先日、読む前に思わず書いてしまった週刊ダイヤモンドの特集「解雇解禁」。
“タダ乗り正社員をクビにせよ”と結構、衝撃的な表紙でしたが、
内容はオーソドックスに、派遣問題(正規社員vs非正規社員)を中心に、景気などで運命が左右されやすい「新卒」偏重への視点や、大企業と違って実質的には解雇解禁に近い状態になっている中小企業についての問題提起、しっかりとまとまっていたと思います。
現実的には、法律ではなく、判例で示されているという「解雇」の要件、
これが問題をさらに難しくしているんですよね・・・
ここでも、「訴訟を起こせば、多くのケースで解雇無効を勝ち取れる」現状と書かれていましたが、
解雇する側も、解雇される側も、どちらにも不幸な状況だとボクは感じています。
出来ることなら、厳格な要件と一定の金銭補償のセット+セーフティネットの整備で、
雇用を流動化させて、会社も採用しやすく、ボクらも入社しやすくなり、
訴訟などで時間を浪費しなくとも、次のステージに進めるのが良いと思うんですよね。
ちなみに、解雇の種類は大きく分けて3種類あります。この特集での説明を引用しますと・・・
解雇には、
就業規則に定めのある解雇事由に相当する事実があって行われる普通解雇、
その中でも経営上の理由で、人員削減が必要な場合に行われる整理解雇、
就業規則上の最も重い懲戒処分が科されて行われる懲戒解雇
この3つ。
その整理解雇を行うときの要件が、判例で示されているんです。(下記参照)
民法や労働基準法では、基本的には自由となっているはずの解雇=雇用契約解除が、裁判で争わないと分からないような基準で制限されているというのは、やっぱり不幸ですよね。
整理解雇の4要件
- 人員整理の必要性:どうしても人員整理しなければならな経営上の理由があること。(今期赤字といった程度では認められない)
- 解雇回避努力義務の履行:希望退職者の募集、役員報酬のカット、出向、配置転換実施など、解雇を回避するためにあらゆる努力を尽くしていること。
- 対象者選定の合理性:解雇の対象者を、会社側の主観や恣意ではなく、人事考課、営業成績など客観的な基準で選んでいること。
- 手続の妥当性:解雇の対象者、労働組合と十分に協議し、整理解雇について理解を得るための努力を尽くしていること。
この特集の最後は「解雇解禁のはじめの一歩」として、解雇解禁に向けた必要な対応についてまとめられていました。
そこには、八代尚宏氏(国際基督教大学教授)のインタビューが載っていたんですが、解雇解禁の必要性はほぼこの内容に凝縮されていたと思いました。
ぜひ、読んでみてください。冒頭だけ引用しておきます。
正社員である以上、企業が雇用保障するのは当然だが、一定の要件を満たした場合は、雇用調整のための解雇も可能とする。それが先進国に共通な解雇規制である。一定の要件とは、使用者の恣意的な解雇に歯止めをかける明確なルールである。
日本の場合、解雇規制は労働基準法の解雇自由の原則を維持しながら、判例によって、つまり裁判所ごとの解釈によって形成された。結果として、訴訟を起こせば大部分のケースで解雇無効を勝ち取れる一方、訴訟を起こす資力のない中小・零細企業の労働者が泣き寝入りを強いられるという労働者間での不平等が生じてしまった。
菅首相は、「一に雇用、二に雇用」とおっしゃっているようですが、
雇用にはミスマッチもつきもので、それを働く側と企業側の相互で合意解約しやすいような仕組みがないと、なかなか雇用のリスクを会社は負えないと思うんです。
そのためには、短絡的にお金を出すのではなく、中長期の視点での法整備が必須なんですよ。
一方で、「解雇は金銭による完全自由化に限る。」なんて暴論も出てくるのも現実で。。。こういう極端な話が出てくるので、なかなかこの話は難しいです。
会社は基本的には雇用により、その人の生活維持への一定の責任を負うわけで、
最低賃金と同様に、会社側の権力行使には厳格な要件が必要であることも当然なんですよね。
そうした前提の中で、雇用の流動化は社会にとっても、個人にとっても望ましいとボクは思っています。
センセーショナルな意見ではなく、地道にこういう話は進めてほしいです。
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