だいたいこの時期に首相が第一原発の視察を入るのは、近々処理水の放出をすることの表れとしか見えない。その決定のための地ならしとしか見えない。だからこそ、福島まできながら、地下水バイパス水の放水問題の時「関係者の理解なしに(処理水の)いかなる処分も行わない」との約束の履行を求め、処理水放出に反対している地元の漁民と面会し対話することもなかったのだろう。
しかし、報道された処理水海洋放出に関する共同通信社の全国電話世論調査の結果では、本当にこのまま突き進んでいいのかを改めて問うていると思う。調査結果では、風評被害への懸念の声が88.1%から示され、政府の説明が不十分との考えが81.9%で、約1ヶ月前の前回調査より1.6%高かったという。また、放出の賛否に関しても、賛成が29.6%で前回を1.7%下回っているという。
政府のALPS処理水放出計画はこうだ。汚染水や十分核種が取り切れていない処理水は、多核種除去装置・ALPSで放射性核種の濃度を環境放出の国基準以下に下げた上で、取り去ることができないトリチウムの濃度を1ℓ当たり1,500ベクレル未満になるように薄め、原発の沖合1kmまで伸ばした海底トンネルで移送し放出する。年間の放出量は当面、事故前の管理目標である22兆ベクレルを下回るようにするという。
放射性核種は、原発事故前から基準値未満となるよう管理されながら放出されていた。今回の放出計画でも、放出量は事故前と同等に扱うようなので、安全性の上からは問題がないと思う。それでも風評被害が懸念されるのは、原発事故によって大量の放射性核種がまき散らされ、健康や命への影響に怯えたという体験を踏んできたからに違いない。いわば事故アレルギーのようなもの。このアレルギーを解きほぐしていくためには、事故や事故処理の現状、放射性物質の性質等について、国民に幅広く説明し、理解を広げることが何よりも大切だと思う。
そして、こうした説明は、昨日、今日の話ではなく、地下水バイパスの水処理の問題で風評被害が再燃するなどがあったことを考えれば、その頃から本格的な取り組みとなっていかなければならなかったはずだ。
現実はそうなっていなかった。せいぜい関係省庁のホームページ上の掲載や、福島関連のイベント時の説明など申し訳程度の説明に止まり、昨年、CMや新聞広告をはじめそれなりの説明機会を設け、その効果の把握に務めたようだが、それっきり、十分な説明をするには至っていない。
原発事故での深刻な被害から立ち直りをめざす漁業者等のことを考えるなら、国民に判断する力をしっかり持っていただくために説明等の取り組みに真剣に向き合い取り組むことが求められていたと思う。そしてこうした政府の取り組みは、漁業者をはじめとした関係者の政府の姿勢への信頼を深めるものになったに違いない。しかし、そうはなっていない。私はそう考えている。
今日の新聞の見出しを見て思った。昨日、岸田首相の第一原発訪問の報道を読んだとき、その記事が今日のトップになるだろうと考えていた。現実は、海洋放出に懸念を示す調査報道の結果がトップ記事で、首相の訪問は、その記事に並べて掲載された。「風評被害に懸念・政府説明不十分」と「首相・東電に『緊張感持ち対応を』」が並んだ編集には、〝当初目論見通りに8月末から9月初めの処理水放出どころの事態ではないでしょ〟と政府に釘を刺す、新聞社なりの主張を感じるように思う。
首相は、今日にも全漁連の会長と面会し政府の立場を説明し、理解を求める方向にあるようだ。そして22日の閣議を受けて西村経産大臣が来市し、県漁連の幹部と会談する予定という。経産大臣は閣議の決定を受けて、その説明のためになるだろうが、放出の結論を持って漁業者にその結論を押しつけることがあってはならないと思う。もしここで政府が放出時期決定の結論を押しつけることになれば、地下水バイパスの水処理問題に続き、漁業者等の関係者の声を踏みにじることになり、政府への信頼は地に落ちるといわざるを得ない。
処理水の放出は第一原発の事故処理と廃炉に向けた行程の必要性から議論されてきたことではあるが、これから数十年にわたる廃炉作業を考えれば、政府は地元との信頼関係を築くことにこそ最大限の努力を払うべきと思う。
さて、首相は東電に緊張感をもった対応を求めたという。緊張感が必要なのは政府なのではないだろうか。今後、政府はどういう対応をするのか。ここ数日、その対応をしっかり見つめていきたい。
しかし、報道された処理水海洋放出に関する共同通信社の全国電話世論調査の結果では、本当にこのまま突き進んでいいのかを改めて問うていると思う。調査結果では、風評被害への懸念の声が88.1%から示され、政府の説明が不十分との考えが81.9%で、約1ヶ月前の前回調査より1.6%高かったという。また、放出の賛否に関しても、賛成が29.6%で前回を1.7%下回っているという。
政府のALPS処理水放出計画はこうだ。汚染水や十分核種が取り切れていない処理水は、多核種除去装置・ALPSで放射性核種の濃度を環境放出の国基準以下に下げた上で、取り去ることができないトリチウムの濃度を1ℓ当たり1,500ベクレル未満になるように薄め、原発の沖合1kmまで伸ばした海底トンネルで移送し放出する。年間の放出量は当面、事故前の管理目標である22兆ベクレルを下回るようにするという。
放射性核種は、原発事故前から基準値未満となるよう管理されながら放出されていた。今回の放出計画でも、放出量は事故前と同等に扱うようなので、安全性の上からは問題がないと思う。それでも風評被害が懸念されるのは、原発事故によって大量の放射性核種がまき散らされ、健康や命への影響に怯えたという体験を踏んできたからに違いない。いわば事故アレルギーのようなもの。このアレルギーを解きほぐしていくためには、事故や事故処理の現状、放射性物質の性質等について、国民に幅広く説明し、理解を広げることが何よりも大切だと思う。
そして、こうした説明は、昨日、今日の話ではなく、地下水バイパスの水処理の問題で風評被害が再燃するなどがあったことを考えれば、その頃から本格的な取り組みとなっていかなければならなかったはずだ。
現実はそうなっていなかった。せいぜい関係省庁のホームページ上の掲載や、福島関連のイベント時の説明など申し訳程度の説明に止まり、昨年、CMや新聞広告をはじめそれなりの説明機会を設け、その効果の把握に務めたようだが、それっきり、十分な説明をするには至っていない。
原発事故での深刻な被害から立ち直りをめざす漁業者等のことを考えるなら、国民に判断する力をしっかり持っていただくために説明等の取り組みに真剣に向き合い取り組むことが求められていたと思う。そしてこうした政府の取り組みは、漁業者をはじめとした関係者の政府の姿勢への信頼を深めるものになったに違いない。しかし、そうはなっていない。私はそう考えている。
今日の新聞の見出しを見て思った。昨日、岸田首相の第一原発訪問の報道を読んだとき、その記事が今日のトップになるだろうと考えていた。現実は、海洋放出に懸念を示す調査報道の結果がトップ記事で、首相の訪問は、その記事に並べて掲載された。「風評被害に懸念・政府説明不十分」と「首相・東電に『緊張感持ち対応を』」が並んだ編集には、〝当初目論見通りに8月末から9月初めの処理水放出どころの事態ではないでしょ〟と政府に釘を刺す、新聞社なりの主張を感じるように思う。
首相は、今日にも全漁連の会長と面会し政府の立場を説明し、理解を求める方向にあるようだ。そして22日の閣議を受けて西村経産大臣が来市し、県漁連の幹部と会談する予定という。経産大臣は閣議の決定を受けて、その説明のためになるだろうが、放出の結論を持って漁業者にその結論を押しつけることがあってはならないと思う。もしここで政府が放出時期決定の結論を押しつけることになれば、地下水バイパスの水処理問題に続き、漁業者等の関係者の声を踏みにじることになり、政府への信頼は地に落ちるといわざるを得ない。
処理水の放出は第一原発の事故処理と廃炉に向けた行程の必要性から議論されてきたことではあるが、これから数十年にわたる廃炉作業を考えれば、政府は地元との信頼関係を築くことにこそ最大限の努力を払うべきと思う。
さて、首相は東電に緊張感をもった対応を求めたという。緊張感が必要なのは政府なのではないだろうか。今後、政府はどういう対応をするのか。ここ数日、その対応をしっかり見つめていきたい。
だもの、今回の処理水放出だって、約束を「守る」ではなくしてしまった。
漁業関係者の誰も了解していない。
政権与党の中に、良識のある者はいないのか。
ところが、約束を平気で破ってしまう。これじゃ信頼することはとても無理。9年前の地下水バイパスの時、国と東電出席のもと開かれた委員会で、トリチウムが安全だというなら、稼働原発からは排出されている歴史的事実や化学的性質などを国と東電が全国民に説明して理解してもらうよう求めていましたが、その当時から本格的な説明に努めていれば、今とは違った状況になったのではないかと思います。
やるべきことをやらず、その結果生まれた弱点は、漁業者など現場に押しつけるやり方は、地下水バイパスの時と何ら変わっていないと思います。