行田市指定記念物「片萎竹」は市内藤原町の民家にひっそりと残っている。不思議な竹で節間にできる縦じわと平滑な部分とが半分ずつ節ごとに交互にできるマダケの変種とされている。『かたしなびたけ』と読むそうだ。
『忍の行田の昔話』『忍名所図絵』にこのしなび竹にまつわる逸話が記されている。
その昔弘法大師が若小玉の地を廻っていた際、歩き疲れふと見ると丘に竹林があった。農家の与八という男の家で大師は立ち寄り杖にと竹を所望した。ただの旅の坊主と思った与八は「家の山の竹は細く萎びているので杖にはなりません」と断ってしまった。すると翌年からは生えてくる竹すべてが細く萎びていて、丘そのものも平地になってしまったという。
弘法大師はその後同じ村の千歳というものに同じく竹の杖を所望したところ、千歳は快く応じ、竹を切って差し上げたところ、大師は喜んで和歌残して去ったという。「しなび竹、色青く常の竹に変わることなし。俗にいう真竹なり。たとえば今年生えた竹を七月八月頃切りて乾かしたるがごとし」とあり一節おきに曲がっているので困った竹だといわれている。
その後成田村龍淵寺の指月上人という住職が弘法大師の跡を慕って千歳の宅を訪れ大師に倣って和歌を納めたという。
とにかくに おもうようには なよ竹の
ゆがまはゆかめ 人の世の中
(ゆがまはゆまめとは『そうはいかないよ』との意味)
思うにならない世の中で生きる意味を示しているように思う。
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