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【福島原発事故刑事裁判第30回公判】「記憶にございません」は追い詰められた者の常套句!武藤元副社長に一片の反省もなし

2018-10-18 22:36:34 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
福島原発事故をめぐって強制起訴された東京電力旧3役員の刑事訴訟。10月16日(火)の第30回公判、10月17日(水)の第31回公判、10月19日(金)の第32回公判の模様を伝える傍聴記についても、福島原発告訴団の了解を得たので、掲載する。次回、第33回公判は10月30日(火)、第34回公判は10月31日(水)に行われる。

●武藤氏、「ちゃぶ台返し」を強く否定

「だから、この話は私は聞いていません」

「私のところに来るようなことではないです」

「それはありません」

 被告人の武藤栄氏は、強い口調で質問を否定し続けた。

 10月16日の第30回公判から、被告人質問が始まった。トップバッターは、津波対策のカギを握っていたとされる武藤・東電元副社長だ。

 2008年2月から3月にかけて、勝俣恒久・元会長ら被告人が出席した会合で津波対策はいったん了承されていたのに、同年7月に武藤氏が先送りした(いわゆる「ちゃぶ台返し」)と検察官側は主張。それを裏付ける東電社員らの証言や、会合の議事録、電子メールなどが、これまでの29回の公判で繰り返し示されてきた。ところが武藤氏は「先送りと言われるのは大変に心外」と、それらを全面的に否定したのだ。

「山下さんがなぜそんなことを言ったか、わからない」

 第24回公判(9月5日)では、耐震バックチェックを統括していた東電・新潟県中越沖地震対策センターの山下和彦氏が検察に供述していた内容が明らかにされた。

 それによると、勝俣氏ら経営陣は、地震本部が「福島沖でも起きうる」と2002年に予測した津波地震への対策を進めることを、2008年2月の「御前会議」(中越沖地震対応打ち合わせ)、同年3月の常務会で、了承していた。

 ところが、これらの会合の内容、決定事項について、山下氏の供述を武藤氏は認めなかった。

 「山下さんがどうしてそういう供述をしたのかわからない」

 「山下さんの調書は他にも違うところがある」
と、山下調書を否定する発言を繰り返した。 

 公判後の記者会見で、被害者参加代理人の甫守一樹弁護士は「山下センター長には嘘をつくメリットは何もない」と説明した。一方で武藤氏は、山下氏の証言を否定しないと、先送りの責任を問われることになる。そして、武藤氏は山下調書を否定できる客観的な証拠を挙げることは出来なかったように見えた。

●「土木学会手法で安全は保たれていた」のウソ

 私が傍聴していて気になったのは、武藤氏が土木学会のまとめた津波想定方法(土木学会手法、2002)を
「我が国のベストな手法」
「土木学会の方法で安全性を確認してきた」
「現状(土木学会手法による想定)でも安全性は社会通念上保たれていた」
などと評価していたことだ。



 これは、事実と異なる。土木学会の津波想定方法で、原発の安全が保たれているのか規制当局が確認したことは一度も無い。武藤氏が言うように「社会通念上安全が保たれている」とする根拠は何も無かった。たまたま、2011年3月11日まで津波による事故が起きなかっただけのことだ。

 2002年に土木学会手法が発表されたとき、保安院の担当者は以下のように述べていた。

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 本件は民間規準であり指針ではないため、バックチェック指示は国からは出さない。耐震指針改訂時、津波も含まれると思われ、その段階で正式なバックチェックとなるだろう。(東電・酒井俊朗氏が2002年2月4日に他の電力会社に送った電子メールから)(注)
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 当時、すでに耐震指針の改訂作業が始まっており、それがまとまり次第、土木学会の津波想定方法が妥当かどうか調べると保安院は言っていたのだ。保安院の担当者は、まさかバックチェックが9年後の2011年になっても終わっていないとは想像していなかったに違いない。
 
 土木学会手法と地震本部の長期評価は同じ2002年に発表された。同じころの科学的知見をもとに、土木学会手法は福島沖では津波地震は起きないと想定し、一方で地震本部は福島沖でも発生しうると考えた。

 両者の想定の違いについて、武藤氏は「地震本部の長期評価に信頼性はない」と断じた。しかし、その根拠は無かった。土木学会がアンケートしたら、地震本部の考え方を支持する専門家の方が多かったこともそれを裏付けていた。

 第29回公判(10月5日)で明らかにされたように、保安院は土木学会手法による津波想定に余裕がないことにも気づいていた。土木学会の想定を1.5倍程度に引き上げ、電源など最低限の設備を守る対策を進める計画もあった。土木学会手法で原発の安全性が保たれているとは、保安院も考えていなかったのだ。

注)H14年当時の対応 電事連原子力部が保安院に送ったメールの添付文書
原子力規制委員会の開示文書

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なお、今回の被告人質問は刑事訴訟最大の山場のため、メディア報道も多かった。以下、メディア報道を紹介する。

東電津波対策先送りどう認識 被告人質問キーマン武藤氏(朝日)

<東電公判>武藤元副社長、冒頭被災者におわび 被告人質問(毎日)

津波対策先送り「心外」=長期評価の信用性否定―武藤元副社長・東電公判(時事)

東電元副社長、津波対策は“適正な手順” 福島第1原発事故裁判(フジテレビ)

東電強制起訴裁判、元副社長「当事者として申し訳なく思う」(TBS)

津波対策の「先送り」否定 東電の武藤元副社長(東京)

東電強制起訴 武藤元副社長「津波予測信頼性ない」(東京)

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