あの台風の夜さえなければ、東京の高校に進学し、お兄さんと同じように東大に入って立派な社会人になったであろう三上くん。
彼は担任に向かって吐き捨てたように“つまらない大人にならない”でいられただろうか。それとも、担任の心の屈託に気づき、自らの現在と引き比べて苦笑いをしているだろうか。
中学生というのはまことにしんどい存在で、やたらに自意識が過剰なのに加え、身体が大人に近づく過程に個人差がありすぎるものだから色んなことにいらつく。とにかくいらつく。
だから鬱屈がどんどん内向し、きっかけがあると爆発してしまう。その象徴がこの映画における台風だし、わたしだって教室の窓から遠くを眺め「来ないかな、ゴジラ」と中学時代は思っていた。
相米慎二が1985年に監督した伝説の映画。三上くんを演じたその名も三上祐一は、よくもここまでお兄さん役の鶴見辰吾にそっくりな子役がいたもんだと思ったらほんとに弟だった。工藤夕貴は、ひとり原宿の街を流浪する姿が美しい。愛に飢えている彼女の、自慰シーンはちょっとせつない。
彼ら中学生の日常のいらつきは、冒頭のプールのシーンから画面にあふれている。その湿度が飽和した瞬間に台風が襲来。もう、どうしたって歯止めがきかない描写はすごく納得できる。バービーボーイズの曲も合致。
「俺たちには、厳粛に生きるための厳粛な死が与えられていない」
という三上くんの言葉は痛烈だが
「あと15年もすれば、お前らも俺になるんだ」
という担任の返答もまた重い。演じた三浦友和はこの作品から名優への道を歩き始めました。
相米演出はあいかわらず歌を使って絶好調。今回はわらべの「もしも明日が」。台風の目に入った瞬間に始まる裸でのダンスは、中学生の本音をむき出しにしている。だってあの歌は、最後にこう終わるのだ……
愛するひとよ そばにいて
すべてが終わったとき、工藤夕貴の目に朝の学校が
「金閣寺みたい!」
に見えたことは、薄汚い大人のひとりである学校事務職員にとっても、小さな救いだった。
まちキネで上映してましたよ。
時間が合えば行けたのですが、、残念。。
長谷川和彦人脈をそのまま引っぱったとしても、
あの人は撮らない巨匠ですから(笑)
世界のクロサワ、榎戸耕史、そして冨樫森……
役者はそれこそ数知れず。わたし、「翔んだカップル」の
「ハンコぉも押しました」って薬師丸ひろ子のセリフと
モグラ叩きのシーンが大好きです。
あ、それから「雪の断章」の斉藤由貴が……ああきりがねー。