<臨時国会が召集され、野田首相が初の所信表明演説を行いました。報道によると野党は「官僚の作文」など厳しい評価を下していましたが、実際にどの程度の出来なのかを検証してみましょう。
おそらく所信表明演説の全文を読まれた方はそう多くないと思いますが、是非ご一読することをお勧めします。野田政権の限界がよく分かるからです。
演説の最初の部分は、野田首相の人柄と演説のうまさを反映して、ある意味それなりにしっかりとした問題意識が提示されています。しかし、政策の具体論になると、途端に官僚的な“ダメな”表現が増えます。具体的にどうダメかと言うと、3種類くらいに分類されるのではないかと思います。
>
財務省が作った内閣と呼ばれている。
増税内閣である。
<第1は、官僚がやりたいことだけはしっかりと記述されているというものです。その典型例は、復興増税や消費税増税といった増税路線です。それは、「復旧・復興のための財源は、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合う」という下りに表れています。先週もこのコーナーで書いたように、これはそもそもおかしな論理なのですが、増税を目指す政治家や官僚の発言は今や、みんなこの一見もっともらしい理屈で統一されています。
第2は、官僚がやりたくないことはしっかりと骨抜きにされているというものです。その典型例は、被災地の復旧・復興を担う組織となる復興庁の創設に関する下りではないでしょうか。所信表明演説では以下のように記述されています。
「省庁の枠組みを超えて被災自治体の要望にワンストップで対応する「復興庁」を設置するための法案を早急に国会に提出」
この表現を読者の皆さんはどう思われますか?私は、官僚による骨抜きの可能性が大きいと思います。
復興庁を設立する際に重要なのは、復興に関する関係省庁の権限や予算をすべて復興庁に移行して、復興庁が関係省庁に協議せずに自分ですべて決められるようにすることです。しかし、組織防衛を最優先に考える官僚の側にとっては、自分の省庁の権限や予算が奪われることになるので、それは一番避けたい事態となります。
>
見れば見るほど駄目な内閣だ。
<そこで上記のような作文になる訳です。“被災自治体の要望にワンストップで対応”という表現は非常に抽象的であり、その意味するところについては色々な解釈が可能ですが、自治体の政府に対する要望を受け付ける窓口の一元化というニュアンスが強いと思います。関係省庁の権限や予算の移行が前提ではないのです。
所信表明演説ではそれ以外にも、例えば日本にとっては重要課題だけど中央省庁からすれば権限や予算の縮小につながりかねない地方分権については、わずかに一言だけ、「地域主権改革を引き続き推進します」としか触れられていません。地方分権を進める気はまったくないのです。>
遣りたくない事は短く済ませている。
分かりやすい作文だ。
<間違った既定路線の踏襲
そして第3は、前政権で作られた既定路線を、間違っていても表現でごまかしてそのまま踏襲しようというものです。官僚の立場からすれば前例をそのまま続ける小役人的な対応であり、政治家の立場からすれば怠慢か無能をさらけ出しているとも言えます。
その典型例は、原発事故で飛散した放射性物質を取り除く除染の作業に関する下りではないでしょうか。所信表明演説では、「放射性物質を取り除く大規模な除染を、自治体の協力も仰ぎつつ、国の責任として全力で取り組みます」と書かれています。菅首相が辞任する直前に策定した「除染に関する基本方針」を踏まえての表現でしょうが、そもそもこの基本方針自体が間違っていることに留意すべきです。
基本方針では、年間被爆線量を年間1ミリシーベルト以下とすることが目標と明言する一方で、そのための除染作業については、
・推定年間被爆線量が20ミリシーベルト以上の地域については、国が除染
・20ミリシーベルト未満の地域については、地元の市町村が除染
とされています。目標の数値が1ミリシーベルトであることを考えると、20ミリシーベルト以上か未満かで除染を行なう主体を分けることはおかしく、本来は国が全面的に行なうべきなのに、20ミリシーベルト未満の地域については地元の市町村に除染の責任を押し付けているのです。
>
典型的な駄目な内閣の遣りそうな事。
<それなのに所信表明演説で“自治体の協力も仰ぎつつ、国の責任として全力で取り組む”と書くのは、ひどいごまかしであり、無責任の誹りを免れないのではないでしょうか。
このパターンは実はかなり多く目に付きます。例えば、社会保障については、「社会保障制度については、「全世代対応型」へと転換し、世代間の公平性を実感できるものにしなければなりません。」と、高齢者の社会保障の削減がまったく不十分な一方で若年層への社会保障支出を増やすという、社会保障・税一体改革で示された社会保障でのバラマキ政策を正当化しています。>
調べれば調べる程、不味い点が浮き彫りになっている。
<また、行政改革についても、「政権交代後に取り組んできた「仕分け」の手法を深化させ・・・既得権と戦い、あらゆる行政分野の改革に取り組みます」と記されていますが、そもそも事業仕分けは無駄削減にほとんど意味も効果もなかったのに、“深化”といういい加減な表現を使ってごまかしています。
公務員制度改革については、「国家公務員制度改革関連法案の早期成立を図り、国家公務員の人件費削減と併せて、公務員制度改革の具体化を進めます」と当たり障りのない既定路線だけを書いており、大臣やOBの斡旋ならば天下りはOKとしたり、幹部の民間への現役出向を可能にするといった民主党政権の間違った決定は一切直す気はないようです。
まあ、代表選での演説の原稿では“高位スタッフ職を整備する等、国家公務員の再就職の一層の適正化を図る”という官僚の既得権益擁護を宣言していた人が首相になったのですから、官僚擁護の度合いが強くなるのは当然ですが…。>
何処までも背信している政権なのだ。
<この政権にまともな改革は期待できない
このように所信表明演説を分析すると、結論として、野田政権は官僚依存政権になると言わざるを得ません。
メディアは“どじょう”とか“地味だけど、、、”という言葉に触発されて新政権を評価しているようですが、その実態は“地味だけど官僚に依存して実務能力もない政権”となるでしょう。
所信表明演説に対する野党の評価は正しいと言わざるを得ません。この政権にまともな改革や経済政策はとても期待できないのではないでしょうか。>
斯(か)くして 民主党は骨抜きにされたのだ。
これでは改革など出来ない。
繰り返されるモノ
光景
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おそらく所信表明演説の全文を読まれた方はそう多くないと思いますが、是非ご一読することをお勧めします。野田政権の限界がよく分かるからです。
演説の最初の部分は、野田首相の人柄と演説のうまさを反映して、ある意味それなりにしっかりとした問題意識が提示されています。しかし、政策の具体論になると、途端に官僚的な“ダメな”表現が増えます。具体的にどうダメかと言うと、3種類くらいに分類されるのではないかと思います。
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財務省が作った内閣と呼ばれている。
増税内閣である。
<第1は、官僚がやりたいことだけはしっかりと記述されているというものです。その典型例は、復興増税や消費税増税といった増税路線です。それは、「復旧・復興のための財源は、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合う」という下りに表れています。先週もこのコーナーで書いたように、これはそもそもおかしな論理なのですが、増税を目指す政治家や官僚の発言は今や、みんなこの一見もっともらしい理屈で統一されています。
第2は、官僚がやりたくないことはしっかりと骨抜きにされているというものです。その典型例は、被災地の復旧・復興を担う組織となる復興庁の創設に関する下りではないでしょうか。所信表明演説では以下のように記述されています。
「省庁の枠組みを超えて被災自治体の要望にワンストップで対応する「復興庁」を設置するための法案を早急に国会に提出」
この表現を読者の皆さんはどう思われますか?私は、官僚による骨抜きの可能性が大きいと思います。
復興庁を設立する際に重要なのは、復興に関する関係省庁の権限や予算をすべて復興庁に移行して、復興庁が関係省庁に協議せずに自分ですべて決められるようにすることです。しかし、組織防衛を最優先に考える官僚の側にとっては、自分の省庁の権限や予算が奪われることになるので、それは一番避けたい事態となります。
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見れば見るほど駄目な内閣だ。
<そこで上記のような作文になる訳です。“被災自治体の要望にワンストップで対応”という表現は非常に抽象的であり、その意味するところについては色々な解釈が可能ですが、自治体の政府に対する要望を受け付ける窓口の一元化というニュアンスが強いと思います。関係省庁の権限や予算の移行が前提ではないのです。
所信表明演説ではそれ以外にも、例えば日本にとっては重要課題だけど中央省庁からすれば権限や予算の縮小につながりかねない地方分権については、わずかに一言だけ、「地域主権改革を引き続き推進します」としか触れられていません。地方分権を進める気はまったくないのです。>
遣りたくない事は短く済ませている。
分かりやすい作文だ。
<間違った既定路線の踏襲
そして第3は、前政権で作られた既定路線を、間違っていても表現でごまかしてそのまま踏襲しようというものです。官僚の立場からすれば前例をそのまま続ける小役人的な対応であり、政治家の立場からすれば怠慢か無能をさらけ出しているとも言えます。
その典型例は、原発事故で飛散した放射性物質を取り除く除染の作業に関する下りではないでしょうか。所信表明演説では、「放射性物質を取り除く大規模な除染を、自治体の協力も仰ぎつつ、国の責任として全力で取り組みます」と書かれています。菅首相が辞任する直前に策定した「除染に関する基本方針」を踏まえての表現でしょうが、そもそもこの基本方針自体が間違っていることに留意すべきです。
基本方針では、年間被爆線量を年間1ミリシーベルト以下とすることが目標と明言する一方で、そのための除染作業については、
・推定年間被爆線量が20ミリシーベルト以上の地域については、国が除染
・20ミリシーベルト未満の地域については、地元の市町村が除染
とされています。目標の数値が1ミリシーベルトであることを考えると、20ミリシーベルト以上か未満かで除染を行なう主体を分けることはおかしく、本来は国が全面的に行なうべきなのに、20ミリシーベルト未満の地域については地元の市町村に除染の責任を押し付けているのです。
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典型的な駄目な内閣の遣りそうな事。
<それなのに所信表明演説で“自治体の協力も仰ぎつつ、国の責任として全力で取り組む”と書くのは、ひどいごまかしであり、無責任の誹りを免れないのではないでしょうか。
このパターンは実はかなり多く目に付きます。例えば、社会保障については、「社会保障制度については、「全世代対応型」へと転換し、世代間の公平性を実感できるものにしなければなりません。」と、高齢者の社会保障の削減がまったく不十分な一方で若年層への社会保障支出を増やすという、社会保障・税一体改革で示された社会保障でのバラマキ政策を正当化しています。>
調べれば調べる程、不味い点が浮き彫りになっている。
<また、行政改革についても、「政権交代後に取り組んできた「仕分け」の手法を深化させ・・・既得権と戦い、あらゆる行政分野の改革に取り組みます」と記されていますが、そもそも事業仕分けは無駄削減にほとんど意味も効果もなかったのに、“深化”といういい加減な表現を使ってごまかしています。
公務員制度改革については、「国家公務員制度改革関連法案の早期成立を図り、国家公務員の人件費削減と併せて、公務員制度改革の具体化を進めます」と当たり障りのない既定路線だけを書いており、大臣やOBの斡旋ならば天下りはOKとしたり、幹部の民間への現役出向を可能にするといった民主党政権の間違った決定は一切直す気はないようです。
まあ、代表選での演説の原稿では“高位スタッフ職を整備する等、国家公務員の再就職の一層の適正化を図る”という官僚の既得権益擁護を宣言していた人が首相になったのですから、官僚擁護の度合いが強くなるのは当然ですが…。>
何処までも背信している政権なのだ。
<この政権にまともな改革は期待できない
このように所信表明演説を分析すると、結論として、野田政権は官僚依存政権になると言わざるを得ません。
メディアは“どじょう”とか“地味だけど、、、”という言葉に触発されて新政権を評価しているようですが、その実態は“地味だけど官僚に依存して実務能力もない政権”となるでしょう。
所信表明演説に対する野党の評価は正しいと言わざるを得ません。この政権にまともな改革や経済政策はとても期待できないのではないでしょうか。>
斯(か)くして 民主党は骨抜きにされたのだ。
これでは改革など出来ない。
繰り返されるモノ
光景
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