人生はいろいろなことがある。わりと最近のことだが、何十年も会うことのなかった少年時代の友達をホテルのロビーで見かけた。先方はポーカーフェイスであったが、どうも私に気づいているようであった。あとは私が気楽に声をかけるだけの状況だったが、私と同席していた知人との会話にかまけて声をかけずじまいであった。
そんな出来事の後、その方はしばらくして亡くなったと友達から聞いた。ちょっとしたためらいにより、今生での再会を楽しめなかったことに悔いを残した。
人のこころの仕組みに反動形成がある。Ａという現象に出会うと無意識にＢというふうに出る。私は人生を好転させるかもしれないチャンスの時に、なんとなく諦めて逃避するようなところが昔からあった。これは私のへんな性格なのかなと思っていたのだが、生き甲斐の心理学を学んでいくと、幸福になりそうだと何故か逃避する人というのは珍しいことではないことを学ぶ。過去に幸福な状態の中で突然不幸に見舞われたりすると、無意識の領域で幸福になりそうだと、何故か幸福への道から逃げ出すというような行動をとったりする。
一般には反動形成は意識して行うものではないようだが、自分のへんな傾向を理解してくると、自分の中にへんな「ためらい」が生じた時、意識して幸福に向かって正面攻撃をする。もちろん、自分の傾向や渇望、アイデンティティにそったもので、無用な戦いをするわけではない。
大人になって知る防衛機制⑤ 5/10
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| 森 裕行 | |
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