考える葦のブログ

さわやかに さりげなく

ホワイトカラーエグゼンプション

2007-01-21 00:37:42 | 徒然なるままに

何度か細切れに書いていますけど、ホワイトカラーエグゼンプションについて、ボクなりに思うところをせっかくなのでまとめてみたいと思います。

そんな気になったのも、
日経新聞朝刊のマーケット欄のコラム、「吾妻橋」さんが書かれた『大機小機』。
ボクにとっては考えをまとめる貴重なきっかけとなりました。「吾妻橋」さんには、感謝すべきでしょうね。

さて、早速ですが、ボクが気になるのは題名からなんですよ(笑)。

題名は残業の「定額払い」制度を
ということで、ここから「ホワイトカラー・エグゼンプション」の趣旨をそもそも理解していないのではないかと想像されます。

ボクなりに簡単に解説すると、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の趣旨は・・・

いわゆるホワイトカラーは仕事に対して裁量性が高い、
つまり上司の指示や時間にあまり縛られることなく、職務を遂行できるであろう。
したがって、能力や効率を無視して、時間に応じた給与を支払うのではなく、
期待される職務(成果)に応じて給与を支払おう。

とこういうことだと思います。

つまり、このコラムの題名のように「残業代の定額払い」と言ってしまえば・・・
残業時間を何時間見込むかという「時間に応じた給与」の概念は変わらないこととなり、この趣旨を全く理解されていないのではないかと疑わざるを得ません。
また、そもそも「残業代の定額払い」とは、後述しますが、現行でも認められている「みなし労働時間制」に過ぎません。つまり現在の制度上でも十分に運営できる内容であり、「ホワイトカラー・エグゼンプションを再考願う」だけの話ではないんですよね。

また、これに関係して文中には「管理職手当のような標準的な残業代の「定額払い」がなされていた」という記述がありますが、これこそがボクらの労働環境の悪さを物語る顕著な例だと思うんですよ。

というのは、「管理職手当」とは本当に残業代の定額払いなのか?

「管理職手当」こそ、ボクはホワイトカラー・エグゼンプションの趣旨に沿った内容にすべき、言い換えれば「管理職・エグゼンプション」を標準化する動きこそが今、日本の労働環境で一番求められていることではないかと考えます。

というのは、「管理職手当」が残業代の定額払いだと勘違いしている人が実際に多いと思うんですよね。そんな世の中が、長時間労働を引き起こしている・・・
つまり、「真面目に働きたい管理職」が残業代の定額払いだと思っていれば、必然的に必要なくとも、その「管理職手当」分の時間外労働をするわけですから。

管理職だからこそ裁量性が高い、要するに、与えられた指示や時間には関係なく、成果を評価される職務なんです。

これが運営できない(できていないとボクは確信しています。)日本の労働環境で、さらに管理職でもないサラリーマン(ホワイトカラー)に適用して上手くいくのか???
そんな大きな不安と言うか、疑問を感いているんですよね。
ホワイトカラーエグゼンプションへの嫌悪感の中には、「残業代ゼロ」という誤解ももちろんあるんでしょうが、こういう疑問が潜在しているのも多いのではないでしょうか?

今回の「ホワイトカラー・エグゼンプション」の議論は、現状の課題の分析が全く出来ていない感じがします。
というのは、すでに述べたとおり、「管理職手当」の運営は本当に「仕事が単に労働時間に比例するのではなく、「自分で考える」こと自体が仕事」(@吾妻橋さん)である意識を高めている(このことで、質の高い仕事、生産性の高い仕事につながっている)のか?
そして、この趣旨は、みなし労働時間制(専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制)の中にも組み込まれています。吾妻橋さんが主張されるような「残業代の定額払い制度」とは、まさにこのこと。
なぜ、このみなし労働時間制では不足なのか?

こういう点をしっかりと議論していかないと、結局、「制度の文言」と「残業代が定額になること」だけが変わって、本来の趣旨が忘れ去られる恐れがありますよね。そもそも「残業代を定額にすること」が趣旨なのかも知れませんけど(苦笑)。

とは言え、このコラムの最後の部分、「ホワイトカラー・エグゼンプションは、従来の悪平等を是正し、成果に応じた報酬を得るなど、社員の働き方を改革するための第一歩となる。再考を願いたい。」という内容にはほぼ賛成です。
ボクは「第一歩」は、ホワイトカラーの働き方ではなく、管理職の働き方の改革、
「再考する」ことより、現状の分析と議論をして欲しいと願っています。

それにしても、今回の内容は・・・
日経新聞のコラムにしては(?)、不勉強過ぎると思います。

現行の「みなし労働時間制」くらいは理解して、
その内容の違いを踏まえたうえで、持論を展開して欲しい。
また、「現行の週休二日制や深夜労働時間規制は、個人が期限のある特定のプロジェクトに責任を持つような働き方を想定していない。長時間労働による健康被害を防ぐには直接、労働時間の総量を数ヶ月単位で規制し、強制的な休暇を義務付ける方が有効である。」と書かれていますけど、
これも現行の「変形時間労働制」を理解していない的外れな提言ですよね。

こういうマスコミの「理解不足」と「安易な記事」が、労働環境の改善と企業の生産性向上のための議論を妨げていると思います。重要な議論が、変な意味で伝わって、結局後回しにされているのは、本当に残念ですね。
大幅な収入減を示唆する「残業代ゼロの働き方」という誤解が広まったこと」は、吾妻橋さんにも、日経新聞にも責任があります。

スタートは、「ホワイトカラー・エグゼンプション」ありきではなく、
労働環境の改善、労働者の最大限の能力発揮、企業の生産性向上・・・
そもそも何を目的としたいのか?
そして、現状の制度は何が問題なのか?
そこの議論から始めれば、そんなに大きな誤解は招かないとボクは考えています。

地道に、しっかりやりましょうよ!

<参考>以前のホワイトカラーエグゼンプション関連記事
  2006/11/29付「エグゼンプション」
  http://blog.goo.ne.jp/hoddy/e/e94bf4f5a03d3215364ce7fcaeb30ba0


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