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10月~「協会けんぽ」発足

2008-10-01 19:58:02 | その他社会・時事
協会けんぽ、社会保険庁の政管健保部門を切り離し発足(毎日新聞)

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 社会保険庁の政府管掌健康保険(中小企業の会社員ら3600万人が加入)を運営してきた部門が1日、同庁から切り離され、非公務員型の公法人「全国健康保険協会(協会けんぽ)」(小林剛理事長)が発足した。政管健保の保険料率(8.2%を労使折半)は全国一律だったが、来年9月までに都道府県支部ごとに違う保険料率が設定される。

 協会けんぽは、職員2100人。うち300人を民間から採用した。患者の窓口負担などは変わらず、旧保険証は当面使える。

 保険料率を都道府県単位とするのは、医療費抑制を実現した地域は保険料が下がる半面、抑制できない場合は負担を重くせざるを得ないようにするため。厚生労働省の粗い試算では、保険料率は最高の北海道が8.7%にアップするのに対し、最低の長野県は7.6%に下がり、1.1ポイントの格差が生じる。ただ実際には、各都道府県の年齢構成や所得水準の違いを考慮し決める。【佐藤丈一】
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全国健康保険協会「協会けんぽ」のサイトはこちら

これは、社会保険庁の実質的民営化である。
「民営化で公共サービスが向上することはない」というのが当ブログの基本的立場だが、協会けんぽへの評価は当面差し控えるとして、「都道府県別保険料率制度」はどう考えても健康保険制度の崩壊を決定的なものにするだろう。

そもそも、協会けんぽ(旧政管健保)は自前で健康保険組合を組織する経済的余裕のない中小企業のサラリーマンが加入する制度だ(最近は西濃運輸や京樽などの大企業でも健康保険組合が解散しているくらいだから今やそうともいえないかもしれないが)。そこから考えると、都道府県別保険料率制度が本格的に動き出した場合、保険料率が上がる可能性が高いのは

1.大企業が少なく、中小企業が多いところ
2.医療費がかかり、抑制も難しい高齢者が多く住むところ

…である。
もはやこれ以上の説明を要しないだろう。国鉄分割民営化、郵政民営化に続いてまたもや「弱者、地方切り捨て」である。

案の定、都道府県別保険料率制度について、全国保険医団体連合会(保団連)が「都道府県間の保険料の格差が広がり、地域医療が混乱する」などと指摘している。

協会けんぽは医療崩壊を加速させる(医療介護CBニュース)
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 社会保険庁の廃止に伴い、今年10月に設立される全国健康保険協会が運営する「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」について、全国保険医団体連合会(保団連)が「都道府県間の保険料の格差が広がり、地域医療が混乱する」などと指摘している。

 2006年に成立した医療制度改革関連法によって、今年10月に「政府管掌健康保険(政管健保)」が廃止され、全国健康保険協会の「協会けんぽ」に移行する。
 政管健保は、国(社会保険庁)が保険者となって運営してきた。民間企業で働く従業員のうち、主に事業所が健康保険組合を持たない中小企業の従業員や家族約3600万人が加入している。

 「協会けんぽ」には当初、現在の政管健保の保険料が適用されるが、協会設立後1年以内に、各都道府県の医療費を反映した保険料が設定されることになっている。このため、来年10月から全国一律の保険料ではなくなり、都道府県ごとの保険料になる予定で、保団連では、「都道府県ごとの保険料への移行に当たり、保険料が大幅に上昇する場合、5年間に限って『激変緩和措置』が講じられるが、その後は都道府県間の格差が著しいものになると予測される」としている。

 また、「協会けんぽ」では、都道府県による医療費の差が保険料に反映することについて、「医療費を削減して保険料の上昇を抑える切り札として考えられるのが、各都道府県の医療機関に支払う診療報酬の削減。ある県では、診療報酬の単価を現行の一点10円から数円削減するなどの“特例措置”によって、医療費を削減できる仕組みになっている」と指摘。「都道府県別の診療報酬が導入されるなら、同じ医療行為でも都道府県で費用が変わることになり、地域医療に大きな混乱をもたらす」と批判している。

 保団連では、「これまで国が保険者として担ってきた全国一律の健康保険制度が、都道府県単位の健保制度に分割される。国の責務を投げ捨てるとともに、都道府県に医療費削減を競わせるもので、“医療崩壊”を加速させる」などとして、新制度の見直しを求めている。
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保団連の「医療費抑制政策からの転換を」と題したコメントは全く妥当なものだ。最後に、その内容をご紹介しよう。

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『新制度「協会けんぽ」のもたらすもの』(保団連)

新制度「協会けんぽ」のもたらすもの…政管健保廃止で都道府県支部に移行

 2006年に成立した「医療制度改革関連法」によって、2008年10月より政府管掌健康保険(政管健保)が廃止され、新たな保険者である全国健康保険協会が運営する健康保険(略称:協会けんぽ)が発足する。一方で、今年度に入り、収支の悪化を理由に健保組合を解散して政管健保に移行するケースが発生している。都道府県単位に分けて財政運営を行う全国健康保険協会の問題点を探った。

全国一本の制度から都道府県単位に分割

 政管健保は約3600万人が加入し、国(社会保険庁)が保険者として運営しているが、今年10月1日以降は、国と切り離した保険者として「全国健康保険協会」が運営する。47都道府県に支部を設置し、支部単位の財政運営を行う。

 保険料徴収や被保険者等についての情報提供については、新設の「ねんきん事業機構」が行う。

 現在、社会保険庁が保有する全国の社会保険病院(53カ所)と厚生年金病院(10カ所)は、医療施設を譲渡・売却するための組織である年金・健康保険福祉施設整理機構(略称:PFO)に移管する方向で準備が進んでいる。

 全国健康保険協会は、厚生労働大臣が任命した運営委員(事業主3人、被保険者3人、学識経験者3人の計9人)による運営委員会が、予算、事業計画、保険料(率)を決定する。事実上、保険者となる都道府県支部では、支部長が委嘱する評議員による評議会が置かれる。

厚労省試算でも 保険料格差は深刻

 全国健康保険協会の保険料は、現在の政管健保の保険料(保険料率8・2%)が適用されるが、協会成立後1年以内に、地域の医療費を反映した保険料が設定されることになっている。したがって、2009年10月から全国一律の保険料は廃止され、都道府県ごとの保険料となる予定だ。

 都道府県支部は、単年度の収支が均衡するよう保険料を設定して財政運営を行う。保険料率の上下限は、健康保険組合と同様とし、3%~10%の範囲で設定する。

 ただし、支部が決めた保険料について、厚生労働省が「収支の均衡を図る上で不適当」と認めた場合は、「協会けんぽ」に対して、支部の保険料を変更するよう求めることができる。さらに、保険料の変更の求めに応じないときは、厚生労働省の社会保障審議会の議決を経た上で、厚生労働大臣が職権で保険料を変更することも可能である。

 都道府県ごとの保険料への移行に当たり、保険料が大幅に上昇する場合には、5年間に限り、激変緩和措置が講じられることになっているが、激変緩和措置が終了したときには、都道府県間の保険料の格差は著しいものとなることが予測される。事業所と従業員の数が多く、給与水準が高い地域と、そうでない地域の格差がいっそう深刻になるものとみられる。

 厚生労働省が2003年度の政管健保の医療費実績で、都道府県ごとの保険料を機械的に試算したところ、最も低い長野県は保険料率が7・6%(つまり、長野県の医療費が全国で最も低い)で、最も高い北海道の8・7%とは、1・1ポイントの差が生じた。

都道府県別診療報酬が可能に―地域医療に大きな混乱

 厚生労働省は、都道府県ごとの保険料では、年齢構成が高い県は、医療費が高くなり、保険料も高くなることから、都道府県ごとに差異がある年齢構成、所得水準については、都道府県の間で財政調整を行うことにしている。
一方で、都道府県ごとに差異がある医療費については、地域間の差異をストレートに保険料に反映するとしている。保険者を事実上、都道府県ごとに細分化し、医療費を点検・削減するねらいである。

 「平成20年度全国健康保険協会 事業計画及び予算(検討のための素材)」では、「医療費の適正化の推進」を課題に挙げ、「2011年4月からのレセプトの原則オンライン化を見据えた点検体制の検討を進める」としている。「被保険者1人当たり点検効果額(6カ月) ・内容点検:439円以上 ・外傷点検:218円以上」という削減目標を掲げている。

 医療費を削減し、保険料の上昇を抑える切り札として考えられるのが、県内の医療機関に支払う診療報酬の削減である。例えば、その県だけは診療報酬単価を1点10円から何円に削減する、半年以上入院している後期高齢者の診療報酬を何割カットするなどの特例措置によって医療費(ひいては保険料)が削減できる仕組みになっている。

 第1期の都道府県「医療費適正化計画」が終了した翌年の2013年度以降に、都道府県を実績評価の上、医療費の高い特定の都道府県だけにこうした特例措置を認めることが可能となる(高齢者の医療の確保に関する法律 第13条・同14条)。都道府県別の診療報酬が導入されるならば、同じ医療行為が都道府県によって費用が変わることになり、地域医療に大きな混乱をもたらすことになる。

医療費抑制政策からの転換を

 2006年7月11日、厚生労働省と社会保険庁が開催した「健保法等一部改正に伴う施行準備に関する説明会」で、社会保険庁の武田俊彦医療保険課長(当時)は、「全国健康保険協会は全国一つの法人だが、可能な限り、独立の保険者の集合体として運営することがこの制度改正の本旨である」(国保実務 第2517号)と、そのねらいを語っている。

 これまで国が保険者として担ってきた全国一本の健康保険制度を、事実上、都道府県単位の健保制度に分割し、国の責務を投げ捨てるとともに、都道府県単位で医療費削減を行い、競い合わせようとするものである。いまでも崩壊が進む地域医療が、ますます荒廃することになる。

 医療費抑制政策を根本から転換することが求められている。
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