我が家の南側に流れる諏訪川は、有明海にそそぐ。
今、川の土手は近所の人達がボランティアで植えた菜の花の盛りだ。
春の風に、ときおり揺れる菜の花、この情景は
いつまでも飽きることなく楽しめる。
夏の朝、川にかかる橋(一部橋)をジョギングで
走り抜ける時、ひんやりとした川風にす~っと汗がひいて、
いっそう足が軽くなる。
この間から、夫がスティック状態のメンソレタムを、ときどき唇にぬっているので、
ちょっと可笑しくもあり、「へえ~?どげんしたと?」
「うん、唇がカサカサして、痛かったいね」と。
「布団をかぶって眠りよらん?」
「そら、わからんばってんね・・・」
そこでホームドクターに夫がたずねた。
「口内炎のような状態が、続いていますが・・・」
「あ~、それは抗ガン剤が効いている証拠ですよ」
帰ってきた夫は、うれしそうにそのくだりを私に話して
「お茶を一杯くれんね。」
「はいはい、でもそれはよかったジャン!! もうちょっとの辛抱よねぇ・・・」
胃の抗ガン治療開始から、約1ヶ月経過した。
薬を4週間飲み、そのあとは2週間休みがある。
それを6回繰り返して、9月ごろに一応治療は終る予定。
この夏を乗り越えれば、なんとかなると思い『がんばれ!』と心の中で叫ぶ。
副作用がボチボチ出始めた様子、まぶたも腫れて一日中けだるそうにしている。
いつも腹全体がず~んと痛いといい、昨日は炬燵でうたた寝していたら
枕についた2センチぐらいの血痕を発見した。
「これは?」
「鼻血たい、この頃よう出るもん!」
「早よういわんね。手当もあるし、枕の血液もとれにくくなるしね・・・」
「うん・・・」
鼻の中や上唇の皮膚から、ポツポツと赤い血液がふきだしてくるといって、
そのたびに鼻をかんでいるので、赤くなっていてみるからに痛そうだ。
心配掛けまいとしている夫の様子をみるのが辛いが、どうしょうもない・・・
「さて、お昼はなんば食べたいかなぁ?」チョットおどけて言ってみるが
「ご飯はいらんよ。俺の好きなようにたべるタイ、自分で出来るけんネ。
杏子は自由に食べてよかったい~」
「俺、今日も夕ご飯はいらんよ~」といわれるのがいちばん辛く寂しい。
元気なときは、わたしの残りの魚や、肉も気持よくたいらげていたのに
思い出しては一人涙ぐむ・・・
なんか食べたら?というと、「いわれるとイヤ、たべたかときに食べるけん、心配いらんて」
好きだったものを色々とそろえて、そっと戸棚に置いておく。
いつのまにか少なくなっていると、ホッとする。
健康だったときに、甘いものを制限されるのが一番嫌いだった夫が、今は進めても
「いらん!」と手も出さない。
改めて、癌の恐ろしさを知り、全身に冷や水をかけられたような気持になる。
今の体重は、元気なころから見ると、4ヶ月でマイナス16キロにも。
「もう、57キロを切ったバイ」
「あら、私を追い越さんでよね」笑っていってみるが
「う~ん・・・」と、ほほえんでいるだけ・・・
体型を横からみると、元気な時の縦半分位になり、スラッ~として格好はいいが、
やっぱり丸々と肥っていたときの方がよかった・・・
「横になって足を重ねて寝るとネ 膝が当たって痛たかったい」・・・