『人様のお金』
Other People‘s Money
厚生年金基金って、何んだ?
平成12年8月脱稿
高野 義博
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第4章 厚生年金基金経営上の諸問題
(4)<人様のお金>
①誰にも属さない資金?
確定給付型年金である機関投資家(日本の厚生年金基金も同様)の積立金は、非帰属な特定の持ち主がいない資金ですと、C.エリスは『敗者のゲ-ム』で述べています。
適切な運用基本方針の確立とその適用という目標を追及する上で、年金基金や財
団のようなほとんどの機関投資家のファンドは、特定の持ち主がいない資金──す
なわち誰にも属さない資金──であるということを認識しておかなければならない。
「これは自分の金だ。このように運用してほしい。さもなくば解約だ」と言えるよ
うな個人は存在しない。つまり、直接の利害関係を有する特定の当事者がいないの
だ。
C.エリス『敗者のゲ-ム』-なぜ資産運用に勝てないのか
これが、一般的に不特定多数と言われる人々の資産を機関投資家として運用する<顔が見えない確定給付型年金>と個人口座に確保される<顔のみえる確定拠出型年金>の最大の相違点です。日本の確定給付型年金(厚生年金基金)の現場では、ここまでの認識、誰の金という意識も一般的になっていないようですが、そうかと言ってエリス氏のように「特定の当事者がいません」と断定出来る訳でもなく、曖昧模糊としたところがあるのが現実・事実です。この金を官僚は代行絡みで社会保障資産ですと言うし、中には、基金に関係し始めました企業ゼネラリストが功労報償的退職金の引当金感覚で会社の所有物ですと発言する者や、信託契約・保険契約をたてに法的な帰属を主張する誤解もはなはだしい運用機関もあります。このような立場の相違によりバラバラな見解がまかり通るのも、統一的な年金法なり金融サ-ビス法が確立されていないがための過渡的な現象でしょうと考えるのが妥当なところでありましょう。
とは言え、次のような事例を読者はどのように読まれるでありましょうか。
免除保険料の半分は従業員負担(給与明細表の基金掛金はこの金額)なので、利
差益の一部は従業員の権利に見える。しかし、確定給付型の年金制度は、事業主が
給付の最終責任を負うので、事業主が従業員分の利差益を受け取っても違法ではな
い。
河村健吉『企業年金危機』
この利差益を厚生年金保険法に即してとはいえ、基金は過去にすっかり受け取って(会館にしたり、掛金抑制に使ったりして)おいて、アド・ホックに給付の最終責任を放棄しようとしているのが代行返上論者ということになりましょうか。
また、河村さんのようにスッパリ断定したままでいいものでしょうか。何も疑問はないのでしょうか。釈迦や仏さんに向かっても言い切れるのでしょうか。強弁してそれがビジネスですと言うのであれば、とんでもないビジネスです。そういうビジネスの命運は知れているでしょうに。
いまさら多言は要しまい。大蔵省と金融界の日本独特の関係──そこでは「護送
船団方式」のもとで、日本の銀行や証券会社、生保などの機関投資家などが、大蔵
省から常に暗黙の行政指導を受けていたが、80年代の後半には、アメリカの長期
国債の入札が近づくたびに大蔵省の担当者から電話が入ったという。用向きは、ア
メリカ国債への応募や購入の意向に関するヒアリングである。しかし、ついでに必
ず他社のアメリカ国債購入状況について説明がある。こうなると機関投資家として
も黙過できない。当局の意を迎えるべく行動せざるを得なかった、と密かに洩らす
ジャパン・マネ-の担当幹部は多かった。
吉川元忠『マネ-敗戦』
おっしゃるように従業員の権利も少しはあるのではないでしょうか。代行分の掛金の半分は加入員負担なのですから。それでも、年金信託契約は大蔵省のお墨付きですとでも言うのでしょうか。それとも、法律に間違いはないですとでもいうのでしょうか。それとも、そのようなことには関知しないという処世術なのでしょうか。それが信託営業ですとでも言うのでしょうか。大蔵省の護送船団方式を楯に信託・生保の寡占体制を敷いて金銭的収奪を繰返してきた従来の信託経営を証明しているようなものではないのでしょうか。
本来、日本に<信託>という観念を根付かせるべきフロントランナ-としての信託銀行が自らそれにもとるようなことをしてしまったということではないのでしょうか。受託者責任や受給権保護の観念は少しも育成されていないことになりはしないでしょうか。制度が作られて30年余も経過していて、貴重な経験の蓄積はないがしろにされたままでいまだ低次元の認識のままですと言われて抗弁出来るのでしょうか。自分たちの高賃金のため収奪をくり返してきておいて社会的負託に応えてこなかったそのような経営感覚ですから、最近の日本の金融不始末が発生したのではなかったのでしょうか。本邦金融機関が立ち行かなくなった真因はそこにこそあるのではないでしょぅか。
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