事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察 その6 ~ 隠蔽捜査

2007-06-29 | 日本の警察

Innpeisousa   さて、「新宿鮫」と同様にドロップアウトしたキャリアを主人公にした警察小説がいま評判になっている。今野敏(びん)の「隠蔽捜査」シリーズ(新潮社)だ。

  今野というのはなかなかとらえどころのない作家で、アクションものをしばらく書き続けていたかと思えばSFに走り、格闘家として空手塾を開いているしアニメの愛好家でもある。ひょっとしたら宗教が入っているかも。右翼っぽいのは確か。ノベルズ系の作家らしく、とにかく著作の量が圧倒的なのでうかつに手を出せないでいたのだ。

 しかし評判を聞きつけて「隠蔽捜査」を読んでたまげた。めちゃめちゃに面白いのである。2作目の「果断~隠蔽捜査2」にしても、ページを開いたら絶対にやめることができない。でも読者を選ぶ作品かも知れないなあ。なにしろ主人公竜崎がこんな野郎だから。

 キャリアたちの競争は、国家公務員Ⅰ種の試験から始まるのではない。そのはるか以前からすでに始まっている。
 受験という制度は、何かと批判の対象になる。竜崎は、負け犬たちが批判しているだけだと考えていた。受験勉強には、集中力と持続力が必要だ。さらに計画性も大切だ。言うなれば、一つのプロジェクトだ。遊びたい、さぼりたい、楽をしたいという欲望を抑え、ひたすら目標に向かってこつこつと努力を続ける。受験勉強に近道はない。そして、結果は、はっきりしている。
 竜崎は小学生の頃から努力していた。中学受験、大学受験、そして、国家公務員甲種の試験。すべて狭き門だった。
 詰め込み教育などという言葉があるが、知識は詰め込まなければ増えはしないのだ。子供に好き勝手をさせていたら、漢字は覚えないし、九九も覚えない。

……やなヤツでしょう?(笑)
大学は東大しか認めず、キャリアのプライドを隠そうともしない。しかし彼のプライドはこんな哲学に裏打ちされている。

彼にはエリート意識がある。エリートには特権とともに当然大きな義務もつきまとう。本気でそう考えているのだが、それがなかなかまわりに理解されない。

……ノブレス・オブリージュを地で行っているわけだ。「隠蔽捜査」のなかで、竜崎の息子は大麻に手を出してしまう。その不始末は竜崎を苦しめるが、彼は一度たりとも職位(警察庁長官官房総務課長)を利用してもみ消そうなどとは発想しないのである。以下次号。

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