わたしがパソコンに向かっているうしろで、妻がこの作品をDVDで見ながらキャッキャッと喜んでいる。
「面白いわよすごく」
ということで彼女が見終わってからわたしも鑑賞……うわあ、「誰も守ってくれない」に続いて君塚良一の大衆憎悪が爆発。
ある理由で現場に出ることを恐れているニュースキャスター澄田(中井貴一)はその朝、学生の息子がガールフレンドを妊娠させてしまったと告白され、同僚の女性キャスター(長澤まさみ)からは澄田とのの仲(それは単に彼女の思い込みなのだが)を本番中に発表すると宣言されるなど、追いつめられていた。本番開始直前、渋谷のカフェに銃をもった若い男(濱田岳)が立てこもり、澄田を連れてこいと要求する……
さすが「踊る大捜査線」の作者だけあって設定は相変わらず達者だし、ギャグも機能している。カメラの裏側でスタッフがどんな動きをしているかも興味深い。そして、登場人物のほぼ全員が“救済”される作劇もおみごと。笑わせ、泣かせ、ハラハラさせて、確かに面白い。
でもね、見終わってどこかザラリとした感触が残る。その最大の理由は、視聴者の投票で事件を解決するという部分。君塚が考えるように、確かに視聴者は無責任に犯人に「死んじまえ」とする方が過半だとは思う。少なくとも、リモコンのdボタンを押すタイプの視聴者は。
ワイドショーがくだらないのは視聴者がくだらないからだ、という(ちょっと乱暴ですが)君塚の血の叫びが聞こえてくるようだ。そしてその主張はおそらく正しいからこそ、娯楽映画にこの主張を忍ばせることは正解だったのか。
報道局と情報局の力関係は「踊る~」のキャリアとノンキャリの対立を想起させるが(報道部長が小木茂光だし)、現実がそこまで露骨なはずはない。それに、おいしい事件のさなかに
「番組あと9分です!」
はありえないはず。面白いけれど、どこか詰めが甘く、それ以上にあざとすぎる。ちょっとため息をつきながら、妻には「面白かったよ」と小声で報告しておきましたが。
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