お酒に弱い人、いわゆる下戸とよばれる人たちですが、なんとお酒に強い人よりも、胃がんになりやすいって知っていましたか?
先日、東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野の飯島克則講師らが行った実験によると、お酒に弱い人ほど、アルコールを飲酒したときに生じるアセトアルデヒドが高濃度のまま長時間、胃液の中にとどまるということが明らかになりました。胃液中のアセトアルデヒドは胃がんのリスク因子だと言われています。
また、同実験では非必須アミノ酸である「L-システイン」の投与が、胃液中のアセトアルデヒドの増加を抑えられることも明らかになりました。
ここでは、日本人にも多いと言われる胃がんとリスクを減らすといわれる「L-システイン」についてみてみましょう。
胃がんはどんな病気?
胃がんは全世界で男女ともにがん死亡のうち3番目に多い原因であり、東アジアにおいては最も高い死亡率を占めます。
胃がんの原因の多くは、ピロリ菌への感染や喫煙や食生活など生活習慣などで起こりますが、飲酒、特にお酒に弱い人は胃がんのリスクが高まると言われています。
胃がんは自覚症状がでにくいがんの1つです。がんが胃の入り口付近に発生した場合や、がんと一緒に胃潰瘍などがある場合は、消化不良、胃の痛み・もたれ、胸やけ、げっぷ、吐き気・おう吐、嚥下困難(飲み込みにくくなる)などが現れます。しかしこれらは胃炎や胃潰瘍とも良く似ているため、見過ごされてしまうこともあります。
お酒に強い人、弱い人の違いは何?
アセトアルデヒドは、発がん物質とされ、食道がん、胃がんをはじめとするアルコール摂取と関連するがんの重要な発がん因子と考えられています。
先日、岡山大学の発表でも、「舌表面の汚れの付着面積が大きい人は、アセトアルデヒドの濃度が高く、口の中のアセトアルデヒドは、口や喉のがんの原因になる」という発表がありました。
アセトアルデヒドは「ALDH2」という酵素によって酢酸へと代謝されますが、「ALDH2」の2つタイプ(活性型・不活性型)によって代謝速度に個人差があるといわれています。
代謝が遅いALDH2不活性型の人は、少量の飲酒でもアセトアルデヒドが体内に蓄積し、顔が赤くなったり動悸などを引きおこすといわれ、いわゆる「下戸」と呼ばれる人たちのことです。
この研究では、アルコール投与後に胃液中のアセトアルデヒド濃度が、お酒に弱い人(ALDH2不活性型)ではお酒に強い人(活性型)に比べて5.6倍も増加していることが明らかになりました。
ALDH2不活性型は、アジア人に多く、日本国内では30~40%がALDH2不活性型だといわれています。
胃がんのリスクを減らす「L-システイン」とは?
また、今回の研究では、非必須アミノ酸である「L-システイン」の投与が、胃液中のアセトアルデヒドの増加を抑えられることも明らかになりました。
ALDH2活性型では67%、ALDH2不活性型では60%のアセトアルデヒドの低下が観察され、その効果は2時間持続しました。これは「L-システイン」が、胃がんのリスクを減らす可能性があることを示しています。
「L-システイン」はヨーロッパの多くの国で使用されている健康食品であり、日本でも「L-システイン」が成分に入っている市販薬が「二日酔いを改善する」と話題になっていました。
二日酔い予防のため飲酒前にサプリメントを服用している人は多いと言いますが、将来的には、二日酔いの改善だけではなく、胃がんを予防するために「L-システイン」を服用する人がでてくるかもしれませね。
参考:
東北大学プレスリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press_20150330_02web.pdf
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます