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原子力規制委、敦賀原発データ書き換え問題めぐって日本原子力発電に立ち入り調査

2020-12-16 23:45:04 | 原発問題/一般
規制委、原電に立ち入り検査 原発審査資料の書き換え(朝日)

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 日本原子力発電が敦賀原発2号機(福井県)の審査資料を書き換えていた問題で、原子力規制委員会は14日、原電本店(東京都台東区)の立ち入り検査を始めた。書き換えの経緯や背景について、社内文書の確認や関係者の聞き取りを進める。

 午前9時過ぎ、規制委の職員7人が本店に入り、会議室で剱田裕史副社長らから関係資料の提供を受けた。規制委の古金谷敏之・検査監督総括課長は「誠実な対応をお願いしたい。結果によって、どうするかは改めて考える」と語った。立ち入りは15日まで。

 書き換えられたのは、原子炉建屋直下の断層が活断層かどうかの判断に関わる地層の観察記録。審査を中断して全容解明を求めていた規制委は10月に審査の再開を決めたが、書き換えの背景については社内調査になお不明確な点が多いとして、審査とは別の検査チームで引き続き調べている。
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来年3月で福島第1原発の事故から丸10年となるせいか、このところ原発再稼働や核のごみ応募推進など原子力ムラの強烈な巻き返し策動が伝えられることが多くなってきているが、一方で今回の報道のように、「反省なき再稼働」に一定の歯止めをかけようとする政府内部の活発な動きも伝えられるようになった。政府内部で原発再稼働派と「再稼働反対~再エネ派」との間の攻防が激しさを増していると、当ブログは判断している。

今回の規制委による日本原子力発電(原電)への立ち入り調査は寝耳に水だった。もともとこの問題は、今年2月7日に行われた規制委の審査会合で規制委側が指摘したことに端を発する(関連記事:敦賀原発の断層「生データ」無断で書き換え 日本原電(「朝日」2020.2.7)及び原電 敦賀2号機の「活断層」データを削除 20年審査会資料、規制委に無断で(「毎日」2020.2.12))。原電によるデータの書き換えは、敦賀原発直下を走っている活断層の中に含まれる柔らかい「粘土層」の存在を隠すため、粘土層の存在をうかがわせる生データを丸ごと削除したもので、まさに敦賀原発が福島原発事故後に策定された新規制基準に適合するかどうかの審査(適合審査)をめぐる核心部分で行われたことになる。

なぜこのデータ書き換えが審査の核心になるのか。福島原発事故後に策定された新規制基準では、原子炉建屋や重要免震棟など、原発を安全に運転する上で絶対不可欠な「重要施設」は活断層(最近40万年以内に動いた実績のあるもの。参考資料:「設計・建設段階の安全規制 設置許可」原子力規制委員会)の上に建ててはならないこととされた。既存の原発にも新規制基準は適用されることになっており、「重要施設」の真下にある断層が活断層と認定された場合、その原発は自動的に廃炉となる運命にある。

そして、敦賀原発2号機に関しては、2014年11月19日に行われた規制委の審査会合で、原子炉建屋の真下を走る「K断層」が「13万~12万年前以降」に活動した実績を持っているとして、これを「活断層」とする評価書がすでに決定されている(参考記事:敦賀原発、再び「活断層」 運転困難に 規制委追加評価書案決定(「産経」2014.11.19)及び敦賀原発2号機に「活断層」 規制委が評価書受理 (「日経」2015.3.25))。規制委は「新しい知見が得られた場合、見直すこともあり得る」としており、原電は敦賀原発2号機を再稼働したければ、「新しい知見」を示して2014年の評価書の決定を覆さなければならない立場にある。

しかも、原電が他の電力会社と異なるのは、日本で唯一の「原発専門会社」であることだ。他の電力会社は原発専業ではないため、原発が再稼働できなくなっても(コスト高にはなるが)直ちに事業が行き詰まることはない。しかし原電はそうではない。原発専門のこの会社にとって、敦賀1号機はすでに老朽化で廃炉を決めており、東海第2原発(茨城県)も再稼働に必要な地元自治体の同意が得られない状態になっている。この上、「命綱」である敦賀2号機に関する評価書の決定を覆せないまま廃炉が決定した場合、原電の全原発が再稼働できないという原子力推進側にとって「恐るべき事態」となる。経営破綻~会社清算という事態さえ現実となりかねないのだ。

そんな会社がなぜ倒産せずに生き延びているのか。東京電力など他の電力会社が資金援助しているからだ。電力会社からの資金援助でなんとか倒産を免れている原電は「ゾンビ会社」状態にある。原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて過半数の株式を握られ、国有化された状態で福島原発事故被害者への賠償を行っている東電が、原電のようなゾンビ会社に資金援助を続けていることに対しては、「そんなことに使うカネがあるなら福島県民に賠償せよ」との批判がそうでなくても出されている。東電がこうした批判に抗しきれずに支援を打ち切れば、原電は明日倒産しても不思議ではないのだ。

このような原電の焦りが、データ書き換えを生んだことは間違いない。そして、今回の立ち入り調査は、新規制基準への適合審査というまさに1丁目1番地で「コケにされた」規制委による原電へのけじめという一面も持っている。規制委は当然、原電に厳しい姿勢で臨むであろうし、またそうであってくれなくては困る。

当ブログは、東海第2も敦賀も廃炉にし、原電を破綻させた上で、政府出資の国策企業「日本原子力施設廃炉整理株式会社」へ改組するよう以前から訴え続けている。原発廃炉を専門に手がける国策企業がこれからの時代には必要だと思うからだ。データを改ざんしなければ生き延びられないような原発なら潔く廃炉にし、原電も廃炉会社として一から出直しすればいい。

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