思いつきで書いた物語と実話のMIX

フィクションとノンフィクション。目線を変えると景色も変わる

言葉にできない7

2019-08-24 22:17:00 | 日記

いつものように学校へ向かった


教室に着くとすぐさま友達が慌てて駆け寄ってきた

「抜き打ち検査があるって!


「マジか



うちの学校は普通科のみの進学校でピアスは禁止されていた。
一部の男子生徒の素行のせいでタバコなどの持ち物検査も抜き打ちで定期的に行われた


普段は樹脂製の透明ピアスをつけてさえいれば、たいていの教師は目をつむってくれた

が、


今日の検査員は学校1うるさい野球部の顧問の遠藤だった



タバコは一週間の謹慎

ピアスは3日の謹慎

など罰則が確実に行われる日となり

次々と謹慎処分の生徒が続出した


私の番が来た時

朝外しておいた透明ピアスが制服のポケットに入ったままだった


ポケットを順に回り、制服のポケットにたどり着いた時


「なんだこれは?
「ピアスは禁止だろうが?


黙って抵抗していると


タバコで謹慎処分の決まった後ろの席のやつが言った


「それは俺のだ。隠し持っててもらったままだった。


「じゃあお前が謹慎処分だな

「分かってるよ。

そう言って私は謹慎処分から免れた


検査が終わると席を振り返り


「どうしてかばってくれたの?

と聞くと

「アンタが休むと謹慎の間のノートが取れない。

と、無愛想に答えた


「それだけ?

「それだけ。



「…。

「ありがとう…。



「…。

「貸しはこれでチャラな…。

と、捨て台詞を吐いて教室を出て行った




謹慎処分を免れた私は安堵した


帰って怒られることもなく

また明日からも普通に学校に通える

そう思った。




家に帰ると珍しく父と姉がリビングにいた


険しい顔で何やら話していたようだ




「おかえり。そこに座りなさい。


父はそういうと姉の隣に座らせた。






「お姉もお母さんと一緒に住むことになったから。


「…。



どうやら恋人付き合いの素行が悪く、父から注意されて鬱陶しがった姉のところに

たまたま母が連絡をしてきたそうだ


それでその流れでそのまま

また一緒に暮らす話を母にしてしまったそうだ


母は子供の意見を尊重しろと

すぐさま父と連絡をとり

現在に至る。



こうして、姉もうちを出て行き


父との二人暮らしが始まった



言葉にできない6

2019-08-24 22:15:00 | 日記

私の両親はいつもどちらかが留守だった

どちらかといえば父が留守で

いつも朝起きてから学校に行くまでの間と日曜にしか父は居なかった

でもさみしくなかった

むしろ穏やかで良かった

顔を合わせれば口喧嘩で

学校から帰ると夕食を作る母の脳裏には父はおらず
いつも父の夕食だけが食卓になかった

今考えたら浮気疑惑の喧嘩をしていて

幼いながらに

母に怒鳴られる父の姿の記憶があった

あれからずっとだ

帰ってくる日も帰ってこない日も

父の夕食だけがそこには無かった





土曜の夜が1番嫌いだった


酔った父が帰ってくる前に布団に入り、眠りについていたかった

父はおとなしく、声を荒げる人ではなかった

お酒を飲まなければ


お酒を飲むと上機嫌になり

声は大きく、口うるさく、乱暴な雰囲気になった





母が夕方から夜間までの清掃のパートを始めると

父は母の浮気を疑い

土曜日の夜には母を起こしては
夫婦で話し合いをしていた

怒鳴る父と怒鳴りかえす母

ガタンガタンっと

何かが何かにぶつかる音がした後

母が私たちの寝る部屋に戻る

しばらくすると明るい部屋からテレビの音と父のいびきが聞こえる

ここまでを布団の中で耐えてから
やっと眠りにつけた



中3の秋

いつもの喧嘩を始めた2人だったが今日は様子が違った

怒鳴る父となだめる母

勝手口から父が母を無理やり外に出そうとしている想像が出来る物音と声がした


いやに静かになった後

車が出て行く音がした

家には私と弟

隣の部屋に姉がいた


急に静かになったのでその日はいつもより早く眠りにつけた…



次の日

朝から母に起こされた

姉と弟は起きていて別の部屋にいた

母の第一声はとても簡潔で

「パパと離婚することにしたから。どちらについて行くのか今決めなさい。

起こされ方と

朝一番最初に見た母の顔で

とうに想像が出来ていた

母の顔にアザが出来ていた








本心はやはり母と居たかった

姉は昔からお父さん子で

弟はまだ小さく母の近くにいつも居た


だけど…


母親1人で私と弟の2人のことが面倒見れるのかが心配だった

まだ今ほど離婚がメジャーなものではなかった

経済的なこともあった

自分がまだ学生だったこと

これから高校に上がらなければならない時期だった



「お父さんと居る…


目を合わせることも出来ず


「そう…

不満げな、寂しげな、母の声に涙が出そうになった



高校じゃなく

社会人になるところなら

迷わず母と居た



こうして母と弟と離れ


父と姉との3人の生活が始まった…






しばらくは父も早く帰り
夕食の準備を3人でして、3人で食べた


姉の反抗期が来て

1人減るようになり


3人揃っても外食が多くなり始め


しまいにはお金だけ渡されて姉と2人で買って食べた




姉にヤンキーそうな彼氏ができると

朝帰りが多くなった


私が寝てから帰宅し、起きる前に仕事に行く父



何日も続いて
置いてあるお金と洗濯物だけが父が帰ってきている証拠になった


タクシーの運転手をしていた父とは生活が真逆になっていった


姉とも生活が真逆になった




朝起きるとお弁当を作った

それもそのうち食堂やコンビニで済ますようになった

夕食もスーパーの夜間割引で

帰ると2回に分けて洗濯物を回す

誰もいない部屋で

テレビを見ながら夕食を済ませて

いつも早くに布団に入った



ある朝

置き手紙とお金と一緒に箱が置いてあった




開けてみると携帯電話だった


この頃私の周りでは

大人は携帯電話で

学生なんかはPHSで

携帯電話がまだそこまで普及してなかった

かといって携帯電話を持つことが珍しいわけでもなく裕福な目印でもなかった


父の携帯と姉の携帯だけが登録された携帯電話で

説明書を見ながら父に

「ありがとう

と送った



携帯電話を持つことが憧れだった私は

すぐさま友達に報告し

念願だったアルバイトを始めた

大手ファーストフード店だ

友達が
自分が辞める代わりに入らないかと誘ってくれたのだが
固定電話しかない私には急なシフトの変更連絡が取れない理由で保留されていた

こうして
緊急連絡先を手にした私はアルバイトを始めた

バイト禁止の学校からも
幸いにも離婚した家庭の私は無条件でアルバイトの許可がおりていた








アルバイトを始めて1ヶ月が経とうとしていた

人生ではじめての給料日が来た

週4で3時間ほどのアルバイトだったが

父からのお金だけで過ごす私にとっては大金だった

欲しい服も買える
日曜日には友達とランチも出来る
出来なかったことが出来るようになる

少しだけ大人になれた気がした


入れ替わりで辞めた友達とランチをした帰り

友達に誘われて怪しげな暗い店に行った


大きめの音量が鳴り、ブラックライトで照らされた床に、色んなアクセサリーが並んだ店だった


「みんなしてるからアンタもしなよ


そんな誘い文句にまんまと乗り

私は右耳にピアスを開けた



言葉にできない5

2019-08-24 22:14:00 | 日記

赤い靴の女のせいで痛む足も治ってきた

私は1人帰ってから映画を見るのが好きだ

洋画、邦画問わず あらすじを見て決める

ホラー系やゾンビ系、パニック系はあまり見ない

アクションや恋愛ものが多いかもしれない

歳を重ねたせいか学園モノにはあまり興味がない


同調する環境でもなければ、為になるほど乙女でもない


でも学生時代に二度とないと思えるほどの大恋愛をしたことがある






母の呼ぶ声に目を覚ます

自分で起こしてってお願いしたのに
いざ起こされると寝足りなくて少し不機嫌になる

今思えば酷いことだ

寝癖のまま着替えてすぐ階段を降りて
並んだ朝食を前に席に着く

隣には弟

よほど腹が空いていたのか

朝から茶碗一杯のご飯を口いっぱいにかきこんでいる

「おはよー

「おはよー

8つ離れているからか喧嘩はしたことない

高校2年生の女子が
小学生に腹をたてる理由もない

分からない宿題を聞いてきては
解決すると笑顔で
「さすが姉ちゃん

って去っていく

カワイィんだ


途中まで一緒に登校してT字で別れる

「気をつけて行くんだよ

「分かってるって


いつものことだ


チャイムが鳴り終わるまでにダッシュで階段を駆け上がり教室に入る

「おはよー

「おはよー

「昨日のドラマ見た?

なんていつもの会話で学生生活は始まる



ガラガラっと担任が来て

「席につけー

って毎朝のことだ


「今日は席替えするぞー

「イェーイ

騒ぐ教室

くじ引き方式で席は決まり

後ろから2番目の席になった

前には幼馴染の女子

両サイドにはそこまで仲は良くないけど、話したことはある程度の最近付き合いだしたカップル

後ろには これまたなんとも言えない癖の強そうな男子

私から見たらただの変わり者なのに

学年の女子は彼が大好物だ

彼が動くだけで歓喜の声

プリントが配られるたびに手渡し出来るこの席はもはやプレミアチケット並みの競争率だ


案の定 妬みやひがみの視線をやたら感じる



授業中にはカップルの手紙交換の橋渡し役

なんか1番嫌な席だ




ある朝教室に着くと後ろのやつが居ない

風邪で休みなのか

はたまたただの遅刻か

けれどもお昼になっても来ない

結局終礼まで来なかった



次の日

後ろのやつが来た

昨日休んだ分の授業のノートをちぎって渡した

「昨日の…休んでたから…

「あぁ…


無愛想に受け取り、カバンに突っ込んだ


内心「変なやつ…


この時はまだ彼のことが大好きで、愛しくて、苦しくて、悩んで、私の人生のエピソードになるなんて思ってもなかった