よしーの世界

好きな神社仏閣巡り、音楽、本、アートイベント情報を中心にアップします。

わたしの小さな古本屋   田中美穂

2020-08-12 07:27:58 | 
ふと手に取った本が予想以上に面白かった!よくあることです。ネットでは予め知っているか、よく調べてから

購入しますからね。本屋を巡るのは、こういう本と出合うためです。


著者は高校卒業後、勤めていた会社で体を壊し退職、思い付きのように古本屋を開業します。なんと21歳に

して、古本屋での経験もなく、在庫数百冊で。勿論不動産屋には断られまくり、二十歳過ぎたばかりの女性を

まともに相手にもしてもらえません。それでもしらみつぶしに探してやっと物件を見つけ開店。この思い切り

の良さ、なかなか出来ることではありません。


開業しても簡単に軌道に乗ることはありません。アルバイトもしながら何とか営業を続けるという綱渡りのよ

うな(他人から見れば)生活ですが、著者の頑張らない淡々とした、ちょっとしたことに喜びを感じる生活には

ホッとしながら、共感を覚えます。そして古本屋を通して色々な人との出会い、看板となる猫、亀、クワガタ、金

魚、メダカ達。本を出版するに至る苔観察。


日本には頑張って働いて人より良い生活を目指す、落ちこぼれは敗者同然という風潮があります。でも本当

はそれ程遠い昔ではない時期には、つましい生活に喜びを感じる人が沢山いました。今も頑張りたくても頑

張れない人が大勢います。そんな世の中の風潮に一石を投じる(著者はそんな大胆なことを思っていないで

しょう)なんともほのぼのとした、それでいてしっかりした芯が通ったものを感じました。是非一読を。


わたしの小さな古本屋      田中美穂       ちくま文庫


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 真夏の江の島散歩part2 ~児... | トップ | キース・ヘリング(1958年~1... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事