三流読書人

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ドングリ小屋住人 

むなしい科学

2009年06月04日 08時04分25秒 | くらし

    本村有希子「発信箱」五月三十日「むなしい科学」
  
  雨降れば雨に放射能 雪積めば雪にもあり といふ世をいかに   
 
 湯川秀樹はこの歌を、米国の水爆実験の後に詠んだ。ノーベル賞受賞後は核兵器廃絶運動に取り組み、激しさを増す核開発競 争を批判した。
 太平洋上での実験は予想以上の破壊力を示し、操業中の「第五福竜丸」の乗組員23人が「死の灰」を浴びた。日本は広島、 長崎に続いて三たび核兵器を経験している。
 そして今月、北朝鮮が地下核実験を実施した。「成功」を伝える発表文は「科学者、技術者らの要求に従い」と始まる。作っ ては試し、改良してはまた試す。こうした試行錯誤なしに科学の発展はない。だが、科学者たちは結果の深刻さについて一度で も想像したことがあるだろうかそう考えたらむなしくなった。
 戦時中、米国で原爆開発計画に参加した科学者の回想録(「原爆を作った科学者たち」岩波書店)。巨額の金を使って刺激的 な先端研究ができる喜びと、世界初の核実験を成功させた興奮がつづられている。 広島と長崎への原爆投下手順表を作った科学者は「当時の最大の心配は、手順表を実行したときの深刻な影響ではなかった」 と語った。
 砂漠の真ん中の実験場は放射能に汚染され、今も自由に立ち入れない。日本でも陸軍と海軍が原爆開発を計画し、湯川ら多くの 科学者がかかわった。未完に終わったから「加害者」にならずに済んだ。
 人間はこの60年間、同じことを繰り返してきた。政治家が科学者を利用し、科学者は無邪気に目標を追いかけ、多くの命を 奪い、地球を汚し、誰ひとり幸せにしなかった。どう考えても、これ以上むなしい営みはない。

 先月末、毎日新聞の「発信箱」に書かれた環境科学部記者元村有希子氏のコラムである。私はこの人のファンであるが、最近 あまりこの欄では書かれていなかったように思う。 
 ここに書かれていることが原点であろう。
 北朝鮮を冷静に観察しなければなるまい。
 しかし、麻生をはじめ核抑止力への幻想を捨てきれない政治家がいる。
 オバマが唯一の核を使用した国の大統領、としてその犯罪を認めているのに、被害者となった国がとるべき方向はそれほど難 しい選択ではないと思うが。
 必要なのは核抑止力などではなく、核兵器のない世界を、と訴え続けることだ。          

 そこをあいまいにするかぎり、北朝鮮になめられ続ける。

 

 


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