よりも81万円、4.9%増えたといいます。けっこうな額です。
ただ、この発表をよくみると、続きがあります。「貯蓄を持つ世帯の全体を二分する中央値は1023万円」という説明があります。これはどういうことかというと、「貯蓄の低い世帯から高い世帯を順に並べて、ちょうど分かれ目となる世帯の値」です。つまり、「額」の平均は、1739万円だけれども、実際はほぼ半分の世帯は、貯蓄が1000万円に届かない、ということです。
さらに、今回調査した2人以上の世帯のうち、勤労者世帯つまり現役で働いている世代の割合は、51.3%に過ぎません。ということは、調査対象の中に、すでに長年働いて貯蓄に励み、リタイアした世代がかなりの割合でいるものと推察されます。実際、勤労者世帯だけに絞ってみると、貯蓄の平均額は1244万円で、全体平均よりも500万円近く少なくなります。また、上記で説明した「中央値」は、勤労者世帯では735万円なのです。
次に、貯蓄額別の分布を見てみましょう。横軸に「貯蓄の金額」、縦軸に「世帯のパーセンテージ」とします。表で見ると、はっきりした「反比例」の傾向が見て取れます。100万円きざみで分類して、ぶっちぎりで最も多いのは「100万円未満」の世帯で、全体の10%を占めます。ここを頂点として、貯蓄額が増えるに従って、どんどん世帯のパーセンテージは落ちていきます。「100~200万円」は6.4%、「200~300万円」は5.1%という具合です。平均額が含まれる「1600~1800万円」の割合は、わずか3.6%しかいません。
ただ、割合が少なくなるとはいえ、お金持ちはいるものです。調査結果では「4000万円以上」として、それ以上の額はうかがい知れませんが、これらの人たちの割合は11.1%。この中には億単位の貯蓄を持つ人もいるでしょうから、全体の平均額を押し上げたことは想像に難くありません。そもそも母数がせいぜい8000ですから、とてつもない大金持ち世帯が1つあっただけで、平均はかなり上がるでしょう。
他人の懐具合が気になるのは人情で、今回の「1739万円」にたじろぐ人が多いのも無理はありません。が、実態は上記の通りで、わが家の貯蓄が平均よりも大幅に少ないからといって、必要以上に落ち込む必要はなさそうです。
(文責・坂本宗之祐)
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