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ストリートパズル(軽井沢学園を応援する会会報)第8号より

‐園の庭をはきながら‐

ありふれたこの場所で

たかねっち☆
 今回のストリートパズルは、昨年長野市で開かれた「長野県児童福祉施設大会」という催しの中で、軽井沢学園の保育士が実際に発表した体験談をそのまま掲載させていただきました。毎回このコーナーでは施設で暮らすこども達の様子について述べていますが、今回はそんなこども達を日々支えている保育士達に焦点を当ててお話しさせて頂きます。

軽井沢学園を応援する会が発足してから2年が経とうとしています。あっという間の2年間でしたが、その中で私達は実に多くの方々と出会うことができました。そして、有難いことに、出会った皆さんは口々に「地元にこんな施設があるなんて知らなかった」「もっと詳しく知りたい」「自分にも何か手伝えることはないか」「応援しています」などと言って私たちを励まし、勇気づけてくれます。しかし、それと併せて「大変なお仕事ですね」とも言われます。そんな言葉を聞く度に私は、どんな仕事であっても大変さは付きものであるし、自分達はそんなに特別な事をしているのだろうかと恐縮してしまいます。

保育士の仕事は、朝こども達を起こして学校や幼稚園へ送り出し、そのあと、まだ幼稚園へ行かない小さなこどもの面倒をみながら掃除や洗濯をします。病気の子どもがいれば受診もします。この時期は庭の草むしりや畑の世話なども行います。夕方になってこども達が帰ってくると宿題をさせて、明日の学校の準備をこどもと一緒に行います。そして、夕食、そのあと順番にお風呂に入れて、本を読んであげながらこども達を寝かしつけます・・・
この繰り返しであり、やっていることは世のお母さんたちと同じです。大きな違いといえば、私達は本当の親ではないということですが、児童養護施設という所は何か特別なことをする場所ではなく、ごくごく当たり前のことを淡々と繰り返す場所なのです。

これだけ聞くと、何だか事務的に生活を流しているかのように思われるかもしれませんが、しかし相手はこどもですから、この当たり前の生活がなかなか思うようにはいきません。朝はなかなか起きられない。学校へ行きたくない日だってあります。勉強も嫌いですしお風呂も嫌いです。好き嫌いだってありますし、夜が更けると不安で不安でたまりません。そうかと思えば仲間同士ふざけ過ぎて歯止めが利かなくなることもありますし、気に入らない事があって暴れたりもします。そんな思いどおりにならないこども達を叱ったり、褒めたり、甘やかしたり、時には突き放したりしながら日々生活しています。

そして、何よりも様々な事情によりここへやって来たこどもたちですから、一人では到底抱えきれない重たい荷物を抱えています。そんな抱えきれない怒りや悲しみを保育士は、こどもと一緒に背負いながら山を登るかのようにして自立の手助けをしているのです。この部分だけ聞けば確かに重たくて大変な仕事かと思われるかもしれません。しかし、私はこども達と向き合う健気な保育士達の姿を見て思います。きっとこの人達は、こどもと共に笑ったり泣いたりして過ごしながら、共に成長していけることを楽しんでいる。それが児童養護施設の保育士の一番のやり甲斐なのではなかろうかと。少々カッコつけ過ぎかもしれませんが、仕事としての枠を超え、生き方そのものではないだろうかと。

今回この原稿を書くにあたり、数人の保育士に単刀直入「どんな保育士になりたいの?」と聞いてみました。すると、「えっ?どんな保育士になりたいかって急に聞かれてもなあ。楽しいとか?頼られるとか?正直よくわからないです・・・」と、返答に困って誰一人はっきりと答えてはくれませんでした。何故だろうと私は考えました。皆目標を持っていない訳ではない。日々の生活を当たり前のようにこなしていくことが何より難しく、そして大事であるからこそ“普通”の暮らしを演出する保育士に特別なことはいらない訳で、だから言葉となってはっきりと出てこないのだろう。
でも、日頃こどもとの関わり方を見ていたらわかります。保育士たちは皆、心の中では「楽しくて、温かくて、こどもに恋しがられる保育士になりたい。いつしかここを巣立って大人になってからもずっとずっと恋しがってもらえるような・・・」そんな風に思っているはずです。きっと・・・

 今回、保育士の意見発表文の紹介を兼ね、たかねっち☆のコーナーをご挨拶および編集後記に代えさせていただきます。これからもストリートパズルをよろしくお願いします!!
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