03/2/24海保
第10回 ヒヤリハットの心理学
「新しいシステムへの切り替え時には慎重に行動する」
イラスト 事例
「配置変えをしたばかりの部屋に入って家具につまずいてころんだ」
一人住まいの部屋に夜帰宅した。くらがりの中を電気を付けようとしたら、思わぬところにテーブルが置かれていてつまづいてしまった
「解説」
自分の部屋を動き回るのにいちいち考えながら、といういきません。どう動けばよいかは身体が知っています。
だからこそ、部屋の配置変えをしたようなときは危険なのです。
環境は前と違ったのに、身体のほうは前と同じように動いてしまい、両者の間に不適合が起こってしまうからです。
人間は、環境に慣れるのは得意です。ただし、その環境が不変(普遍?)であることが前提です。絶え間なく変化する環境には実に注意深く観察しそれに自分を合わせるように努力します。しかし、変わらない環境に対しては、自分の身体のほうをそれに合わせます。そうすれば、身体の無駄な動きをしなくて済むだけでなく、身体を動かすために頭を使う必要もなくなるからです。かりに最初は、無理の身体の動きを要求されてもすぐにそれに慣れてしまいます。
問題は、部屋の配置変えのように、全体は変わらない、しかし、その中にある部分は変更、というような場合です。全体が前と同じ身体の動きを誘発して、それが、変わった部分と不適合をおこしてしまいます。
「類似ケース」
○前のシステムでは右隅にあったアイコンが左隅になったため、スムーズにクリックができなくなった。
○新車にした。ワイパーの操作が前と違うため、何度も前と同じ操作をしてしまう。
****本文20行
背景解説 23行 本文のみ
「システム変更時のエラー、事故を減らすにはどうしたらよいのでしょうか」
「背景解説」62行
システム変更時のエラー、事故の事例には事欠きません。その原因のほとんどは、全体と部分の不適合によるものです。
これにも2通りがあります。全体は同じなのに部分が変わるケースと、全体が変わったのに、部分は同じケースとがあります。新入社員がおかすのは前者、組織・システムが変わったところで、前から働く人がおかすのは後者です。
どうすれば、こうしたエラー、事故を防げるのでしょうか。
一番よいのは、全体を変えたら部分も変えてしまうことです。すべてをまったく新しいシステムにしてしまうことです。十分な長さの習熟期間と潤沢なコストが用意できる、逆に言うなら、事故によるコストが著しく高くなるようなところでは、これに限ります。旧を徹底して抑制して、新だけが表にでるようにします。
しかし、多くは、マイナーなシステム変更になりますので、全体や部分の類似が、随所で昔の習慣を表に出させてしまい、新システムとの不適合が発生してしまいます。
「十分な説明の機会をもうける」「時間プレッシャーをかけない」
「新旧システムを周知している人を用意する」「新旧対応表を作る」などの方策をとることになりますが、事故発生が想定されるところでは、期間限定のフールプルーフ装置の導入が必須です。
チェック「新しい環境での事故防止対応の適切度をチェックする」
自分に「最もあてはまるときを”3”」「まったくあてはまらないときを”1”」として判定してください。
( )わからないときには、すぐには行動しない
( )いつもと違うときには状況をよく観察する
( )即断即決はしないほう
( )ゆっくり慣れていくようにしている
( )見知らぬ土地での行動は慎重なほう
*10点以上なら、変化への対応度は高い、つまりエラーに強いことになります。
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