”犯行現場では、かならず犯罪者と被害者または犯行現場のあいだで証拠が相互に移動する。発見
は困難であるかもしれないが、三つのうちの複数を結びつける微細証拠はつねに存在する。犯人の
身元を暴き、あるいは住居を突き止めることにつながるその共通の微細証拠を探し出すのが、鑑識
捜査官の務めである” ロカールの原則を主人公リンカーン・ライムなりに言い換えた文章だ。
四肢麻痺の天才犯罪学者リンカーン・ライムの電話がやかましく鳴りだし、ロン・セリットー警部
補が「リンカーン、厄介なことが起きた」と告げる。ライムのラボには国土安全保障省代表、FB
I、ニューヨーク市警の面々が集合した。「アークフラッシュ(電気の爆発)」がバスを直撃した
という報告、しかもテロの可能性もあるというFBI捜査官の言葉に一気に物語は緊迫の度合いを
増す。
今回も頭脳だけで勝負するライム、元モデルで銃の腕も抜群のサックス、いつも皺くちゃのシャツ
のセリットー、ライムと共に鑑識をするメル・クーパー、思わぬ活躍をするプラスキー、介護士の
トム、そして上司に疎まれながらも存在感を示すFBI捜査官フレッド・デルレイとライムの仲間
たちは、それぞれの特技を生かし大活躍をする。その存在を見ることが出来ない電気との戦いは得
体が知れず、常に不安を抱えながらの捜査に思わず息を飲むが、ライムの知力が冴えを見せる。
ジェフリー・ディーヴァーの本は現代社会の様々な病理や危険性を俎上に上げている。今回も読み
ながら考えさせられることが多かった。さらにライムの心境の変化に感動的なラスト!読後感も爽
快!是非、ご一読を。
バーニング・ワイヤー ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫