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縄文小説家・森裕行のブログです。身近な縄文を楽しみ生き甲斐としています。「生き甲斐の心理学」の講師もしています!

「一房の葡萄」は少年の嫉妬の話!  (みんなの性格形成論 8/10)

2012-07-21 | 第三章「無意識の世界」

 ロジャースの性格形成論の中には、ロジャースの心理療法の神髄の命題(17~19)も載っている。これは、自分の中の暗い感情を統合し成長することで解消していくプロセスでもある。

 ところで、もう一週間以上お付き合いしている「一房の葡萄」 http://www.aozora.gr.jp/cards/000025/files/211_20472.html

この話は、主人公の「僕」が何か暗い感情を持っていて、学友のジムの絵具が欲しくなり、盗んでしまう。そういう事件がらスタートする。そしてご存じの展開になるが、最後には若い女教師から一房の葡萄をジムと「僕」が一緒ににいただいて、「その時から前より少しいい子になり、少しはにかみ屋でなくなったようです。」という。

 どういう暗い感情が統合されたのか?「生き甲斐の心理学」を学ぶと、分析のためのカルテの書き方を勉強するのだが、如何であろうか。

 その暗い感情は、欲しい絵具に対し「なんだか臆病になってパパにもママにも買って下さいと願う気になれない」ものである。そして、絵具を盗むという強い情動をうむ。また、ジムに対し強烈な疑惑感も感じたりしている。

 そして、短編の半ばくらいから僕の大好きな若い女教師が突如登場する。そして、絵具を盗んだ犯行が友達により発覚し、ジムを含めた友達によって連行され、若い大好きな女教師の前に立たされる。

 私は、初め気付かなかったが、何回か短編を読んでいるうちに、美しい女教師とジム、「僕」が三角関係で、「僕」には嫉妬が無意識に働いていたように思えてならない。そうすると、小説の前半に、「ジムは僕より身長せいが高いくせに、絵はずっと下手へたでした。それでもその絵具をぬると、下手な絵さえがなんだか見ちがえるように美しく見えるのです。僕はいつでもそれを羨(うらやま)しいと思っていました。」という説明が判る。直接的に書いていないが、若い先生を巡ってジムに嫉妬していたのではないだろうか。

 嫉妬というと、ギリシャ神話の女神ヘラを思い出す。奔放なゼウスの度重なる浮気に、強烈に嫉妬し仕返しをする女神である。嫉妬から生まれる強烈な女神の神話を思い出すと、少年が絵具を盗むなどかわいいもののように感じてしまう(でも、無垢な少年ですら犯行に駆り立てる感情と言ってよいかもしれない)。

 このように考えると、女教師がジムをとりなし、和解させ、無益な競争を解消しようとしたのも理解できる。

 私も実感した経験があるが、嫉妬の感情は競争関係を意識化し、その意味(何のために生きているのか)を深く考え、近視眼的な競争状態から心理的に離脱する(悟る)ことで、かなり解決できるようだ。女教師は、難しい話は一切しなかったが、「一房の葡萄」が聖書を象徴するようで、嫉妬を乗り越えるSomethingを伝授したように思える。

 みんなの性格形成論 8/10

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