前作から3年、今度の舞台は1974年の東京。ということは“わたしのエリア”に近づいたわけだ。「GO」の特集から再録。
「何でそんなに朝鮮の連中嫌うんだよ」良心派だったわけではなく、体でそのことが本当にわからなかった私は、学生時代に付属上がりの同級生にきいてみた。
「あー、ホリは経験ないからな。」
「経験?」
「俺は(東武)東上線沿いに住んでるだろ?チョーセン学校と中学高校んときどれだけバトルやったかよぉ。」
……その、バトルから今回も始まる。VS国士舘ならぬ国土館の応援団。「タイガー&ドラゴン」でチビTを演じた桐谷健太とアンソン(井坂敏哉)のガチンコ対決は、井筒和幸が本領発揮とばかりに壮絶。
でも、前作とはムードがちょっと違う。キャストが一新されたこと以上に、登場人物たちが家族をもち、社会人になっていることが影響しているのだと思う。アンソンと結婚し、レオポン(日本人でも朝鮮人でもない存在の象徴だ)をいっしょに天王寺動物園に見に行ったはずの桃子は死んでしまい、残された息子は筋ジストロフィーを病んでいる。キョンジャといい仲になった康介は一度も登場しない。やみくもに、世界すべてにパッチギ(頭突き)をかましていられた高校時代には、もう帰れないのだ。
悲劇はそれだけではなく、芸能界に入ったキョンジャに立ちはだかる在日差別、バトルにからんだために国鉄を首になった佐藤(藤井隆)の悲惨な過去……いやもうてんこ盛りに暗いストーリーがつめこんである。
しかしそれを救うのがコテコテのギャグの連発。バトルの最中にかまされるセリフの応酬は、平和な東北に生まれ育った人間には、在日差別以上に遠い世界かも。
「おまえ、ネクター好きか?」武器としてのネクターってのは痛そうだったなあ。
旭日旗が入った特攻服に蹴りをかましながら「お前いつから朝日新聞配っとんのじゃい!」
「ウチの大学に医学部はないっ!」(これは見ないとわけわかんないすね)
……確かに前作にはおよばない出来だ。キョンジャを演じた中村ゆりが沢尻エリカを超えたかもむずかしいところ(前作からの3年でいちばん変わったのは沢尻。あれほどタカビーな女優になるとはねえ!)。でも、なぜLOVE&PEACEという副題だったのか、今回も政治的メッセージをさりげなくしのびこませ(安倍晋三の叔父さん→佐藤栄作など、ボロボロのあつかいです)、観客にうまく浸透するようにつくってある。三作目も、よろしく。
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