失礼ながら老いてマスマスお元気である。丹羽氏は大企業のトップとして改革を成し遂げながら、民間
出身で初の中国大使を務め、今でも国に、社会に様々な提言をしている。本書冒頭でも貧富の差は世界
的に広がる一方で、消費のかたちが変わる、すると生産の形も変わる。会社も富裕層向けと貧困層向け
に二極分化していくかもしれない。そのことによって会社の構造も変わらざるをえない、と持論を展開
しています。
日本の会社は特に大企業になるとサラリーマン的社長が増え、自分の在職中は大きく変化をせずに無難
に過ごしたいと考えているとしか思えない経営者が多い気がします。大企業に少しでも関わっていると
会社全体が問題を生じさせないことが大事で、エクスキューズがやたら多い。デジタル化を唱えながら
紙媒体が信じられない程沢山あるのもその証拠です。
同氏は未だに上座・下座がはびこる会社組織にうんざりしています。日本の「変わらない構造」は「タ
テ型社会」の病弊であるとしており、これを変えない限りは世界から取り残されていくという指摘は、
あまりにも昔から言われながら、全くその通りであると言えます。中小ではある程度のクラスを飛び越
えて発言しても聞く上の人間は居ますが、大企業では殆ど不可能でしょう。
最終章で著者は科学技術力で著しく凋落した日本は、今までに世界で見込まれてきた「信用・信頼」を
ベースに、人材にこそ投資し、世界と対峙すべきだと説いています。残念ながら信用に足る政治家はほ
ぼ見当たらないのが現状ですが、信頼できない、仕事をしない政治家を当選させないように選挙の投票
率を上げていく事しか、今はないと思います。
会社がなくなる! 丹羽宇一郎 講談社現代新書