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2022年は客観的な予想を心がけます。

有馬記念(GI)回顧

2011-12-27 23:06:04 | 回顧
6.8 - 12.0 - 12.4 - 12.1 - 13.1 - 14.4 - 14.3 - 13.0 - 12.0 - 11.9 - 11.4 - 11.3 - 11.3=2:36.0

(63秒6-57秒9)

誰が予想しただろうか。女王ブエナビスタに3冠馬オルフェーヴルの最初で最後の対決となった第56回有馬記念は歴史的に残る超スローペースとなった。前半の1000m㍍の通過が63秒6で、1角からは14秒4-14秒3と14秒台のラップが2つ続く異常なラップだ。勝ち時計2分36秒0は同日の1000万下のグッドラックHCより2秒7も遅いのだからその異常さが分かる。出走メンバーを見渡すと徹底先行型はアーネストリーのみ。他は折り合いに不安を抱えるタイプも多数おり、激しい先行争いにはならなかった。つまりアーネストリーの出方如何によっては、これだけのスローも考えられた。だが、アーネストリーといえば淀みないラップのなかでスピードの持続力を生かし、底力を存分に発揮するタイプ。ここまで遅いラップを刻むとは正直、想像もしていなかった。アーネストリーはデビュー戦以来ハナを奪った経験はなく、鞍上の佐藤哲としてもできれば2番手から前に馬を置いて勝利した宝塚記念のような展開を願っていたか。まだまだ勉強不足を痛感した。これは来年への宿題としたい。

3冠馬オルフェーヴルが鞍上の池添との「絆」でグランプリ制覇を飾った。菊花賞以来の実践となったが、この中間は3週続けて坂路でびっしりと追われ好仕上がり。馬体は4㌔減っていたが、下見どころではトモの肉付きがもの凄く、弾力性に富んでいた。一頭だけ造りが違っていた。レースでは発馬でトモに重心は掛り、行き脚はつかず後方からになる。ここで手綱をしごいてポディションを取りに行く選択肢もあったが、直後に少し出して行っただけで1周目の4角では手綱をがっちりと抑える。これはオルフェーヴルの力を信頼する池添との「絆」が成せる業だ。少し行きたがる素振りを見せたものの、正面スタンド前でインに潜り込んで前に壁を作り折り合うことに成功する。1角手前でフラつくローズキングダムと接触するも意に介さない。2角でローズの前に進路を取り、向こう正面入口でルーラーシップの前に進路を移し外めへ持ち出すことに成功する。歴史的超スローペースを考えれば、ここで外めに持ち出せたことは重要なポイントになった。3角から外めを通ってスパートを開始させる。4角では菊花賞同様に重心を沈めた推進力に富んだ走りでグーンと加速する。直線でスッと左手前に替えるとグングン加速。レースのラップが11秒4-11秒3-11秒3という中山競馬場ではあり得ない上がり勝負になったため、他馬も脚を温存して直線を迎えているため簡単にはバテない。その中でも一頭だけ違う脚色で差し切ってしまった。もの凄い瞬発力だ。ゴール前のVTRを見ると、3着のトゥザグローリーとは頭ひとつ分重心が沈んでいる。後肢の力強い蹴りと首をグッと下げた重心の低いフォーム。これがオルフェーヴルの瞬発力の源になっている。遅生まれの3歳馬。どこまで成長するのか。来年の更なる飛躍が楽しみだ。

エイシンフラッシュの鞍上には天皇賞秋6着以来の手綱を握るルメール。この時はテン乗りで発馬の良さが仇となって流れに乗じたレースをした結果、なし崩しに脚を使わされる形となりハイペースに巻き込まれて失速してしまった。今回はその反省を生かし、好発を決めるも直後に手綱をグッと抑えて控える。1周目の4角では下り坂も手伝ってハミにモタれて行きたがる。ルメールは手綱を必死に抑えてなだめる。正面スタンド前では5番手からの追走。行きたがる素振りは見せているとはいえ、抑えは利いている。向こう正面から3角にかけても前に壁を作って折り合いに専念する。レースの流れが一気に速くなった3,4角でも手綱はグッと持ったまま。それでもポディションを落とすどころか、逆に上げて行くのだからもの凄い脚力だ。4角で少し気合いを付けてトーセンジョーダンとブエナビスタとの間の進路を取りに行く。直線では最高の形で馬場の3分どころへ持ち出す。坂上からは一瞬の脚力でグーンと加速する。だが、坂を上ったところで右手前に替えると末脚は鈍ってしまう。何とか3着馬の追撃は封じた。3,4角は馬なりでポディションを上げたことを考えれば、直線はもっと脚が持続してもいい。最高の競馬をして最後の脚色が鈍ったのだから、使える脚は一瞬だけということになる。ルメールの手綱捌きは素晴らしかった。

トゥザグローリーは発馬を決めてスッと先団へ。前走のジャパンCが前に壁を作れずに掛っているだけに無理に手綱を押すことなく、1周目の4角で意図的にグッと抑えてポディションを落とす。その後も手綱をグッと抑えて1角では後方までポディションを下げる。戦っている相手はまさに己といったレース運び。向こう正面では顎をグッと下げた首をしなやかに使った走りをする。これは前走のジャパンC時には見られなかったもので、収縮の利いた走り。3,4角は外めに持ち出すのではなく馬込みのなかに突っ込んで行く。直線入口では前にびっしりと壁ができて進路はない。坂下で左手綱を引いてオルフェーヴルの外めに進路を見出す。他馬も脚を温存した瞬発力勝負の流れで狭いところを割ってこれるのは一瞬の脚力が優れていないとできない芸当だ。ここで右手前に替えるとステッキに反応してグングン加速。ゴール前で左手前に替えてもうひと伸びするも、僅かに届かなかった。最後の末脚は勝ち馬を凌ぐものだったし、勝ち馬より頭ひとつ分重心の高い走りをしながら伸びるのだから大したものだ。実践で顎をグッと下げて収縮の利いた走りができるかどうかがポイントを握る。

久々のルーラーシップは乗り込んでいたとはいえ、万全の仕上りではなかった。14番枠から好発を決めるも、直後にスッと最後方に控える。かなりトビの大きい走りをするタイプで、小回りの中山コースは走りづらそう。超スローペースも相まって道中は行きたがるのをなだめながらの追走。向こう正面入口では外めに進路を取った勝ち馬と接触し、力んでしまう。3角から大外を通ってスパートを開始させるも、大トビでズブく勝ち馬に一瞬にして差を広げられてしまう。それでも、直線で大きな完歩で力強く伸びてきた。久々を考えれば悪くない内容だ。大トビで不器用なタイプ。中山のような小回りで中途半端な競馬をすれば昨年のように外めを通らされて距離ロスの多い競馬になってしまう。行きたがる気性も考えれば、この形がベストだった。メンディザバルの好判断。

トーセンジョーダンは激戦続きのためこの中間は終い重点の攻めに終始。それでも、最終追い切りでは全身を無駄なく使った素晴らしい走りを披露し、疲れの心配は皆無だった。10番枠から好発を決めると、気合いを付けて出して行く。1周目の4角では内の出方を見ながら外めの3番手に取り付く。流れが極端に緩んだ1,2角では口を割って行きたがってしまう。前半に少し出して行った分、余計にスイッチが入ってしまった。向こう正面でブエナビスタがポディションを上げるも気にせずジッと我慢する。3角から手綱をしごいてスパートを開始させる。4角も手綱をしごいて目一杯追われるもズブさを見せる。直線を向いても反応はひと息で、ジリジリと伸びるだけ。ジャパンC,天皇賞で見せた並ばれてからの勝負根性は見られなかった。スパッとは切れないだけに究極の瞬発力勝負になったのは誤算だった。もう少し引っ張ってくれるタイプがいればよかった。

ヒルノダムールは久々で乗り込みは入念で仕上がりはほぼ万全だった。下見どころでは少し気負っていた。3番枠から好発を決め道中は後方のインからの追走。歴史的な超スローペースでも道中の折り合いは完璧。前を行くブエナビスタを徹底マークする。だが、マークしていたブエナビスタが3角でまさかのズブさを見せる。ヒルノ自身もここで手綱をしごいてスパートを開始させるも、馬込みに包まれて動くに動けない。直線を向いても捌きに苦労し手綱を押しては引く形。ゴチャついたままゴール版を迎えてしまった。勿体ないレースとなった。

引退レースを迎えたブエナビスタ。下見どころではいつも通りの落ち着きを見せ、好走は約束されたかに見えた。だが、結果は7着惨敗。これは「最内枠発走」によって「包まれたくない」というジョッキー心理が招いたものだった。発馬直後、包まれることを嫌った岩田は手綱を目一杯しごいてポディションを取りに行く。4角で行き脚がついたことで手綱をグッと抑える。だが、レースは逃げ馬不在の歴史的な超スローペース。出して行ったことで気合いの入ったブエナはこの緩急のある流れに対応できず、直後からハミにモタれて力んでしまう。道中はずッとモタれて掛っていた。しかも、インの馬場の悪いところを通らされて自然と体力も奪われる。これが3角から見せたズブさの原因である。内へモタれて左手綱を引きながらの誘導で岩田も満足には追えていない。4角で一瞬の脚があれば進路はあった。ここを抜け出せなかったのは道中で力んで体力を消耗してしまったため。「狭いとこに入って脚を余した」のではなく「道中で体力を消耗したために、狭いところ割る脚力が失われた」のである。

ローズキングダムは8㌔減で馬体はギリギリで返し馬でテンションが高かったように、精神面でもギリギリだった。加えて歴史的な超スローペースの競馬となり、道中は頭を上げてモロに掛ってしまった。馬格がないタイプで精神的な脆さを抱えるタイプ。秋4戦目で限界だったか。