灯油の配達に来た青年が、チラと通った猫を見て、「猫飼ってるんですか?」と聞く。
「いや、年末から納屋に住み着いてるから、エサはやってるんだけど
全然懐かんで可愛げがないんよー!」と言うと、
「ウチは8年ノラ猫が居ましたけど、8年間一度も撫でさせてくれんかったです。
お腹が空くとニャーニャー鳴いてくるけど、近付くとシャーッとすごんでねえ。」と言う。
あら、ウチと同じだ。こんな懐かない猫は初めてだと思ったけど、
やっぱり警戒心の強い猫っているんだねえ。
ウチのノラは、初めは「シャーッ」としか言わなくて、
ひと月くらいして初めて「ニャー」と鳴くのを聞いた。
あら、この猫「ニャー」と鳴けるんだ!と感動したんだけど、あれから関係は一歩も進展しない。
そもそもエサを催促する以外、人間に甘えようなんて気はサラサラ無いようだ。
青年のとこの猫は、元気が無くなって病院に連れて行こうとしたけど捕まらなくて、
獣医師に無理言って、お薬だけもらってきて与えたそうな。
それからいつの間にか居なくなったという。
ウチのノラは、近所の犬のエサを食べに行ったりもしているらしいから、
これからもしたたかに生きていくんだろうな。
ニャーと鳴いてくるくせに近付けば逃げて隠れるノラ猫。石と同化。